エース社員が辞める理由と対策|連鎖退職による崩壊を防ぐ方法を上場企業管理職が解説

「優秀なエース社員が突然辞めてしまう」「辞められないためにはどうすれば良いだろう」と悩みますよね。

次期リーダーとしての成長が期待されるエース社員にはずっと居続けて欲しいものの「え、あの人が!?」というような社員でさえ突然辞めてしまう場合があります。

任せている仕事の裁量も大きいので短期的ダメージが大きく、さらに中長期的には、ロールモデルがいなくなることから、連鎖退職が起こり、組織が崩壊することすらありえます

そこで当記事では「エース社員が辞めてしまう理由と対策」を上場企業管理職の筆者が解説します。

エース社員が辞める理由

ここではエース社員が突然辞めてしまう背景について説明します。(心理学的な詳細版は後述

エース社員がやめる理由
  • 理由1. 向上心が高く成長を求める
  • 理由2. 周囲のレベルが物足りない
  • 理由3. 能力が高いのですぐに転職できてしまう

では順番に解説していきますね。

理由1.向上心が高く成長を求める

仕事で結果を出すエース社員は「精神的な向上心」が高いことが多いです。当たり前とするレベルが高く、更なる成長を求めて自己研鑽に励むので、現状に満足し続けることはありません。

そのため、仮に役職や報酬を上げて裁量を増やしたとしても、その状態に慣れてしまうと物足りなさを感じてしまうのです。ポイントは”成長”や”変化”の度合いです。

運営者
夏目漱石「こころ」の有名なセリフに『精神的に向上心のない物はばかだ』とあるように、現状に甘んじず、常に上を目指して努力を重ねることができるからこそ、エースとして相応しい結果が出せるのです。

エース社員とは、職務パフォーマンスが高く、同僚や上司、部下から一目置かれる存在のことです。環境によって違いはあるものの、たいてい以下の特徴を共通点として持っています。

  1. 当たり前とする基準が高い
  2. 向上心が高く、学びや挑戦を苦としない
  3. 相手目線で深く考えるスタンス、想像力が高い

理由2.周囲のレベルが物足りない

要領がよく飛び抜けたセンスを持っているエース社員は、たいした努力をしなくとも評価されるので、「慢性的な物足りなさを感じています。つまり「ぬるい」という感覚です。

それこそ、自分が最初から簡単にできた仕事に苦戦している同僚を見て「この環境に甘えていたら、自分はたいした成長もせず、緩やかに歳だけとって、何も成さずに人生を終えるのではないか」という焦りすら感じることがあります。

  • 自分の限界を超える経験をしたい
  • お互い認め合う対等な同僚と熱く語りたい
  • 人生を賭ける価値のある面白い仕事をしたい

上記のような、どこか満たされない感覚を潜在的に感じていると、仕事で成果を出して「義理を果たした」と思える段階で、意を決して転職活動を始めてしまうのです。

理由3.能力が高いのですぐに転職できてしまう

エース社員は、他の社員に比べて職務能力やパフォーマンスが高いので、どこでも通用します。能力の低い一般社員と違い、会社にしがみつく理由がありません。

それこそ職場での物足りなさから、自分の市場価値を確かめようとビズリーチのようなスカウトサイトに登録したことをきっかけに、ヘッドハンターから声をかけられ転職することがあります。

このように、会社にしがみつく理由がなく転職しやすいエース社員には、意志を持って「会社に居続ける」という選択をとってもらう必要があるのです。


ここまで紹介した”エース社員が突然離職してしまう背景”を再掲すると以下の通りです。

  • “向上心”が高いので、現状に満足し続けない
  • 簡単にエースになれてしまう環境は物足りない
  • 能力が高いのですぐに転職できてしまう
運営者
エース社員は、現状に満足していないことが多く、簡単に転職できてしまうので、油断をしていると突然離職してしまうので注意しましょう。

