バーナム効果とは
バーナム効果は、誰にでも該当するような「曖昧で一般的な性格の特徴」にも関わらず「自身に強く当てはまる特徴」として思い込む認知バイアスです。(別名:フォアラー効果)
有名な例として、占い、心理テスト、手相などがありますね。「言われるとそんな気がする」と感じる例をいくつか紹介します。
- 「酷い…」と言われると、なにか酷いことをしてしまった気がする
- 「あなたは情熱的で、他人に対して深い共感を持っています」と言われて納得する
- 「あなたは新しい人々との出会いを楽しむ社交的な一面がある一方で、自分だけの時間を必要としますね」と言われて納得する
このように、言われるまでは自覚がなくても、言われてみると「確かにそうかも…」と感じてしまうのが、バーナム効果です。
補足:認知バイアスとは
認知バイアスとは、常識や固定観念、また周囲の意見や情報など、さまざまな要因によって、誤った認識や合理的でない判断を行ってしまう認知心理学の概念です。
バーナム効果の由来
バーナム効果の由来は「興行師(サーカスや芝居などを開催する人)」であった「フィニアス・テイラー・バーナム(Phineas Taylor Barnum)」の名前からきています。
バーナムは、2017年に世界中で大ヒットした映画「グレイテスト・ショーマン(THE GREATEST SHOWMAN)」の主人公にもなっていますね。
彼が述べたとされる「We’ve got something for everyone.(誰もが当てはまるものをみんな持っている)」という言葉が語源を由来としています。
また、バーナム効果を実証したのはバートナム・フォアラー(Bertram R. Forer)というアメリカの心理学者で、彼の名をとって「フォアラー効果」と呼ばれることもあります。
バーナム効果の実証実験
1948年、フォアラーは学生を対象にバーナム効果を検証する実験を行いました。
あらかじめ学生たちに心理検査を行い「心理検査から導かれたあなたの性格」と称した10項目を提示しました。
そして、これらの項目が「自分の性格にどれだけ当てはまると感じるか」を「1〜5」の5段階で回答させたところ、結果は4.26と高い数値を示しました。
しかし実は「心理検査から導かれたあなたの性格」の10項目は、各人の心理検査とはまったく関係のない内容で「すべての学生で同じ内容」を提示していたのです。
この結果から、自分に当てはまると言われると、自分のことのように信じ込んでしまう傾向があることが実証されました。
バーナム効果の具体例
例としては、占いがフォーカスされがちなバーナム効果ですが、商談や広告宣伝の領域で応用できるといわれています。
バーナム効果の具体例#1
記事の導入文
記事の導入文で、多くの方に当てはまるような悩みを「○○という悩みがありませんか?」と聞くことで、相手の興味や関心を引きやすいといわれています。
特に、バーナム効果を高める条件である以下3点を抑えていくと効果的ですね。
- 権威のある人に指摘されている
- 前向きな内容で提示されている
- 自分だけに当てはまるものと感じられる
例えば、①を活かす形で作ると「あなたのような□□な人には、○○という悩みが多いのですが、当てはまるのではないでしょうか。」などが効果的でしょう。
バーナム効果の具体例#2
広告のキャッチコピー
Webサイトやチラシで販促を行う際に、以下のような文言がよく使われます。
- 毛穴が気になるあなたに
- 最近肌がくすんできたあなたへ
- ぽっこりお腹が気になりませんか?
このように広告のキャッチコピーでは、ターゲットを絞ったうえで刺さる文言がよく使われています。「バーナム効果」で自分ごととして捉えさせることで、強く反応させる手法ですね。
余談ですが、自分ごとに捉えられないと反応しない状況(傍観者効果)を避けることにも繋がりますね。
認知バイアスを緩和するポイント
認知バイアスの原因は「経験や直感からくる思い込み」にあるので、対処すれば、一定は軽減できます。※ただ、人間である以上、全てを防ぐのは不可能です。
- 認知バイアスへの理解を深める
- 認知バイアス診断で思考の癖を知る
- 批判的に考え、第三者の意見を取り入れる
順番に解説していきます。
認知バイアスを緩和するポイント①
認知バイアスの理解を深める
まず、認知バイアスの存在を知らなければ、防ぎようがありません。あなたがAIではなく人間である限り『なにかしらのバイアスはある』という認識を持ちましょう。
仮に「自分だけは大丈夫」と思っているのであれば、それこそがバイアスです。
認知バイアスを緩和するポイント②
認知バイアス診断で思考の癖を知る
次は、自身が「どういったバイアスを持ちやすいのか」という思考の癖を知ることをおすすめします。ミイダスで診断可能ですね。(記憶だと、無料でできる診断は唯一のはずです。)
▼ミイダスで診断してみよう
ミイダスはもともと、転職市場価値を診断できるアプリですが、「バイアス診断ゲーム」をはじめとした心理学系の診断がいくつかあります。誰でも登録できるので、興味があれば試してみてください。
認知バイアスを緩和するポイント③
