キャリブレーションとは|言葉以外の情報によって相手の心理状態や変化に気づくスキル

キャリブレーションとは、日本語にすると「計器の目盛りを調整すること」で、主にNLPにおいて「言葉以外の情報によって相手の心理状態やその変化に気づくためのスキル」として使われています。

言語以外の情報とは、例えば以下のようなものです。

キャリブレーションにおける観察対象
  • 目線や呼吸の仕方、表情
  • 声の大きさやトーン
  • 話すペースやリズム感
  • ジェスチャーなどのボディーランゲージ
  • 話すときの姿勢

これらのような、視覚や聴覚などから読み取れるあらゆるものを指します。

ここからは詳しく、キャリブレーションについて解説していきます。

そもそもNLP(神経言語プログラミング)とは

NLPとは、「人間の思考や行動は、神経と言語・非言語によってプログラミングされており、条件反射的にポジティブ・ネガティブな反応が起こる」という考え方を前提としており、

これらのプログラムを、心理学や言語学の見地から紐解き、思考パターンや行動パターンを変えていく実践心理学のことを指しています。

近年、自己啓発の領域でしばしば言及されるようになってきたので、聞いたことがある方も多いでしょう。

このNLP(Neuro-Linguistic Programming)は、「神経言語プログラミング」の略語で、「脳と心の取扱説明書」という別名を持つ近代心理学の一分野とされています。

ちなみに、提唱者はアメリカの心理学者、リチャード・バンドラー(Richard Bandler)と言語学者のジョン・グリンダー(John Grinder)の2人です。

しかし、NLPにおける理論のほとんどは、実証研究がなされていない、もしくは研究の内容が不十分であることから、心理学者から多くの批判を受けています。

NLP理論のほとんどは科学的根拠がない

NLPの理論のほとんどは科学的に実証されておらず、自己啓発だけでなくスピリチュアルの領域にも、やや踏み込んでいることが特徴です。

本ページでは、その真偽について掘り下げることはしませんが、「コミュニケーションを健全かつ円滑にする上で役に立つ(かもしれない)知識や技法」程度の距離感を保っておきましょう。

また、自分の中に落とし込むのは自由ですが、NLPを根拠とした思考や行動の変容を他者に強いることは避けたほうが、無用な対立を回避する点において無難です。

「キャリブレーション」に関する実験

キャリブレーションは、NLPを実践する際の基本的スキルとされていますが、提唱した研究者や実証した研究などは「不明」となっていて、見つけることができないのです。

このように書くと「根拠がないのであれば否定されるべきだ」と感じる方もいるかもしれませんが、実は心理学においては、このように統計的な研究結果に基づいていないものも多くあるのです。

有名なもので例をあげると、日本でベストセラーとなった「嫌われる勇気」でおなじみのアドラー心理学などがそれに該当します。

アドラー心理学はここまで世間に浸透し、支持されるに至っていますが、アドラー心理学の中で提唱されている理論は実証されたものではなく、あくまで「思想」といわれています。

それでも自己啓発の領域で大いに役立っていることを考えると、いたずらに無下に批判すべきものでもないといえるでしょう。

「キャリブレーション」の具体例

キャリブレーションとは、「言葉以外の情報によって相手の心理状態やその変化に気づく」ことで、この「言葉以外の情報」にはあらゆるものが該当します。

キャリブレーションにおける観察対象

例えば、

  • 目線や呼吸の仕方、表情
  • 声の大きさやトーン
  • 話すペースやリズム感
  • ジェスチャーなどのボディーランゲージ
  • 話すときの姿勢

など、視覚や聴覚などから読み取れるあらゆるものを指します。

これは、自分の経験や先入観を捨ててできるだけ細かく行われることが重要であり、例えば「表情」であれば「口角の上がり具合」や「目の広げ具合」「眉の動かし方」といった細部にわたります。

とはいえ、NLPの実践方法は資格化されているためか、それらを読み取ることで客観的にどのような心理状態や心理変化を観察できるのかは、ほとんど公にされていません。

そのため具体例が乏しいのですが、極端にいえば「話している間に相手の口角が上がってきたので、相手は楽しい、あるいは興奮していると推測できる」というようなものです。

一般的には口角が上がると笑顔に見えやすくなるため(これは個人の経験や先入観ではなく、あくまで一般論としてそのように判断されうるものです)、決して断定はできないものの、おそらくそうであろうという客観的な解釈ができるというものです。

なお、キャリブレーションに近いものとして、「メラビアンの法則(別称:7-38-55の法則)」と呼ばれる心理法則が存在します。

※これは実証されているもので、NLPの領域ではありません。

メラビアンの法則(7-38-55の法則)との違い

メラビアンの法則とは、「言葉(言語情報)」「声のトーン(聴覚情報)」「ボディランゲージ(視覚情報)」の3つ(コミュニケーションの3つの要素)において異なる情報が与えられたとき、第一に視覚情報、次いで聴覚情報、そして言語情報の順で判断がなされるというものです。

例えば、口では「このケーキはおいしい」と言っていても、声のトーンが低く、うつむきがちで話していると、相手には「本当はおいしくないと思っているに違いない」と伝わるというものです。

このように、視覚や聴覚によって相手の反応を解釈するという点においてはキャリブレーションに類似していますが、メラビアンの法則はあくまで「視覚情報」「聴覚情報」「言語情報」の3つに矛盾があったときに適用されるものです。

そのため、「キャリブレーション」の根拠を「メラビアンの法則」としている場合は間違えているので、注意するようにしてください。

「キャリブレーション」の注意点

繰り返しになりますが、キャリブレーションを含めNLPは科学的な裏付けがないとされる、かなり自己啓発に近い学問です。

ただし人間の一般的、かつ普遍的な行動や思考について主に取り扱うことから、自分や他人に当てはまると感じられやすく、ある意味で熱狂的ともいえる支持者も少なくありません。

先ほど「NLPは資格化されている」とお伝えしましたが、NLPの理論に基づいた心理技法は民間資格として確立されているほどです。

一方で、「あくまで思想に過ぎない」と冷たい視線を向ける人たちの存在も看過できないので、自分を高めるために活用するのはともかく、他者を説く際にNLPの理論を用いることは避けたほうがよいといえるでしょう。

さいごに

いかがでしたでしょうか。

NLP領域におけるキャリブレーションとは、「言葉以外の情報によって相手の心理状態やその変化に気づくためのスキル」で、例えば以下のような観察軸がありました。

キャリブレーションにおける観察対象
  • 目線や呼吸の仕方、表情
  • 声の大きさやトーン
  • 話すペースやリズム感
  • ジェスチャーなどのボディーランゲージ
  • 話すときの姿勢

しかし、実際には科学的根拠がないので、一定の注意は必要ですが、その心理技法は民間資格として確立されているほどなので、気になるかたは学習してみても良いかもしれません。

このページを読んだあなたの人生が、
より豊かなものとなることを祈っております。