注意回復理論とは、自然の中で過ごすと、注意力が回復し、より集中できるようになるという理論です。
1980年代に、ミシガン大学の心理学者レイチェル カプラン&スティーブン カプランによって提唱されました。
方向性注意と選択性注意の切り替えが集中力を持続させる
注意回復理論は、注意力の種類である、
- 方向性注意(1つのことに集中した状態)
- 選択性注意(複数に注意が分散した状態)
の切り変えをうまく実行できたために集中力が増加する、ということがわかっています。
一般的に『集中力』というと、前者の方向性注意(目の前1つのことに集中)が持続している状態を指しているのですが、これはなかなか長続きしません。
実際、『人の集中は90分が限界』という有名な学説にあるように、勉強や仕事などをしようにも、次第に集中力が減ってきてしまったという経験は誰しもあるでしょう。

一方、選択性注意は、自然の中にいるときの『景色・匂い・川の音・風の肌触り』など、五感全てで感じている状態、いわば複数の事柄に注意が分散された状態のことを指しています。
一見すると注意…?と違和感はありますが、この選択性注意が優位になっている状態こそが、減ってしまった『方向性注意の集中力』を回復・持続させる効果的な方法なのです。
ちなみに、植物を目の前に置くだけでも注意力は回復する
ノルウェー大学の学生を対象にした実験では、植物をただオフィスに置くだけでも注意力が増加するということが実証されています。
実験の内容はいたって単純で、デスクの周りに4つの植物をおいた環境と、おいていない環境で、『一連の文章を読み、各文章の最後の単語を思い出す』という注意力を測るテストを行って、その結果を比較したものです。
結果としてはやはり、植物のある環境にいた被験者の方が、良い成績となりました。

千葉大学の論文では、オフィスに植物を設置することで、環境への満足度が大きく向上することが実証されています。
例えば、
- 緊張・不安・疲労の軽減
- 仕事の進捗・会話・活気が向上
などに効果があるようなので、ぜひ観葉植物を設置することをおすすめします。
さらに、植物にはストレスを緩和する効果もある
学会誌『Physiological Anthropology』に掲載された研究によれば、植物との積極的に関わることで、生理学的・心理学的にストレスが軽減されるとのことです。
さらにNASAの研究でも、植物が空中のホルムアルデヒドや揮発性有機化合物(VOC)といった屋内有害物質を除去する効果があるとして実証されています。
実際に植物を見ることで気分が安らぐ、という方も多いでしょう。
まとめ
注意回復理論とは、人間が自然の中で過ごすと、注意力が回復し、より集中できるようになるという理論でした。
ここからもわかるように、植物や自然は、人間に大きな効力を与えてくれることがわかります。
それもそのはずで、もともと我々人間は人類史が始まって以来のほとんどを自然の中で暮らしていたからです。
現代において、都会で暮らしているとなかなか自然や植物から受ける恩恵を軽視しがちな傾向にありますが、改めて自然の持つ偉大さを噛み締め、まずは観葉植物をデスクにでも置いてみることから始めましょう。
このページを読んだあなたの人生が、より豊かなものとなることを祈っております。
被験者を2つのグループに分け「数字を逆唱する」ゲームに取り組ませました。
ゲームは集中力が必要とされるような内容で、いわば100から3を引き続ける、つまり、97・94・91・・と続けるような作業でした。
そして、2つのグループには、ゲームを取り組ませる前にそれぞれ『植物園』と『繁華街』を歩かせておいたところ、事前に植物園を歩いたグループの方が20%も良い結果となった、というものです。