第三者話法とは|第三者の事例や口コミを紹介して相手に信用させるテクニック

「第三者話法」とは、相手を説得する際、第三者の事例や意見・気持ちを紹介して相手からの信用を高める手法のことを指しています。

聞き手は第三者の体験を聞かされているうちに、あたかも自分ごとのように感じてくれるので、話し手の意図通りに行動しやすいという効果があります。

そのため、セールスやマーケティングといった職種を中心に、ビジネスの世界で広く利用されるようになっている手法です。

今回はそんな「第三者話法」について解説していきます。

「第三者話法」は精神医学の「マイフレンドジョンテクニック」と近い

「第三者話法」は、精神科治療の分野で「マイフレンドジョンテクニック」と名付けられたテクニックと近い意味を持つので、

ここではその関係性について紹介していきます。

ではそれぞれ見ていきましょう。

「マイフレンドジョンテクニック」はミルトン・エリクソンの催眠療法

「マイフレンドジョンテクニック」は、アメリカの精神科医ミルトン・エリクソン(Milton・H・Erickson、1901-1980)が精神科治療に用いて、弟子によって名付けられました。

ミルトン・エリクソンは、精神科治療に催眠療法を用い、いとも簡単に症状を消失させることで非常に有名でした。

そんなミルトン・エリクソンはよく、患者を催眠状態に誘導する際、過去に行った催眠誘導の言葉や抑揚を再現して、自然に催眠状態へと誘う技法を用いていました。

例えば、以下のような話し方です。

友達のジョンから聞いた話なんだけど、、、

そして患者は、過去の催眠誘導の話を聞いているつもりでいるので、自分が催眠状態に誘導されているとは思っていない無防備な状態のまま、催眠に誘導されてしまうのです。

このように「マイフレンドジョンテクニック」によって、第三者の体験を聞かされているうちに、聞き手があたかも自分ごとのように感じ、話し手の意図通りに行動してしまうのです。

「マイフレンドジョンテクニック」と「第三者話法」の共通点と相違点

ミルトン・エリクソンが催眠療法に用いた「マイフレンドジョンテクニック」と、現代で広く知られる「第三者話法」の共通点は、

話し手から第三者の体験を聞かされているうちに、聞き手があたかも自分ごとのように感じ、話し手の意図通りに行動してしまうところです。

そして違いは、聞き手側の意識にあり、

「第三者話法」での聞き手は、気になっている物事に対して、第三者の体験を客観的に聞いているという意識であるのに対し、

「マイフレンドジョンテクニック」での聞き手は、世間話や前振りの延長で、第三者の体験を客観的に聞かされているという意識である点です。

「第三者話法」「マイフレンドジョンテクニック」の背景には「ウィンザー効果」がある

セールスにおいて「第三者話法」や「マイフレンドジョンテクニック」が購買意欲を高めてしまう背景には、どちらも「ウィンザー効果」が背景にあるためです。

ウィンザー効果とは、当事者が直接言うよりも第三者を介して評価を伝えたほうが、信憑性があると認識する心理的傾向のことです。

由来は、米国生まれの作家アーリーン・ロマノネスの作品『伯爵夫人はスパイ(原題:The Spy Went Dancing)』に登場するウィンザー伯爵夫人の言葉、

第三者の誉め言葉がどんなときにも一番効果があるのよ、忘れないでね

から来ています。

例えば、セールス番組の第三者役、プロモーションドラマの主人公の褒め言葉、Webサイトの口コミなどには、PRの信憑性を高める効果があるのです。

このように、商品をつくった本人や企業の評価よりも、第三者の評価の方が信頼される「ウィンザー効果」のメカニズムを理解して、

物が売れやすい状況を意図的に使っていくことがマーケティングには大切なのです。

では実際に、マーケティングで活用されている事例を見てみましょう。

「第三者話法」のマーケティングでの活用事例

「第三者話法」は、マーケティングの世界でよく使われています。

例えば以下のような例が有名でしょう。

ではそれぞれ解説していきます。

事例(1) テレビショッピング

様々な商品を紹介するテレビショッピングですが、第三者役となる芸能人などが出演することが大半であり、この第三者役がまさに「第三者話法」のテクニックを活用したものです。

(なお、第三者役には、誠実で嘘をつかなそうな人物、良し悪しをはっきり言うイメージのある人物が登用されます。)