エース社員が辞める悪影響・組織崩壊

ここではエース社員が退職したあとのリスクについて解説します。連鎖退職を生み、最悪のケースでは組織が崩壊することもあるので注意が必要です。

ここからの目次
  • 悪影響①組織の生産性が落ちる
  • 悪影響②残された社員、管理職の負担が増える
  • 悪影響③ロールモデルがいなくなり連鎖退職

では順番に解説していきますね。

悪影響①組織の生産性が落ちる

圧倒的に高いパフォーマンスを上げている社員がいなくなることで、組織全体の生産性が落ちる可能性があります。特に、仕事量が多いと引き継ぎは困難を極めます。

実際、代わりを担える人材が採用できていないと事業成長に遅れが出るだけでなく、場合によってはクライアントから契約を切られてしまうケースもあるでしょう。

また、心理学的にも「優秀な社員が周囲にいることで生産性が上がる」という統計もあるので、残された社員のモチベーションにも無意識に影響を与えてしまうことすらあるのです。

悪影響②残された社員、管理職の負担が増える

悪影響2つめは、エース社員が退職することで、その仕事を巻き取ることになる社員、あるいは管理職の負担がグッと増えてしまうことです。

エース社員ともなると、アウトプットに付加価値が求められる「難易度の高い仕事」を任されていることが多く、それこそ管理職がやらざるを得なくなることもあります。部下が育たないと、上の人間は新しいことに挑戦ができないので疲弊してしまうものです。

悪影響③ロールモデルがいなくなり連鎖退職

仕事のできるエース社員は、若手社員のロールモデルとなっているケースが多く、最悪の場合だと連鎖退職を招く可能性があります。

特に、次期管理職や役員を期待できるエース人材だと、採用現場にも出ることが多く、「◯◯さんに惹かれて入社しました」といった社員も多くなるので注意しましょう。

次章では、エース社員が辞めてしまう原因を、心理学の観点から”網羅的“に解説しますが、先に対処法を見たい方は「エース社員を辞めさせないための対策」へジャンプしてください!

エース社員が退職する兆候

ここでは、エース社員が退職する兆候を筆者の実体験をもとに解説していきます。以下で紹介するようなサインが見えたら危険信号です。急ぎ対処しましょう。

ここからの目次
  1. 会議での発言が減る
  2. 主体的な意見を言わなくなった
  3. 仕事のミスによる罪悪感を感じていない
  4. 業務外のコミュニケーションが減った
  5. 定時退社する機会が増えた

では見ていきましょう。

兆候①会議での発言が減る

退職を検討し始めると会議での発言がグッと減ります。会社にいても「自分はもうこの会社の人ではない」という意識になるので、思うことがあっても口に出さなくなるのです。

なにより、会議で発言をしたがために「自分を中心として、新プロジェクトが始まってしまう」なんてことがあると、さらに退職しにくくなります。その結果、会議では影を潜めるようになるのです。

兆候②主体的な意見を言わなくなった

退職を検討していると、自身の発言の責任を取ることができなくなるので、主体的な意見を言わなくなります。それこそ「もう辞めるので自分が出るべきではない」と遠慮するのです。

そして、他の人の意見をサポートし、フォローする側に回ろうとし始めます。自ら意見を言い、前に出て組織を引っ張っていくようなリーダーシップは取らなくなるのです。

兆候③仕事のミスによる罪悪感を感じていない

退職を検討していると「心ここにあらず」といった状況になるので、仕事のミスが増えます。そして何よりも決定的な変化は「罪悪感を感じにくくなる」ことです。

  • どうせ辞めるので無理に頑張らなくてもいい
  • どうせ辞めるので失敗しても気にする必要がない

退職を決意するとこういった思考になるのが自然です。特に、いままで気を張って、高い目標を掲げ、命を削って頑張ってきた人間ほど、燃え尽きた状態になってしまいます

兆候④業務外のコミュニケーションが減った

退職を決意すると雑談の時間がグッと減ります。もうすぐ縁が切れる間柄なので、あえて仲良くなろうと思わないのです。罪悪感があり、バレたくないという思いもあるでしょう。

