転職の給与交渉で損をしない方法|注意点やタイミングを上場企業部長が解説

「転職で給与交渉はして良いの?」
「もらえるならもっと欲しいけどコツはある?」

結論として、転職時の給与交渉は可能ですが、やり方を間違えると失敗するだけでなく心象を悪くしてしまうので、慎重に進める必要があります。

本記事は、上場企業部長の筆者が、中途採用を行う企業側目線と、過去三度の転職をした経験を踏まえて「年収交渉で失敗しない方法」を解説したものです。

この記事を書いた専門家
佐々木
佐々木
三度の転職経験(年収500→730→950→1200万円)で転職サービスを使い倒し、現在は事業部長として新卒・中途採用に注力。自身の転職経験と企業目線の両軸からポジショントーク抜きの本質的な情報発信にこだわっている。

給与交渉はできるが、慎重に行うべき

内定承諾前であれば給与交渉は可能です。しかし、交渉の進め方を間違えると「ただお金が欲しいだけ?」と思われてしまい、心象が悪くなるので注意が必要です。よくあるNGパターンを3つ見ていきましょう。

NG1.面接の逆質問で給与の話からする

一次面接の逆質問で給与交渉をするのはやめましょう。まだお互いの理解が進んでいない段階で「もっとお金ください」と伝えてしまうと、カネ目的で転職をしようとしていると思われます。相当優秀でない限り、カネ目的で仕事を選ぶ人と一緒に働きたいと思う方はいません。

特に、初対面の第一印象は、今後一生の評価を左右してしまうとされているので(心理学でいう初頭効果)、なるべく給与の話題は避け、綺麗事を中心に聞くことをおすすめします。(→逆質問の例

NG2.業界の相場とかけ離れた年収額を希望する

業界の相場をかけ離れた年収額の希望はやめましょう。絶対に失敗します。実際に、給与交渉される事業部側としては「自分の市場価値を差し置いて何言ってんだこいつ」とイラッとします。

なにより、現実的に難しいことを理解できずに、自分の希望を一方的に伝えてしまう拙い行動に、ビジネスパーソンとしての能力(自己認知)を疑ってしまいます。その結果、内定通知を出す前に「採用は見送ろう」となるのです。

そのため、あなたの市場価値に自信がないのであれば、給与交渉はしない方が良いです。特に、第二新卒やスキル面で成熟していない場合は絶対にやめましょう。

NG3.クッションを添えず一方的に希望を伝える

給料交渉は非常に繊細な話題です。にもかかわらず、以下のような”クッション言葉”を添えた「受け手目線でのコミュニケーション」をできないようでは、心象は悪化します。

  • 大変、差し出がましいお願いになりますが、
  • 貴社規定から逸脱しない形で構いませんので、
  • 給与額をご相談することは難しいでしょうか

上記のように、クッション言葉を添えてやんわりと伝える品位が求められます。また、表面上の言い方だけではなく、企業側が納得できるような根拠(次章で解説)を提示することが重要です。

交渉理由は「他社の提示額に負けている」一択

給与を上げて欲しい理由はいくつかあると思いますが、企業側に伝えても問題がないのは「競合他社が自分を高く評価してくれていて、御社と悩んでいる」といった理由のみです。

上記以外の理由はおすすめしません。なぜなら、面接時に希望条件を聞かれているはずなので「なぜ今まで隠していたのか」という不信感に繋がるためです。また理由によっては「内定をもらった後に希望条件を変えるのはおかしい」と誠実性を疑われます。

伝え方のポイント

高い給与を出した競合に惹かれていること」を伝えると「給与の高い会社に行きたいだけ?」と心象が悪化するので、下記のポイントを押さえましょう。

  1. 提示年収”以外”は、御社のほうが良い
  2. 他社が自分を高く評価(高い年収を提示)
  3. 正直揺れているので、検討時間が欲しい

上記のように伝えれば、企業側としても悩む理由に納得でき「この機会を逃したくないので、他社より良い条件を出せないか」と検討してくれるようになります。

ポイントは「年収を上げて欲しい」と直接的に伝えるのではなく、「ライバルが自分を高く評価してくれているので悩んでしまっている」と間接的に伝えることです。

佐々木
場合によってはこちら側から「◯◯◯万円以上をご提示いただけるなら即決します。」といったラインを提示してあげると良いでしょう。

交渉タイミングは「内定後の承諾前」がベスト

給与交渉のタイミングは「内定が出ていて承諾する前」がベストです。なぜなら、内定前に交渉をすると選考そのものが白紙になるケースがあるからです。

逆に、内定を出したあとに内定を取り消すことは違法なのでリスクがありません。

内定承諾後の給与交渉はしない方が良い

内定を承諾してしまったらそれ以上元には戻れないのが基本です。対等な立場での”交渉”はできなくなる(”お願い”扱い)ので、適当な理由をつけて断られます。

また、理由次第ですが、交渉が成立したあとに「やっぱりもっとお金が欲しい」と伝えるのはおすすめしません。一度決めたのに、筋を通さないのは不誠実です。

年収交渉を失敗した事例(40歳男性)

