コンコルド効果とは|過去の投資コストを惜しみ投資を続けてしまう認知バイアス

コンコルド効果とは

コンコルド効果とは、人やモノ、サービスへの「金銭的・時間的・精神的な投資」を行い続けることで、さらに損失となると気づいているにも関わらず、これまでの回収できていないコストを惜しみ、投資を続けてしまう認知バイアスです。

特に、UFOキャッチャーで「あと少しで取れるから!」と景品が取れるまでやり続けてしまう例が有名ですね。他には下記のものがあります。

コンコルド効果の具体例
  • レストランや映画など
    • どんなに不味くても、つまらなくても、すでにお金を払ったので、途中で退室しない
  • ビジネスの新規事業
    • 新製品の開発に多大な資金を投じたので、ヒットしなくても、さらなる投資をやめられない
  • 副業ブロガー
    • 100記事書いたけど全然PV伸びない。でもここまで頑張ったから辞められない

他にも「口説きたい女性への貢ぎものを辞められない」「当たるまでパチンコ台から退けない」などもありますね。

このように、将来の損失を回避するためにすぐ止めるべきでも「ここでやめたら、もったいない!」と、過去の投資を惜しんでやめることができないのです。

認知バイアスとは、常識や固定観念、また周囲の意見や情報など、さまざまな要因によって誤った認識や合理的でない判断を行ってしまう認知心理学の概念です。

認知バイアスが起こる仕組み

まず、人間の脳は、自分自身の知覚フィルター(五感)を通して外界に触れ、その刺激が脳に到達して情報処理されることで、外界を認識しています。

しかし、そんな脳は意外とおおざっぱな器官で、わからない部分を勝手に埋め合わせてしまったり、先入観にとらわれて事実をねじ曲げたり、自分に都合よく事実を解釈してしまうのです。

このように「思い込みをしやすい」というデメリットはあるものの「膨大な情報量を素早く処理できる」というメリットがあるので、人間の脳への負荷を減らすために必要な機能ですね。

このように、様々な理由で認識が歪んだために、事実を正しく認識できずに不合理な(事実でない)認知をしてしまう「過ち」の傾向を「認知バイアス(cognitive bias)」と呼びます。

別名「コンコルド錯誤」「コンコルドの誤り」「埋没費用効果」「サンクコストの誤謬(ごびゅう)」とも呼ばれ、日常的に陥りやすいことが知られています。

名前の由来は超音速旅客機「コンコルド」

世界規模で商業的失敗を遂げた超音速旅客機「コンコルド」が名称の由来となっています。1960年代に開発が始まり、世界初の超音速旅客機として、世界中から注文が殺到しました。

しかし、多くのデメリットが浮き彫りになったことからキャンセルが相次ぎ、開発を継続しても利益は望めないことまでわかりました。

コンコルドのデメリット
  • 開発コストや維持費の高さ
  • 燃費の悪さ(当時はオイルショックもあり)
  • あまりにも高すぎる価格
  • 収容可能人数の少なさ
  • 設備投資の必要(長い滑走路)

しかし、これまでにかけた莫大な埋没費用を惜しみ、プロジェクトは途中終了しませんでした。結局機体は16台しか製造されず、さらなる大赤字になったのです。

コンコルド効果の着想に至った大元の理論

コンコルド効果は、もともとは生物学において広まった概念です。アメリカの進化生物学者であるロバート・トリヴァース(Robert L. Trivers)が1972年に提唱した「親の投資理論」が、大元の理論になっています。

大元となった「親の投資理論」

生物学では、「子を育てること」が投資で、「子孫を繁栄させること」が利益になるという前提で「親の投資理論」が議論されていました。

例えば、とある動物に2匹の子がいて、その2匹の成長に差があった場合、親は子を死なせないために、大きな子を優先して守り、育てるはずだという主張があります。

一方で、子の数を最大化させるためには、小さな子をひいきする傾向が進化するはず、という別の主張もありました。

このように「親の投資理論」に関するいずれの主張でも「子を育てること」が投資で、「子孫を繁栄させること」が利益となっています。

そして、生物学上の「親の投資理論」の説明を立脚として、経済学において「埋没費用」と「人の判断」との関連性が「コンコルド効果」として言及されるようになりました。

ちなみにこの「埋没費用」とは、事業や人、ものごとに投資した資金や労力といったコストのうち、これらを撤退、縮小、中止しても回収のできないコストを指します。(別名:サンクコスト)