批判的に考え、第三者の意見を取り入れる
認知バイアスに陥るのを防ぐために「なにごとも疑ってかかる」「自分と異なる意見を取り入れる」ことが重要です。 例えば以下のようにですね。
- 何が事実で、何が解釈か
- 別の観点から考えると、解釈は変わるか
- どのような反対意見があるか
このように、さまざまな角度から複眼的にとらえることができれば、認知バイアスに陥りにくくはなります。いわゆるクリティカルシンキング(批判的思考)というものですね。
第三者の意見を取り入れるのもおすすめです。利害関係がなく、都合が悪いことも率直に伝えてくれる相手にしましょう。
他の認知バイアス【一覧と具体例】
認知バイアスは『様々な理由で認識が歪んでしまい、事実を正しく認識できずに不合理な(事実でない)認知をしてしまう傾向』を総称したもので、いくつもの種類があります。
認知バイアス | 説明・具体例 |
---|---|
正常性バイアス | 自分に都合が悪い事実を信じない、現実を見ない 例:連帯保証人になったら友達が音信不通に。でもきっと大丈夫! |
確証バイアス | 自分の信念を裏付ける情報を探し求め、それ以外を見ない 例:大好きな彼氏はココが良い!ココも素敵! |
生存バイアス | 現在、生存している事例(成功例)しか見ない 例:成功した起業家を分析して、失敗例を見ない |
後知恵バイアス | 過去の事象に「それは予測可能だった」と勘違い 例:そのじゃんけん、チョキなら勝てるってわかったよね? |
自己奉仕バイアス | 自身に好意的な認識を持ちやすい傾向がある 例:成功は自分の能力が高いおかげ。失敗は外部環境のせい |
自己中心性バイアス | 自分を基準に、他者の心情や認知を推察する 例:自分の価値観を押し付ける、相手目線で考えられない |
感情バイアス | 感情的な好き嫌いが意思決定に影響を与える 例:性能は悪いが、つい好きなブランド商品を買ってしまう |
投影バイアス | 自分の好み、感情、価値観を他人に投影して認識する 例:まわりの人も自分と同じ意見、感情だと思い込む |
一貫性バイアス | 他者の1行動に一貫性があると思い込む 例:さっきナンパしてきた人、絶対いろんな女子に声かけてるよね |
保守性バイアス | 新しい情報を取り入れて、考え方や行動を変えることに躊躇する 例:革新的な新技術が出ても、使わず、従来のやり方に固執する |
バーナム効果 | 曖昧な特徴でも、自分に強く該当すると思い込む効果 例:占い師「あなたは◯◯な人間ですね」→そうかも! |
ハロー効果 | ある事象への評価が、他の目立った特徴に引っ張られる効果 例:清潔感がない人は、仕事もできなさそうだし性格も悪そう |
ダニングクルーガー効果 | 能力の低い人ほど自分を高く評価しやすい心理効果 例:もうこのゲームはコツ掴んだな!オレ最強かも! |
コンコルド効果 | 過去の投資を惜しんで、追加投資をやめられない効果 例:UFOキャッチャーを取れるまでやってしまう |
バンドワゴン効果 | 多くの人々が支持する意見や行動に信頼感を抱く効果 例:子どもが、他のみんなと同じオモチャを欲しがる |
フレーミング効果 | 同じ情報でも伝え方によって受け取り方が異なる効果 例:電池残量が「残り50%もある」と「残り50%しかない…」 |
アンカリング効果 | 最初に提示した情報が基準となり、その後の認識に影響を与える効果 例:商品の値下げ(大きく下がっているとお得に感じますよね?) |
アンダードッグ効果 | 不利な立場の負け犬を同情・応援したくなる効果 例:バレンタインに縁がなさそうな人にチョコをあげたくなる |
クレショフ効果 | 2枚の関係ない写真に、意味的な繋がりを感じる効果 例:「野菜」「不機嫌な人の顔」→野菜が嫌い? |
バックファイア効果 | 信念に反する情報を提示すると、裏目になる効果 例:大好きな彼氏を批判されると、かえって愛情が増す、守る |
真理の錯誤効果 | 繰り返された情報を真実だと思い込む効果 例:「最高品質」と効果を連呼するTVCMを繰り返しみて信じる |
リスキーシフト | 集団の中だと、よりリスクの高い意思決定をしやすくなる効果 例:赤信号、みんなで渡れば怖くない |
錯誤相関 | 二つの事柄に、相関関係があると錯誤(思い違い)すること 例:雨男/雨女、アイスの売上と溺死数 |
根本的な帰属の誤り | 他人の行動の場合、外部要因を過小評価してしまう傾向 例:遅刻の原因で、状況要因を考慮しにくい(性格のせいにしがち) |
アロンソンの不貞の法則 | 知らない人からの褒め言葉を、より嬉しく感じる法則 例:家族よりも、他人から認められると嬉しい |
代表性ヒューリスティック | ある対象の判断を、既知概念の代表的特性との類似性で判断する 例:「尻尾が丸い動物」→「うさぎかな?」 |
可用性ヒューリスティック | ある判断をするとき、すぐに思い出せる事例や情報から判断しやすい 例:馴染みのものや、人気ブランド、記憶に浮かぶ商品を選びがち。 |
選択のパラドックス | 選択肢が多ければ多いほど不満を感じやすくなる 例:レストランのメニュー、料金プランの種類など |