この第三者役は、プレゼンターから紹介を受けながら、商品を手にとりながら実際に使ってしてみたりと、あたかも消費者側のような立場で商品を知っていきます。

そして、視聴者はショッピングセールスとわかって視聴しているのにも関わらず、第三者役と同じように商品について知っていくので、次第に同調してしまうのです。

例えば、テレビのなかで第三者役がプレゼンテーターのセールストークに納得させられていると、ついつい自分も頷きながら観てしまうことでしょう。

事例(2) 商品のPR番組

商品のPR番組でも、口コミといった形で「第三者話法」が活用されています。

事実、販売元の企業による手前味噌のPRは嘘くさく感じますが、第三者役が消費者側の感想として言った口コミは比較的すんなりと耳に入ってくるものです。

例えば、健康食品を試してみた人の写真が映し出され、その効果を口々に話していると、次第にその商品のよさに信頼感を高め、購買意欲も高まってくることが知られています。

事例(3) Webサイトの口コミ

よくある勘違いですが、対話ではない口コミサイトは、実は「第三者話法」でも「マイフレンドジョンテクニック」でもありません。

しかし、消費者や閲覧者が第三者からの評価を得るという点では、同じように「ウィンザー効果」を発揮させられるプロモーション方法です。

口コミサイトが信憑性を集めるのは、その口コミは消費者が直接発信しているもので、販売元企業などの「利害関係者がコントロールできないもの」と認識されているからです。

実際に、商品紹介ページに口コミという形で掲載されているものを見て、購入を後押しされたケースも多いのではないでしょうか。

ただ、自社サイトの口コミは、あくまでサイト作成者側が用意した「都合の良い口コミ」ではないか、とかえって疑われるものです。

そのため、口コミを見せるなら、自社サイトではない別のサイトに掲載されている口コミをあえて見せることが効果的です。

もし自社サイトに掲載するなら、批判や辛口コメントも含めて掲載し、企業側による取捨選択は行っていないように見せることが大切になります。

「第三者話法」「マイフレンドジョンテクニック」の使い分け|営業に活用するポイント

「第三者話法」と「マイフレンドジョンテクニック」は、商品を売り込みたい相手の意識によって、使い分けるようにしましょう。

第三者話法の実践ポイント
  • 第三者話法
    相手は、あなたが営業に来ていることを重々わかっていて、商品のよさを知りたい場合
  • マイフレンドジョンテクニック
    相手は、あなたが営業に来ているのかどうか、売り込みたい商品があるのかどうかを知らない場合

ここでは、商品を販売する「営業」に焦点を当てて、活用ポイントを紹介していきます。

では順番に見ていきましょう。

営業に「第三者話法」を活用するポイント

第三者話法は、あなたが営業に来ていることを重々わかっていて、商品のよさを知りたいと考えている相手に効果的です。

例えば、あなた自身の言葉で商品のよさを訴えかけるよりも、他の顧客が商品に対してどう評価しているのかを伝聞情報として紹介するのです。

このとき、自分も同じように評価しているように話してしまっては、「ウィンザー効果」が台無しなので、自分も顧客から教えられたかのように話すのがポイントです。

第三者話法の実践ポイント
  • 自分はこのくらいで評価していたのに、顧客からはこんな予想外の評価もいただいた
  • 顧客に褒められたことで、こういうよさもあるのかと知った

こうすることで相手は、「なるほど…」と納得しながら、セールストークに耳を傾けてくれるようになります。

営業に「マイフレンドジョンテクニック」を活用するポイント

マイフレンドジョンテクニックは、あなたが営業に来ているのかどうか、売り込みたい商品があるのかどうかが相手に知られていない状況で効果的です。

例えば、「この前ある顧客のところでこういう話をしたら、関心を持ってくれて、売るつもりで言ったわけではないのに買ってもらってしまった」のように話しましょう。

ポイントは、相手がプロモーションドラマを見ているような気持ちになれるよう、会話形式で臨場感たっぷりに雑談します。

相手はほうほうと納得しながら雑談めいた物語に引き込まれていき、相手が自分のことをセールスマンではなく物語の語り手のように感じて耳を傾け始めたら大成功です。

ほどよいところで「もしよかったら」と商品をすすめてみてください。

「第三者話法」「マイフレンドジョンテクニック」の怖さ

ビジネスにおいて使いどころの多い「第三者話法」「マイフレンドジョンテクニック」ですが、これを使うときは、虚偽によって信頼を失わないように注意してください。

実際、セールスで話した内容に嘘があったり、体験談や口コミがねつ造だったりサクラによるものだったりがバレたとき、大きな信用失墜を招くでしょう。

しかも、信用失墜を経験した相手が、ほかの顧客や消費者にそのことを話してしまった場合、ウィンザー効果の原理に基づけば、

多くの人は、直接的利害関係者である企業や営業担当の弁解よりも、第三者による噂話を信用するため、その影響力は計り知れません

そのため、相手から信用信頼を得ようとするときには、後ろ暗いことはせず、あなた自身が自信をもって話せる内容を使うべきです。

例えば、モニター調査やお客さまアンケートなどはこうした話の種の宝庫になるので、「これは」と思う表現や感想を拾うなど、うまく活用してください。

さいごに

いかがでしたでしょうか。

ここまで説明してきたように、「第三者話法」とは、相手を説得する際、第三者の事例や意見・気持ちを紹介して相手からの信用を高める手法のことでした。

そして「ウィンザー効果」によって、聞き手は第三者の体験を聞かされているうちに、あたかも自分ごとのように感じ、話し手の意図通りに行動してしまうのです。

ビジネスにおける営業やマーケティングなど、様々なシーンで活用できるので、ぜひ活用してみましょう。

このページを読んだあなたの人生が、
より豊かなものとなることを祈っております。

参考文献
  • 『ミルトン・エリクソン入門』
  • 『伯爵夫人はスパイ』