それこそ1on1でも、悩みや相談といった深い話をするのは避け始め、上司や組織全体との飲み会も「予定があるから」と断りがちになってしまいます。

兆候⑤定時退社する機会が増えた

退職を意識すると定時で退社することが増えます。場合によっては中抜けや途中退社することもあるでしょう。理由は主に以下の3つです。

  1. 転職活動に時間を使っている
  2. もう辞めるので定時退社の罪悪感がなくなる
  3. 自分の時間を削ってまで頑張ろうとは思わない

このように、単純に仕事に使う時間そのものがグッと減ります。

エース社員の退職を防ぐための対策

ここではエース社員の離職を防ぐための対策について解説していきます。ここまで説明した退職理由を踏まえてできるところから対策していきましょう。

ここからの目次
  1. 積極的にコミュニケーションをとって信頼関係を構築する
  2. ストックオプションを与える
  3. ミッションや予算、人員配置を見直す
  4. 評価方法と待遇を見直す
  5. 可愛げのある部下社員を採用する

対策1. 積極的にコミュニケーションをとって信頼関係を構築する

まずはシンプルですが、辞めてほしくない組織の中核であるエース社員とは、上司であるあなたから積極的にコミュニケーションをとって信頼関係を構築しましょう。

信頼関係を構築するメリット
  • 目指したい方向性をすり合わせられる
  • 気軽に相談してもらえる関係性を作れる
  • 相談なく急に退職されるリスクが減る

特に、部下からだと気軽に話しかけにくいところがあるので、上司であるあなたから、ビジネスの相談や雑談する場(食事会でもOK)を意図的に設けるようにしてください。

運営者
放任と無関心は異なります。仮に部下のことを尊重して任せているつもりでも、受け手である部下からしたら無関心で見捨てられたように思うこともあるのです。

そのため、辞められたら困る相手とは、積極的にコミュニケーションをとりに行ってください!

対策2.ストックオプションを付与する

あくまで金銭的な報酬にはなってしまいますが、部下に目指す理想像と期待している旨を伝えて、ストックオプションを付与するというのも一つの手です。

報酬をもらって悪い気持ちになる人間はいません。なにより、部下のこれからに期待していることと、数年先まで一緒に働きたいと考えていることが「行動」で伝わります。

ただ、あくまで欠乏欲求が少し満たされるに過ぎないので、ストックオプションを付与したから今後はもう安心だ、とは思わないようにすることをおすすめします。

実際、金銭的報酬だけで優秀なエース社員を留めることはできません。

運営者
筆者も以前、3年後に行使できるストックオプションを1,000万円分もらっていましたが、権利を行使することなく辞めたものです。

対策3.ミッションや予算、人員配置を見直す

負担が大きくなりすぎていないかという観点で、エース社員に落としているミッションや予算、人員配置といったリソースを見直すようにしてください。

理不尽に高い目標は、組織のやる気を削ぎ、従業員を疲弊させる

経営陣が現場を理解できていないような中小企業でよくあるのですが、現状に即していない高すぎる目標数値が課されてしまうと、その理不尽さにチーム全体のやる気が削がれます。

さらに、その負担と責任を背負うのは現場の指揮担当である管理職であり、本人として「この数値は到底無理だな」と光が見えていない状態で「目標未達です。申し訳ございません。改善は、、」と毎度のように報告することになります。

経営陣としては「高い目標を掲げ、その実現に全力を尽くしてこそ真のリーダーだ」と考えているかもしれませんが、そんな都合の良すぎるモチベーションを持つ人間はいません。

運営者
高すぎる目標数値を設定されると目標が目標として機能しなくなるので、チームを束ねるエース社員としてはたまったもんじゃありません。現実に即したラインで合意のもと決めましょう。