コンコルド効果の代表的な具体例

コンコルドの効果を説明するものとしてよく挙げられる例を2つ紹介します。

では見ていきましょう。

例1:つまらない映画を見続けるか

仮に1,800円を払って2時間の映画を見始めたものの、10分後に「この映画がつまらない」と感じたとき、以下2つの選択肢があります。

  1. つまらなくても見続ける
  2. すぐに退出して残りの時間を有効に使う

このとき前者における埋没費用は「チケット代の1800円と上映時間の2時間」であり、後者の場合は「チケット代の1,800円とすでに観てしまった10分」なので、

経済学的な判断基準においては、この1,800円という埋没費用を除外し、以下の2択に本来はなるはずなのです。

  1. これから映画が面白くなるかもしれない可能性に賭ける
  2. 観賞を中止して別のことで有意義な時間に過ごす

しかし、本来は除外すべき「1,800円」を含めた判断、つまり「せっかくお金を払ったしもったいないから映画を見続けよう」と思ってしまう人が、実に多いのです。

例2:紛失したチケットを再度購入するか

こちらは少しややこしいですが、1,800円を出して映画のチケットを購入したあと、紛失してしまった場合はどうでしょう。

再度チケットを買い直すとしても、経済学的な判断基準は「この映画には1,800円の価値があるかどうか」という部分に変わりはなく、

もともとは1,800円の価値があると判断をして買ったチケットなので、「再度購入する」というのが合理的な判断と言えるでしょう

しかし、人は埋没費用を考慮するため、2回目のチケット購入時は「この映画に3,600円の価値があるかどうか」と価値を上乗せした不合理な判断をしてしまう人が多いのです。

コンコルド効果の具体例

旅客機製造のような大規模な埋没費用でなくとも、映画館の例のようにコンコルド効果はわたしたちの生活においてしばしば影響を及ぼします。

例えば、投資や、ビジネス(新規プロジェクトの進行や土地開発など)、入試(これまでの努力と志望校の偏差値において)など、さまざまな場面でコンコルド効果は起こりえます。

他にも以下のようなシーンで起こり得ます。

ではそれぞれ簡単に紹介していきます。

ゲームへの課金が止まらない

スマートフォンにおける「ガチャ」というシステムは聞いたことがある人も多いでしょう。

簡単にいえば「くじを引いて、ランダムに特典(ゲーム内で使用するカードやキャラクター、アイテムや装備品など)がもらえる」というものです。

もちろん無料ガチャもありますが、ほとんどは有料課金と併用されていることが多く、無料ガチャは課金を煽る目的のために導入されています。

ガチャで引くことのできるレアな特典は、「天井」と呼ばれるシステムによって上限額まで課金をするとはずれが続いても必ず入手できるように定められているのですが(これは「景品表示法」の規制によるものです)、それでも天井に届くまでには数万円はかかることがしばしばあります。

このガチャが、コンコルド効果の「これまで1万円使ったから当たるまで引かないともったいない」といった心理状態を招き、わかってはいながらも、やめられないのです。

ギャンブルで負け続けても、なかなか台から離れられない

パチンコやスロットなどで負け続けても

  • ここまで粘ったのだからもうちょっと続けよう
  • 今までの負け分をどうにかして取り戻すまではやめるわけにいかない

と、なかなか台から離れられない心理がまさにコンコルド効果によるものです。

ガチャのシステムがギャンブルに似ていると感じたことのある人は多いかと思われますが、まさにその通りです。

別れたくても、かけた時間を無駄にしたくなくて、別れられない

これは金銭ではなく「時間」を主なコストとした場合です。

別れたいと内心思っていても、「これまで一緒に過ごした時間の長さを無駄にすることになる」と後ろ髪を引かれて関係を継続してしまう場合はやはりコンコルド効果に該当します。