年収550万円でオファーを獲得した求職者が、オファー面談後にエージェント経由で「年齢も年齢なので600万円は難しいでしょうか」と相談した事例です。

当時の企業側(筆者)は以下のように思いました。

  • ”年齢”にお金を払うとでも思っている?
  • 自己中心的な要望を伝えるだけの交渉?
  • なぜオファー面談中に直接相談をしなかった?

もし仮に、この交渉方法で「そうですね。40歳なので年収を50万円プラスしますね。」となると思ったのだとすれば、相手目線で物事を考える想像力が足りません。

このように間違えた交渉をしてしまった求職者の評価は、入社前から大きく悪化することになりました。返答はもちろん「不可です。条件を飲めないなら見送ってください。」と交渉失敗に終わりました。

給与交渉のコツ・注意点

ここでは給与交渉のコツや注意すべき点をお伝えしていきます。

希望額があるなら最初から伝える

まず、希望する金額があるなら書類選考の段階で伝えるようにしてください。選考が進むまでは隠していて、あとから条件を追加するのは、不誠実です。

おそらく一次面接で確認されるので、企業側が希望するであろう返答(貴社規定に従います)を伝えるだけではなく、正直に伝えるようにしましょう。

そうすることで、最初から「希望年収でオファーが出せるか否か」という観点で面接をしてもらえるので、お互いに時間を無駄にしなくて済みます。

転職エージェントに丸投げしてはいけない

年収交渉を転職エージェントに丸投げするのは危険です。私は上場企業部長として多くの転職エージェントとやり取りをしていますが、ひどい年収交渉をしてくる方が多くいます。

それこそ先ほど紹介した失敗事例にあったように「年齢も年齢なので年収600万円を希望していますが、いかがでしょう?」とそのまま伝書鳩的に伝えてくるケースが多いからです。この交渉がうまくいくはずがありません。

転職エージェントにうまく給与交渉をさせよう

転職エージェントに給与交渉をさせる場合は「他社からもっと良い条件で内定をもらっていて悩んでいるので時間が欲しい」と、エージェントに伝えるだけです。

そうするとエージェントは企業側に「◯◯さんが別経由で受けた会社と悩んでいるそうです。給与で負けているので同じ水準に上げてはどうでしょう」と自分から交渉してくれます。

希望年収を聞かれて低く言わないこと

日本人は謙虚さを美徳と考える方が多いので、現職で年収1,000万円以上あり、本音ではそれ以上欲しくても、建前で「年収800万円以上」と下げて伝えることがあります。ただ、おすすめしません。

なぜなら、ほとんどの企業が希望金額ギリギリの800万円でオファーを出してくることになるので、内定後に給与交渉をするのが面倒だからです。

さらに、もともと「800万円を希望」と言っていた相手が、内定を獲得した途端に意見を変えると、企業側も違和感を感じるものです。

また、時間の無駄でもあります。面接練習をしたいのであればナシでもありませんが、年収1,000万円までしか出せない企業の面接に進むのは、お互いに時間がもったいないです。

現職の年収を盛って伝える(バレないよう確定申告必須)

リスクがあるので推奨はしませんが、現職の年収を違和感がない範囲で盛って伝えることで、オファー金額を引き上げるというのも一つの手段です。

ただ、入社後の「源泉徴収票」や給与から天引きされる「住民税」からバレる可能性があるので、確定申告を自身で行うことでバレないようにする必要があります。

・源泉徴収票
→確定申告をすれば提出の必要なし

・住民税
→確定申告時に普通徴収(自分で納税)に変更可能

転職時のオファー額を決める要素

中途採用でのオファー年収を決める要素を紐解くことで、転職で年収をあげるための方法が見えてきます。提示年収は以下の要素で決まるので見ていきましょう。

転職のオファー年収を決める4要素
  1. 自社給与テーブルから決める
  2. 競合企業のオファー額以上にする
  3. 候補者の前職給与を参考にする(前職考慮)
  4. 採用して得られる利益を考える(原価的な考え方)

①自社給与テーブルから決める

中途採用のオファー金額を決める上で、一番主流な決め方なのが「自社の相場(給与テーブル)」によって決めるというものです。給与の決め方としては以下2形式のいずれかが一般的です。

  • 年功序列型
    →年齢や在籍期間に応じて給料が決まる
  • ミッショングレード制
    →任される役割に応じて給料が決まる

20代〜30代といった若い世代が大手企業で高年収を狙う場合、前者の年功序列型だと難しいので、後者のミッショングレード制を導入している実力主義の会社を狙いましょう。