「それを考えるのが仕事だ」と無茶振りしない

希望的観測で、現場に高い目標を押し付けておきながら、原価や販管費、人件費といった予算を割り振らないケースは絶対にやめてください。

それこそ「少ないリソースで最大の結果を得るのがプロであり、できないと否定するのではなく、どうやったらできるのかを考えるのが仕事だ」と無茶振りしてはいけません。

無理なものは無理です。経営陣が理不尽だと、たとえ事業に愛着があったとしても長続きはしません。

特に、自由に使えるリソースがないと、最終的には、現場社員(特にエース社員自身)が残業を重ねて、気合いで達成を目指す他なくなります。

運営者
もし仮に従業員を「月額使い放題の奴隷」だと思っていたとしても、酷使すると、有能な社員はすぐに転職してしまうので、注意してくださいね。

対策4.評価方法と待遇を見直す

エース社員は「給料の物足りなさ」を理由に転職する方が多くいる現実を踏まえ、エース社員の働きを評価できているか、待遇に問題はないかという観点で見直しをおこないましょう。

なぜなら、行動プロセスとして業務量や負担が大きく増えるにも関わらず、管理職手当が少し増えるばかりで残業代も支給されないとなると、納得することが難しいからです。

それこそ、業務プロセスを見ずに、業績の結果だけで評価をしている会社だと、業績が優れないようなとき、管理職として高い負担を強いられているにも関わらず、コントロールできない部分で評価されない状態が続いてしまい「割に合わない」と、優秀な方から転職をしてしまいます。

運営者
放任して業績のみで評価をするのは経営陣として楽ですが、いつ退職してもおかしくないことは理解してくださいね!

対策5.可愛げのある部下社員を採用する

やや邪道かもしれませんが「社員が個人的に好感をもてる部下社員を採用する」というのも、辞めさせないための対策として有効です。

  • 顔や見た目がタイプの異性
  • 愛嬌、可愛がられ力が高い性格

上記どちらでも構いませんが、エース社員にとって「この部下の面倒を見たい、放っておけない」と思わせることが重要です。

運営者
まさかと思いますが意外と効きます。実体験です。笑

エース社員が辞める理由|心理学的に詳細解説

ここではエース社員が辞める理由を”網羅的“に解説していきます。全てに共通するのは「現状に満足していないから」で、マズローの欲求5段階説のフレームを用いると簡単に説明できます。

引用元:マズローの5段階欲求とは

欲求の
区分
5つの
欲求段階
エース社員が辞めていく原因
成長
欲求
自己超越 ・社会貢献度の大きい仕事をしたい
・本質的に価値のある仕事をしたい
自己実現
の欲求
・さらなる自分の成長を求めて
・自分の価値を最大限発揮したい
欠乏
欲求
承認欲求 ・人事評価に不満がある
・組織内で十分に活躍できていない
社会的欲求 ・経営陣のビジョンに共感できない
・所属したい組織ではない or 孤独
安全及び
生理的欲求
・激務で睡眠や食事が取れていない
・ストレスで精神的に健康ではない

人間は、より下層の欲求から順番に満たそうとするもので、欠乏欲求(ないと不満を感じる欲求)が満たされれば、最終的には成長欲求(自己実現と自己超越)を求めて生きるとされています。

成長欲求を求めての転職であれば、一定の義理を果たしてから転職をする可能性が高いですが、低レベルの欠乏欲求(ないと不満となるもの)が満たされていないと、無責任に転職してしまう可能性もあるので注意してください。(引き継ぎをしない、等)

そして、エース社員の場合、ネガティブな不満を理由に退職することもありますが、それ以上に「より上を目指して」転職することがあるので見ていきましょう。

  • さらなる自分の成長を求めて
  • 自分の価値を最大限発揮したい
運営者
より致命的なものから順番に解説していきますね。エース社員が辞めないようしっかりとみていきましょう。

理由1. 安全及び生理的欲求が満たされていない

一番致命的な状況は、安全の欲求や生理的欲求が満足に満たされていない場合です。

  • 安全の欲求(安全でありたい)
    →経済的に不安定、不健康だと不満になる
  • 生理的欲求(生命を維持したい)
    →睡眠不足、激務による疲労で不満となる

実際、人間はだれしも幸せになるために生きているものであって、仕事のために生きているのではありません。仕事によって幸せや健康が脅かされるのであれば、続ける理由がないのです。

