クライマックス法とは
クライマックス法とは、スピーチや記事などにおいて、伝えたい要点、つまり結論を最後に持ってくる伝え方です。
また逆に「アンチクライマックス法」という、結論を最初に持ってくる伝え方もあります。
ちなみに、ここでいうクライマックス(climax)とは、「頂点」という意味の英単語が由来であり、「ストーリーのクライマックス」などという用法で聞いたことがある人も多いでしょう。
提唱者:ハロルド・スポンバーグ(Harold Sponberg)
クライマックス法は、1942年にアメリカの心理学者であるハロルド・スポンバーグの論文によって発表されたもので、議論における効果的なスピーチの方法を示唆したものです。
※本論文は以下URLから読むことができます。
クライマックス法の論文(英語)
A study of the relative effectiveness of climax and anti‐climax order in an argumentative speech
「クライマックス法」の効果
クライマックス法では、要点をスピーチの最後に持ってくることで、話の内容にワクワク感を持たせることができ、聞き手を最後まで引きつけることができるとされています。
なおこれはスピーチに限らず、ビジネスにおける商談やプレゼンテーション、普段の会話においても当てはまります。
また、クライマックス法においては結論が最後になるよう構成されるため、商談やプレゼンテーションの場合に相手の興味・関心が高まっている状態で、その後の話を効果的に進めることができます。
「クライマックス法」と「アンチ・クライマックス法」の違い
アンチ・クライマックス法も、同じくハロルド・スポンバーグが提唱したもので、クライマックス法とは逆に、結論を話の冒頭で述べてしまう伝え方です。
アンチ・クライマックス法では、結論が最初になるよう構成されることから、話の冒頭で相手の興味を一気に引きつけることができる効果があります。
そして興味をしっかりと引きつけることができた場合、その後の説明もしっかりと熱を持って聞いてくれるようになるわけです。
「クライマックス法」と「アンチ・クライマックス法」が効果的なシーン
ここではそれぞれが効果的なシーンを説明してきます。
では見ていきましょう。
「クライマックス法」が効果的なシーン
クライマックス法が効果的な相手として、「話にある程度興味のある人」や「話を最後までじっくりと聞きたい人」という前提条件があります。
なぜなら、話に興味がなかったり、話をきちんと聞こうとする姿勢がなかったりすると、結論にたどり着く前に途中の話を理解することを放棄してしまうためです。
例えば、井戸端会議のようなとりとめのない話であれば、クライマックス法のほうが楽しんで聞いてもらえるでしょう(お笑い芸人はクライマックス法をオチの前置きとしてうまく用います)。
「アンチ・クライマックス法」が効果的なシーン
逆に、アンチ・クライマックス法が効果的な相手は、「まずはどんな内容かを最初に見極めて決めたい人」や「せっかちな人」に適しています。
こちらは、結論を先に持ってきたほうが納得をしてもらいやすいためです。
例えば、ビジネスなど時間がことさら貴重に扱われる場合はアンチ・クライマックス法を用いるほうが好まれる傾向にあります。
また、相手がクライマックス法で話すことを(無意識でも)好む場合であれば、クライマックス法で返すほうが効果的とされており、アンチ・クライマックス法でも同様です。
さらに話し方には性別による差も指摘されており、男性はアンチ・クライマックス法を好み、女性はクライマックス法を好むと一般的にいわれています。
「クライマックス法」と「アンチ・クライマックス法」の活用方法
クライマックス法やアンチ・クライマックス法はどんな会話や文章においても当てはまり、幅広い分野で応用を効かせやすい心理効果です。
ではそれぞれ見ていきましょう。
ビジネスではアンチクライマックス法を使うべき
ビジネスシーンではアンチ・クライマックス法が望ましいとされていますが、特にそれが顕著なのが「ホウレンソウ」、いわゆる「報告」「連絡」「相談」です。
ホウレンソウで伝達すべきことを先に持ってくることで相手(上司の場合が多いでしょう)に話の要点をすぐ伝えることができるため、
緊急の内容でもすぐに理解してもらえ、それだけで的確な指示やフィードバックを返してもらえることが利点です。
なお、いつまでも話が見えないクライマックス法を用いると、結論を伝えるまでの前置きが長くなってしまい、上司をイライラさせることにもつながりかねません。
商談シーンならクライマックス法も効果的
ビジネスシーンは原則、アンチ・クライマックス法が推奨されていますが、例外として、社外の商談ではクライマックス法のほうが効果的なこともあります。
それは、相手が話の内容に興味津々な場合です。
また、顔を何度も合わせたことがある取引先であれば、話を聞いてくれる姿勢がすでにあるので、こちらもクライマックス法を用いたほうが効果の出る可能性もあります。
余談ですが、アンチ・クライマックス法が効かなくなってきた相手に、話法を変えてクライマックス法を試すということも効果的だとされています。
ただし、急を要する用件のときは避け、あくまで商談やプレゼンテーションなどにおけるひとつのテクニックとして使うことを推奨します。
日常生活で面白い話をするならクライマックス法
相手との仲がよく、話を面白く聞かせたいようであれば、クライマックス法のほうが楽しんでもらいやすくなります。
冒頭でお笑い芸人の話し方に触れましたが、先に結論(オチ)を言ってしまうと話にまったく面白みが生まれません。
そのため、できるだけ前置きを盛るに盛って結論をもったいぶった上で話のクライマックスをどんと持ってくることで、話に楽しさやクライマックスへの期待感を生むことができるでしょう。