アロンソンの不貞の法則とは|知らない人からの褒め言葉を嬉しく感じる心理現象

アロンソンの不貞の法則とは、よく知っている相手からの褒め言葉よりも、よく知らない相手からの褒め言葉の方が嬉しい、と感じる心理現象です。

例えば、以下のような経験に、身に覚えがあるのではないでしょうか。

  • 家族に認められても嬉しくないけれど、他人から認められると嬉しい
  • 仲の良い友だちに褒められるとお世辞だと思うけど、ちょっとした知り合いに褒められると本心から褒めてもらえている気がする

これは、恋愛対象となる性別の人と恋愛関係になったり、より早く親しくなったりしたいときに活用できる法則として知られています。

恋愛関係も人間関係のうちですから、「アロンソンの不貞の法則」も、恋愛関係以外の人間関係に応用して活用することが十分に可能です。

そこで今回は、「アロンソンの不貞の法則」について解説していきます。

「アロンソンの不貞の法則」の提唱者はエリオット・アロンソン

「アロンソンの不貞の法則」は、アメリカの社会心理学者であるエリオット・アロンソン(Elliot Aronson)によって提唱されました。

アロンソンは特に、認知という脳機能が、事実を自分に都合よく捻じ曲げて解釈し、思い込んでしまう心理学的法則を多く発見したことで知られています。

その1つである「アロンソンの不貞の法則」は、「承認欲求」と「内集団バイアス」が関係していると言われています。

親密な相手からの褒め言葉が嬉しくない理由

親密な相手からの褒め言葉が嬉しくない理由は、「内集団バイアス(いわゆる身内びいき)」によって誇張されたものだと認識してしまい、”納得感”が足りず、承認欲求が満たされないためです。

そして逆に、親密ではない相手からの褒め言葉は、より客観的に受け取られやすく、“自分が納得できる”好意的な言葉として伝わり、嬉しく感じるのです。

ここでは以下2つの心理現象が大きく関わっているので詳しく解説していきます。

では、それぞれ見ていきましょう。

「承認欲求」は、自分が納得できるかが鍵

「承認欲求」とは、所属する集団や自分を取り巻く人間関係から、自分は価値のある存在であると認められているという感覚のことで、自分で自分を認め尊びたいという欲求でもあります。

そのため、人は自分の主観ではなく、”自分が納得できる”ような、客観性を持った他者からの称賛や好意を貪欲に求める側面を持ち合わせているのです。

なおこの承認欲求は、マズローの欲求5段説によって提唱されました。

関係の深い相手を贔屓する「内集団バイアス」

内集団バイアスとは、自分が所属する集団の外にいる人よりも、同じ集団内にいる人に対して好意的になる心理現象、いわゆる身内びいきのことを意味します。

そして、人は「身内びいき」があることを知っているため、同じ集団内にいるような身近な人から褒められても、誇張されたものだと感じ、素直に受け取れないのです。

そして反対に、あまり関わりのない相手からの褒め言葉は、より客観的な事実を伝えてくれているように感じられ、素直に受け取りやすい傾向にあります。

このように、「承認欲求」を満たすような”自分が納得できる”だけの客観性を持った「関係性の低い相手」だからこそ、好意的な言葉が効力を発揮します。

それが「アロンソンの不貞の法則」のメカニズムです。

「アロンソンの不貞の法則」は「初頭効果」と組み合わせると効果絶大

「アロンソンの不貞の法則」を日常生活で活かそうとするなら、まだ関係性が深くないうちに、相手を褒めておくことが効果的です。

なぜならば、「初頭効果」によって、最初に持たせた好印象がずっと残り続けるというのと、

さらに「ハロー効果」によって、一度好印象を抱かせさえすれば、他の評価も好印象に捉えやすくなる認知バイアスが働くためです。

つまり、自分に対して良い評価を持たせ続けられるのです。

例えば、中途社員Aさんが入社した日に、「Aさんめっちゃ頭いいよ」とその中途社員Aさんにギリギリ聞こえるように他メンバーに紹介すれば、絶大な効果を発揮するでしょう。

関係性が深い相手を褒める場合は、「ウィンザー効果」と併用しよう

そもそも「アロンソンの不貞の法則」の効果は、関係性が深くない相手であることが前提なので、すでに関係性が深い相手を褒めたい場合は、ウィンザー効果を使うのが良いでしょう。

このウィンザー効果とは、第三者から間接的な評価を伝えたほうが信憑性や信頼感が増すという心理現象のことです。

例えば、自分の言葉であっても、

  • 「取引先の○○さんが□□と褒めていた」
  • 「あなたが□□で評価が高いと噂されているのを小耳に挟んだ」

などと、伝聞形式に伝えるのがおすすめです。

そして、仮に言葉を発しているのが自分であったとしても、褒めている人がよく知らない相手であれば、「アロンソンの不貞の法則」は効果を発揮するのです。

「アロンソンの不貞の法則」の注意点

元々『不貞』という言葉が使われているように、身近な相手をないがしろにしていると、ほかの誰かと親密になり、あなたのことを必要としなくなるかもしれません。

ですから、「アロンソンの不貞の法則」を使うことばかりではなく、身近な人が「アロンソンの不貞の法則」で離れていってしまわないよう、留意していることが欠かせません。

幸い相手と親密になるために使える心理学的法則は、「アロンソンの不貞の法則」だけではありません。例えば、

好感度を高める心理法則
  • 類似性の原理
    共通点が多い人に対して好意度が高まる現象
  • ミラーリング
    相手と動作を合わせることで好意度が高まる現象
  • 内集団バイアス
    同じ集団に所属する人に良い評価をしやすい現象
  • 単純接触効果
    繰り返し接すると好意度が高まる現象

など、好印象を与えた状況や目的にあった心理学的法則を駆使し、自分をよく評価してくれる味方を増やしていきましょう。

もちろん、ビジネスでは好印象を与えた後にどう行動するかが大切になりますが、相手と良好な関係を作っていく取っ掛かりとして、活用しない手はありません。

さいごに

ここまで「アロンソンの不貞の法則」について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

アロンソンの不貞の法則とは、よく知っている相手からの褒め言葉よりも、よく知らない相手に言われた褒め言葉の方が嬉しい、と感じる心理現象でした。

そして、最初の印象がずっと続く初頭効果と併用すると、ハロー効果によって、自分へのポジティブな評価バイアスがかかり続けるので、活用しない手はないでしょう。

このページを読んだあなたの人生が、
より豊かなものとなることを祈っております。

参考文献
  • 『ザ・ソーシャル・アニマル―人と世界を読み解く社会心理学への招待』
  • 『人間性の心理学―モチベーションとパーソナリティ』