そのため、成長・やりがいを感じる以前に、給料への不満や、ライフワークバランスの崩れ、強いストレス下にあるような「欠乏状況」ではすぐに辞めてしまいます。

事例1.仕事ができない上司や同僚と同じ給料に不満

エース社員となると、周囲の同僚や上司よりも圧倒的に仕事ができることがあるので、仕事ができない同僚と同じような給料であったり、自分よりできない上司のほうが給料をもらっている事実に虚しさを覚えるようなケースがあります。

実際、優秀な社員は、年功序列式の企業を退職して、能力や実績を評価して、若くとも給料をあげるようなベンチャー企業や外資系企業へ転職していくようなケースが多いです。

事例2.業務量が多く労働時間が長くなっている

社内での期待値が高いエース社員は、多くの仕事を任されることから労働時間が長くなりやすく、ライフワークバランスの崩れや、ハードワークによる体調不良が、転職のキッカケになることがあります。

もちろん仕事そのものが面白く、自分のプライベートの時間を削ってまでもやる価値のあるものであれば問題とならないのですが、ほとんどの場合ではそうはなりません。

それこそプライベートでインプットするような時間や、業界の友人やビジネスマンとの交流に当てている時間が取れなくなることで、自身の成長を阻害されていると感じて転職する若手社員は多くいます。


このように、最低限の健康的な生活を送れないことを理由に辞めていくエース社員は多くいます。以下2つの欲求は必ず充足させるようにしてください。

  • 安全の欲求(安全でありたい)
    →経済的に不安定、不健康だと不満になる
  • 生理的欲求(生命を維持したい)
    →睡眠不足、激務による疲労で不満となる

もし崩れてしまっているようであれば、早急に職場環境を整備するようにしてください。ここが保証されていないと、優秀な社員から次々に去ってしまいます。

運営者
近年は終身雇用の流れも崩れ、35歳以上の転職が年々増加してきているので、これまで以上に職場の労働環境を見直す必要が出てきています。

理由2. 社会的欲求が満たされていないため

エース社員に限った話ではありませんが、社会的欲求が満たされていない状況でも、人は強い不満を感じます。

社会的欲求(集団に属したい)
→集団に魅力を感じないと不満になる
→組織内で孤独感を感じると不満になる

なぜなら人間は、家族や友達・会社といったコミュニティに所属することで安心し、愛情を受け取りたいと感じる社会性の高い動物だからです。

職場はあくまで金銭の受給があるビジネス上の関係ですが、人生の大半を過ごす環境という意味では例外ではありません。居心地の良いコミュニティに属したいと思うのが自然です。

事例1.経営陣のビジョンに共感できない

エース社員となると、経営陣をはじめとした会社の上層部との接点が増えますが、経営陣の在り方・掲げるビジョンに共感できないことで転職するケースがあります。

  • 経営メンバーに魅力がない
  • 経営戦略・方針に違和感がある
  • 目先の利益で顧客価値を見失っている

このように、経営陣が進むべき方向性、ビジョンに対して、そのあり方や方針に納得できないと一緒に働くことを難しく感じるものです。(稀にいる働かない経営陣はまさにアウトですね。汗)

事例2.自分が引っ張りたい組織ではない

エース社員となると、現場のリーダーとして組織を引っ張っていくことを求められる機会が増えますが、周囲のレベルが低過ぎて、物足りなさを感じるケースがあります。

それこそプレイヤーとして圧倒的エースだった社員を生え抜きで管理職にすると起こりやすく、当たり前のことができない部下ばかりを相手にすることになるので、精神的に疲弊するものです。

事例3.孤独感を感じる

エース社員となると、普段ともに働くメンバーのほとんどが”自分以下”になるので、同じ目線・レベルで話せる相手がいなくなることに”孤独感”を感じるケースがあります。

実際、人間は自分と似たような相手と仲良くなるもので、気を許して対等に話せる相手がいない場合、まるで一人で仕事をしているような、どこか寂しい感情を覚えるものです。

あえて言うまでもありませんが、知能や能力が大きく離れている相手とは対等に信頼し、分かりあうことができないのが人間です。


このように、上司や部下、同僚をはじめとした職場の人間関係に満足していない場合、孤独感や寂しさのようなものを感じて、居心地の悪さを感じることになります。

社会的欲求(集団に属したい)
→集団に魅力を感じないと不満になる
→組織内で孤独感を感じると不満になる

社内のエース社員は、同じような優秀なエース人材と固めて配置するなり、上司から積極的に声をかけることで、悩みを相談してもらえるような関係性を構築するなど、心理的安全性を確保することが重要になるでしょう

運営者
退職理由の多くは「職場の人間関係」なので、風通しの良い職場環境にしていきましょう!

