カクテルパーティー効果とは
カクテルパーティー効果とは、例え喧騒の中でも、自分が興味のある話は、自然と聞きとることができる、という注意力にまつわる心理効果です。
人には、さまざまな情報が飛び交う雑然とした環境下において、自分にとって重要だと認識した情報を「選択」し、それに注意を向ける「選択的注意」という認知機能が備わっています。そして、カクテルパーティー効果はこの選択的注意における代表例です。
カクテルパーティーは日本ではほとんど馴染みのない言葉ですが、大勢の人が一堂に会して各々で雑談を楽しむ「懇親会」を想像してもらえればわかりやすいでしょう。
提唱者エドワード・コリン・チェリー
カクテルパーティー効果を提唱したのは、イギリスの認知心理学者であるエドワード・コリン・チェリー(Edward Colin Cherry)です。
1953年に発表されたチェリーの論文の中でカクテルパーティー効果が言及されています。英語ですが、興味のある方はぜひご覧になってみてください。
カクテルパーティー効果の実証実験
チェリーはカクテルパーティー効果を実証するために、以下の実験を行いました。
- 実験1
-
被験者の左右の耳に、異なる音声を同時に聴かせ、片耳だけに注意を向けるように指示をしました。すると被験者は、注意を向けなかったほうの音声が聴きとれなくなったのです。
- 実験2
-
実験1の最中に、注意を向けていないほうの音声から被験者の名前を流したところ、被験者の意識がそちら側の耳に移るという現象が起こりました。
この2つの実験結果より、人は自分の意識を傾けた情報を優先して聴きとり、それ以外の情報は無視していることが実証されました。
カクテルパーティー効果の活用方法
カクテルパーティー効果は、聴覚情報に作用するだけではなく、対人関係の構築や印象形成(相手に抱く印象を形づくること)にも役立ちます。簡単に見ていきましょう。
カクテルパーティー効果の活用方法#1
相手の名前を多く呼ぶと効果的
会話の中で「相手の名前」をできるだけ多く呼ぶことで、無意識のうちに相手の注意が自分に向き、自分の存在を相手に印象づけることができるとされています。
提唱者のアメリカの心理学者、クリス・クラインケ(Chris L. Kleinke)が行った実証実験は下記の通りです。
男女ペアの被験者を2グループに分けました。
どちらのグループも「15分間会話をさせる」ことは同じですが、一方のみを「相手の名前を複数回意識的に呼ばせる」ようにして、会話が終わったあとの親密度を比較したものです。
すると、相手から自分の名前を何度も呼ばれたグループのほうが、会話した相手に対して親しみやすさや好感を持った、という結果になったのです。
1対1だとイメージしにくいですが、異性3人と自分との4人で話していて、異性の1人だけが何度も自分の名前を呼んでくれたら、なんとなくその相手のほうに注意が向く気がしますよね。
このように、カクテルパーティー効果を応用すると、友好的な対人関係の構築にも活用できます。
カクテルパーティー効果の活用方法#2
街頭演説や動画広告など
政治家の街頭演説やTVCMなど、目や耳には入るものの聞き流しているような状況こそ、カクテルパーティ効果の活躍どころです。
- 自分に関係のあることだ
- この話のテーマには興味がある
と思ってもらえることで、普段なら聞き流されるような状況であっても、意識が向いて聞いてもらえるようになります。
キャッチコピーを作る際にも似ていますが、単に「特別」「キャンペーン」などと銘打っても、漠然としていて顧客には響かないので、まさに腕の見せどころですね。
どういった顧客に届いて欲しいかの解像度を深め、刺さる訴求を考えていきましょう。
おまけ:選択性注意を体験できる動画
冒頭の動画で示される英語のメッセージは「白い服を着たチームは、何回パスをしたでしょうか?」という意味です。