若くして高年収を狙うなら給与テーブルは確認必須

多くの企業において、等級別の給与は、あらかじめ社内で定められた給与テーブルに則って決まるので、転職前に必ずチェックするようにしてください。

それこそ「部長になっても年収600万円」の企業にいるようでは、どう頑張って出世しても、高年収にはなれないからです。

<例:給与テーブル>

等級役職給与ベース
5役員1,200万円~
4部長900~1,200万円
3課長・マネージャー700~900万円
2主任・リーダー500~700万円
1一般スタッフ300~500万円

仮に、上記のような給与テーブルの場合、年収800万円以上もらうためには「等級3. 課長職(700~900万円)」になれば良いので、若くとも手が届く範疇であることがわかります。

佐々木
たまに、管理職になってもそこまで給与が上がらないケースがあるので注意しましょう!

管理職を狙うならメンバーの年齢が重要

また、管理職(課長や部長クラス)を狙うなら、部下となるメンバー層の年齢は重要です。なぜなら、年下が上司となることを嫌がるのが一般的だからです。

例えば、メンバー層が30代ばかりで、30代後半~40代でようやく管理職がで始めるような大手企業では、20代が管理職になることはほぼ不可能です。

一方で、20代メンバーが中心のベンチャー企業であれば、管理職になるために年齢を気にする必要はほとんどなくなるでしょう。

企業全体の”平均”は参考にならないので注意!

余談ですが、転職後の給与イメージをつけるために、企業全体の平均(年収・年齢)を見る方が多いですが、参考とならないケースがあるので注意しましょう。

平均はあくまで平均なので、最初から管理職以上の求人票を見るか、転職エージェントや人事を通して下記情報を得ることをおすすめします。

  • 給与テーブル(等級と報酬体系)
  • メンバーと管理職の年齢分布
佐々木
仮にメンバーの年収が高くなくても、若い社員ばかりで昇格しやすく、さらに管理職手当の上がり幅が大きい会社もあるので、チェックが必要です!

②競合企業のオファー額以上にする

オファー年収を決める要素として「業界や競合他社の給与水準」の理解も欠かせません。なぜならスキルや経験の”市場価値”で年収が決まるからです。

それこそ、どの企業も高い年収でオファーを提示しているのに、低い年収で募集を出しているような企業には、優秀な人材が集まらないからです。

特に、内定後に「競合企業から高いオファー金額で内定をもらっていること」を伝えることで、オークションのようにオファー金額を引き上げることができる(カウンターオファー)ので活用してください。

佐々木
また、年収オファー額の引き上げは、転職エージェントをうまく利用することで簡単にできますよ!

③転職前の給与と比較(前職考慮)

転職後の給与を決める上では「転職前の給与」も参考になる要素です。実際、あなたの能力が十分高いと判断されれば、前職の年収を下回らない金額でオファーを提示してもらえます。

理由は、転職後のモチベーション低下を防ぐため。慣れない仕事と給与減額のダブルパンチでパフォーマンス低下が懸念されるので「年収は下げない」が基本です。

参考|クレスピ効果

これまで一定だった報酬が少しでも下がると、それ以上にモチベーションが下がる心理効果

なにより多くの方の転職理由(本音)は「年収アップ」が多いので、年収が上がらないと辞退される可能性があります。これではせっかくの機会を逃しかねません。

逆に言えば、年収400万円の転職希望者にいきなり年収800万円のオファーを出すことはあり得ないので、転職で高い年収のオファーをもらうためには、今の職場で相応の年収まで引き上げておく必要があるということです。

佐々木
転職でオファー年収800万円を目指すなら、最低でも転職前で600万円は欲しいところですね。

④採用して得られる利益を考える(原価的な考え方)

やや特殊な事例ですが、あなたを採用することで得られる利益の額が大きく、確実性が高い場合には、原価的な考え方で、転職後の給与が優遇される可能性があります。

例えば、あなたがコンサルや代理店勤務でいくつかの太客を担当していて、転職するときにその顧客を引っ張ってこれる場合、転職先企業としては是非ともあなたを採用したいものです。

カモがネギを背負ってきたようなものです。仮に、あなたが顧客を引っ張ってくることで得られる利益が3億円あるなら、あなたに2億円出しても、企業側に1億円残ります。

まとめ

ここまで転職の給与交渉をして良いのか、するとしたらどういった点に注意すべきかを説明してきましたがいかがでしたでしょうか。

基本的に、転職時の給与交渉は可能ですが、やり方を間違えると失敗するだけでなく心象を悪くしてしまうので、慎重に進めるようにしましょう。

この記事を読んだあなたの人生がより豊かなものとなることを祈っております。