理由3. 承認欲求が満たされていないため

エース社員として働く中で承認欲求が満たされないことを理由に辞めるケースがあります。それこそ業績で結果を出せていない場合や、評価がずさんな場合です。

承認欲求(存在価値を認められたい)
→人事評価に納得できないと不満になる
→組織で活躍できていないと不満になる

また、エース人材は社内で相当の評価を受けて、すぐに管理職に昇進してしまうことが多く、そうなった場合だと「給料が高いのだからできて当たり前。やって当たり前」と思われてしまい、評価されなくなります。

それこそ会社によっては業績でしか評価されない場合もあるでしょう。承認される機会が一気に減ります。

結果として、働き続けることに物足りなさを感じてしまい、自分がより評価される環境や、成果を出せる環境を探して、会社を去っていくのです。

事例1. 給料が高いのだから「当たり前」と思われる

エース社員となると、高い職務能力が前提となってしまい、相応の給料をもらっていることから「できて当たり前。やって当たり前」と見做されてしまいます。

実際、メンバークラスでエース級だった間は、上司や同僚から高い評価をされても、管理職に抜擢された途端求められるレベルが上がり、急に評価されなくなる物足りなさがあるものです。

事例2.管理職になると業績で結果を出すことが難しい

管理職はチーム全体の業績に責任を持つことになるので、一人で仕事をしている時と比べて、コントロールできない部分が増え、結果を出しにくくなります。

経営陣に対する業績の説明責任があるので、業績不調の状態が続くと生きた心地がしません。時には激しい咎めを負うケースもあるでしょう。責任を感じ、居心地が悪いものです。

事例3.管理職になると不憫な評価を受けやすい

管理職の評価は、何人もいるメンバー層と違って相対的な評価ができないために、組織次第では以下のように、不憫な評価を受けてしまうケースがあります。

  • 理不尽に高い目標が降りてくる
  • 短期的な数字でドライに判断される
  • 衰退事業でも利益維持は評価されない

特に、業績だけで評価をする場合だと、担当事業の状況に応じて評価結果は変わってしまうものです。

それこそ業界トレンドが下火な事業や、無能な部下しかいないチームを任されると、まるで沈みかけの船を任されたようなもので、市場相対的に優れたスキルがあっても評価が低くなってしまいます


このように、成果を出せていなかったり、正当に評価されなかったりと、活躍を認められていない場合、物足りなさを感じて転職をする方が出始めるのです。

承認欲求(存在価値を認められたい)
→人事評価に納得できないと不満になる
→組織で活躍できていないと不満になる

放任することはせず、上司から定期的にコミュニケーションをとることで、期待している旨を伝えるようにしましょう。

運営者
直接期待を伝えることは、ピグマリオン効果(期待されると成果が出やすい心理効果)の観点からもおすすめですよ!

理由4. 自己実現の欲求を満たすため

エース社員が辞めていく理由4つ目は「理想とする自分になりたい」という自己実現の欲求を満たすためで、エース級の社員の退職はこれが理由のことが多いです。

自己実現の欲求(理想の自分になりたい)
→嘘偽りない自分の姿で過ごしたい
→自分自身が大きく「成長」したい
→自分が生きた意味を見出す仕事をしたい

このように人間は、能力や可能性、ありのままの姿を最大限発揮できる「理想の自分」を目指していくもので、地位や報酬といった欠乏欲求(満たされないと強くなるが、満たされると弱くなる欲求)だけで満足し続けることはありません。

優秀な人材ほど、成長や挑戦を求める

実際のところ、人柄・地頭・要領に恵まれた優秀な人材であればあるほど、これまでの人生で評価され続けて育ってきているので、自己実現や自己超越を求めていることが多いです。(それこそお金で困った経験がない方は、高い給料を出しても響きません。)

引用元:マズローの5段階欲求とは

なにより難しいのが、成長機会を求めているエース社員を組織に留めようにも、金銭的報酬や社内評価といった外発的動機付け(外から与えられるモチベーション)では「欠乏欲求(欠乏している状態でしか湧かない欲求)」を満たすことしかできないところです。

管理職になりたくないエース社員が多い

管理職となると、すでに仕組み化された事業を任され「業績に責任を持つ」という大きな”制約”を負うこととなるので、プレイヤーとしての挑戦機会が減り、気軽に新しいことに手を出せなくなります。

それこそ、やりたいビジネスがあったとしても、既存アセットとのシナジーや、業績見合いでの優先度、あるいは経営陣の意向によって、諦めることが多くなるものです。(責任を負うとはそういうことです。)

そのため、やりたいことを我慢しながら、既存事業で利益を生み続けるための都合の良い歯車としての『管理職』であり続けることを、息苦しく感じてしまい、転職を決意する方が多くいます。


このように、個人として成長機会を求めていても、管理職という責任を負ってしまうことが自分を縛る”制約”となり、不自由さを理由に辞める方がいます。

自己実現の欲求(理想の自分になりたい)
→嘘偽りない自分の姿で過ごしたい
→自分自身が大きく「成長」したい
→自分が生きた意味を見出す仕事をしたい

特に、優秀であればあるほどその傾向は強いので「高い報酬を与えているから大丈夫だろう」と油断していると、急に退職届を出されるケースもあるので注意してください。

運営者
優秀な方ほど、成長機会を求め、自分の新しい可能性を試したいもので、既存事業の運営ばかりに時間を取られるとすぐ辞めてしまいます。

理由5. 自己超越の欲求を満たすため

エース社員が辞めてしまう最後のケースは「自己超越の欲求を満たすため」というものです。

能力や可能性の芽が出尽くして「自己実現の欲求」が満たされた人間は、最終的には、個人の枠を超えて、人類や社会のために役立ちたいと思うようになるとされています。

自己超越の欲求(個人の枠を超え、貢献したい)
→社会に貢献したい
→世界中の負を解消したい
→戦争や貧困のない世界にしたい

それこそビジネスである必要はなく、ボランティアやNPOといった非営利なものも含め、「世の中に本当に価値がある」と思うことをしたくなるものです。

嘘偽りなく本当にいい世界を実現したい

自己超越の欲求まで到達した方は、嘘偽りなく「社会のためになるようなことをしたい」と本気で考えています。

そのため、心の底から共感できる明確なビジョンがあり、エンドユーザーに本質的な価値提供をしているtoCビジネスをおこなっている事業でないと、厳しいものがあるかもしれません。

運営者
マズローによると人類の2%が自己超越の段階に達するとされていますよ!退職を防ぐには、営利ではなくビジョン経営で志を同じくする他ありません。

改めて、ここまで説明した「エース社員が辞めていく理由」を再掲すると以下の通りです。

種類 満たされて
いない欲求
辞めていく理由
成長
欲求
自己超越 ・社会貢献度の大きい仕事をしたい
・本質的に価値のある仕事をしたい
自己実現
の欲求
・さらなる自分の成長を求めて
・自分の価値を最大限発揮したい
欠乏
欲求
承認欲求 ・人事評価に不満がある
・組織内で十分に活躍できていない
社会的欲求 ・経営陣のビジョンに共感できない
・所属したい組織ではない or 孤独
安全及び
生理的欲求
・激務で睡眠や食事が取れていない
・ストレスで精神的に健康ではない

上位の成長欲求が転職理由であれば、自己都合なので義理を果たしてくれる可能性が高いですが、下位の欠乏欲求がいくつも満たされないと、一方的に退職してしまうことがあるので注意が必要です。

また、下位の欠乏欲求が高いレベルで満たされていても、エース級の社員となると「自己実現の欲求」を満たすために退職するケースがあるのも気に留めておきましょう。

エース社員の採用におすすめな人材紹介会社

ここでは即戦力クラスの人材採用におすすめな人材紹介会社・採用サイトを紹介していきます。

おすすめな人材紹介会社
  • 採用工数をかけられない
    →人材紹介会社(転職エージェント)
    ex. JACリクルートメント
    ex. リクルートエージェント
  • じっくりと採用工数をかけられる
    →スカウトサイト(ex. ビズリーチ)

特に、管理職クラスはなかなか市場に出回らない(特に優秀層)ので、いくつか登録しておきましょう。それぞれ簡単に特徴を紹介していきます。

JACリクルートメント

JACリクルートメントは、30~40代のハイクラス・エグゼクティブ人材の採用に特化した人材紹介会社です。

求職者と直接面談している営業担当がフロントを担当してくれるので、経験やスキルを踏まえて「入社後に活躍してくれるか」という目線でミスマッチの少ない提案をしてくれる特徴があります。

また、ハイクラス向けの転職エージェントとしてブランド認知力が高いので、転職を本気で検討している方が多く登録しているのがポイントです。

もちろん成果報酬型で、採用するまで費用が発生しないようになっているので、どのような人材がいるかだけでも確認してみると良いでしょう。

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電話番号:03-5259-6924

リクルートエージェント

いまさら説明するまでもないかと思いますが、ハイクラス人材を採用するならリクルートエージェントもおすすめの人材紹介会社の一つです。

圧倒的な求人数から、転職を検討している求職者にとっては登録必須と言ってもいいエージェントとなっており、利用者がどこよりも多いので、母集団形成にぴったりです

また、通常のメンバー層の採用だとRA(企業担当)とCA(求職者担当)の分業体制をとっていますが、高年収層であれば、専門部署のアドバイザーが一気通貫で対応しているので安心です。

もちろんハイクラス層だけでなく、一般スタッフ層の転職まで幅広く対応可能なので、採用にお困りであれば、ぜひ相談してみてください。

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電話番号:0120-98-3562

ビズリーチ

人材紹介会社ではなくスカウト型サイトなので、自社である程度の運用工数は必要になりますが、”即戦力採用”で知られるビズリーチもおすすめです。

なかには転職意向度がそこまで高くない方もいますが、職種やスキルで検索してヒットした候補者の職務経歴書を見たうえでスカウトすることができるのがポイント。

なにより利用者数が144万人と非常に多いので、あなたの企業にマッチするエース社員人材を採用するためにも、余裕があればぜひ検討したいスカウトサイトです。

\60秒で無料登録!限定求人あり/

電話番号:0120-275-045

最後に

ここまで「エース社員が辞めてしまう理由と対策」を説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。

辞めてしまう理由をひとことで言うと「現状に満足していないから」で、マズローの欲求5段階説のフレームを用いると簡単に説明できます。

引用元:マズローの5段階欲求とは

種類 満たされて
いない欲求
辞めていく理由
成長
欲求
自己超越 ・社会貢献度の大きい仕事をしたい
・本質的に価値のある仕事をしたい
自己実現
の欲求
・さらなる自分の成長を求めて
・自分の価値を最大限発揮したい
欠乏
欲求
承認欲求 ・人事評価に不満がある
・組織内で十分に活躍できていない
社会的欲求 ・経営陣のビジョンに共感できない
・所属したい組織ではない or 孤独
安全及び
生理的欲求
・激務で睡眠や食事が取れていない
・ストレスで精神的に健康ではない

成長欲求を求めての転職であればやや仕方がない部分もありますが、より低レベルの欠乏欲求(ないと不満となるもの)が満たされていないとすぐに転職してしまうので、注意することが重要です。

ぜひはじめられるところから試してみてください!

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東証プライム上場企業の現役管理職。企業側として新卒・中途採用をしている経験と、自身が転職した体験談から記事を執筆。元転職エージェント。