恋愛ではありませんが、ナイトクラブやホストクラブなどで「この人に何十万円も費やしたから今さら通うのをやめられない」という声がしばしば聞かれるのも同様です。

スポーツで成績が出なくても引退を踏み切れない

怪我などで成績を残せなくなってもなかなか引退に踏み切れない選手などがまさに該当します。

練習やトレーニング、本番に情熱を注いで生きてきた人たちにとって、競技をやめるという決断は苦渋のものでしょう。

これも、これまで費やしてきた時間を埋没費用として捉えているためです。

商売で赤字が続いても、店を畳めない

赤字が続いているにもかかわらず、初期費用やこれまでのランニングコストがもったいないと考えて店を畳むことをどんどん先延ばしにしてしまうケースです。

事業がうまくいく算段が立っていないのに継続してしまい、借金に借金を積み重ねて破産してしまうケースもあるでしょう。

戦争で犠牲を払いすぎて引くに引けない

日常生活で起きないことを祈りますが、「これまで多くの犠牲を払ってきたのだから」と自ら争いをやめられない国が組織的にコンコルド思考に陥っている例です。

他の認知バイアス【一覧と具体例】

認知バイアスには、さまざまな種類があります。個人レベルから集団レベルまで、さまざまな認知バイアスが存在しているので表で整理しました。

認知バイアス説明・具体例
確証バイアス自分が信じたい情報だけを信じる
例:大好きな彼氏♡こーんなに素敵♡
正常性バイアス自分に都合が悪い事実を信じない
例:連帯保証人になったら友達が音信不通に。でもきっと大丈夫!
一貫性バイアス他者の1行動に一貫性があると思い込む
例:さっきナンパしてきた人、絶対いろんな女子に声かけてるよね
自己中心性バイアス自分を基準に、他者の心情や認知を推察する
例:自分の価値観を押し付ける、相手目線で考えられない
投影バイアス自分の好み、感情、価値観を他人に投影して認識する
例:まわりの人も自分と同じ意見、感情だと思い込む
感情バイアス感情的な好き嫌いが意思決定に影響を与える
例:性能は悪いがつい好きなブランド商品を買ってしまう
生存バイアス現在、生存している事例(成功例)しか見ない
例:成功した起業家を分析して、失敗例を見ない
後知恵バイアス過去の事象に「それは予測可能だった」と勘違い
例:そのじゃんけん、チョキなら勝てるってわかったよね?
バーナム効果曖昧な特徴でも、自分に強く該当すると思い込む
例:占い師「あなたは◯◯な人間ですね」→そうかも!
クレショフ効果2枚の関係ない写真に、意味的な繋がりを感じる
例:「野菜」「不機嫌な人の顔」→野菜が嫌い?
ダニングクルーガー効果能力の低い人ほど自分を高く評価するという現象
例:もうこのゲームはコツ掴んだな!オレ最強かも!
コンコルド効果過去の投資を惜しんで、追加投資をやめられない心理効果
例:UFOキャッチャーを取れるまでやってしまう
ハロー効果ある事象への評価が、他の目立った特徴に引っ張られる効果
例:清潔感がない人は、仕事もできなさそうだし性格も悪そう
リスキーシフト集団の中だと、よりリスクの高い意思決定をしやすくなる効果
例:赤信号、みんなで渡れば怖くない
錯誤相関二つの事柄に、相関関係があると錯誤(思い違い)すること
例:雨男/雨女、アイスの売上と溺死数
根本的な帰属の誤り他人の行動の場合、外部要因を過小評価してしまう傾向
例:遅刻の原因で、状況要因を考慮しにくい(性格のせいにしがち)
アンカリング効果最初に提示した情報が基準となり、その後の認識に影響を与える
例:商品の値下げ(大きく下がっているとお得に感じますよね?)

認知バイアスとは、常識や固定観念、また周囲の意見や情報など、さまざまな要因によって誤った認識や合理的でない判断を行ってしまう認知心理学の概念です。

認知バイアスが起こる仕組み

まず、人間の脳は、自分自身の知覚フィルター(五感)を通して外界に触れ、その刺激が脳に到達して情報処理されることで、外界を認識しています。

しかし、そんな脳は意外とおおざっぱな器官で、わからない部分を勝手に埋め合わせてしまったり、先入観にとらわれて事実をねじ曲げたり、自分に都合よく事実を解釈してしまうのです。

このように、様々な理由で認識が歪んだために、事実を正しく認識できずに不合理な(事実でない)認知をしてしまう「過ち」の傾向を「認知バイアス(cognitive bias)」と呼びます。

認知バイアスを防ぐためのポイント

コンコルド効果を含む認知バイアスを意識的に防ぐためには、いくつかの方法があります。

ではそれぞれ解説していきます。

①認知バイアスへの理解を深める

まず、どういった認知バイアスが存在するのかを知らなければ、意識して防ぎようがありません。改めて目を通しておくと良いでしょう。

認知バイアス説明・具体例
確証バイアス自分が信じたい情報だけを信じる
例:大好きな彼氏♡こーんなに素敵♡
正常性バイアス自分に都合が悪い事実を信じない
例:連帯保証人になったら友達が音信不通に。でもきっと大丈夫!
一貫性バイアス他者の1行動に一貫性があると思い込む
例:さっきナンパしてきた人、絶対いろんな女子に声かけてるよね
自己中心性バイアス自分を基準に、他者の心情や認知を推察する
例:自分の価値観を押し付ける、相手目線で考えられない
投影バイアス自分の好み、感情、価値観を他人に投影して認識する
例:まわりの人も自分と同じ意見、感情だと思い込む
感情バイアス感情的な好き嫌いが意思決定に影響を与える
例:性能は悪いがつい好きなブランド商品を買ってしまう
生存バイアス現在、生存している事例(成功例)しか見ない
例:成功した起業家を分析して、失敗例を見ない
後知恵バイアス過去の事象に「それは予測可能だった」と勘違い
例:そのじゃんけん、チョキなら勝てるってわかったよね?
バーナム効果曖昧な特徴でも、自分に強く該当すると思い込む
例:占い師「あなたは◯◯な人間ですね」→そうかも!
クレショフ効果2枚の関係ない写真に、意味的な繋がりを感じる
例:「野菜」「不機嫌な人の顔」→野菜が嫌い?
ダニングクルーガー効果能力の低い人ほど自分を高く評価するという現象
例:もうこのゲームはコツ掴んだな!オレ最強かも!
コンコルド効果過去の投資を惜しんで、追加投資をやめられない心理効果
例:UFOキャッチャーを取れるまでやってしまう
ハロー効果ある事象への評価が、他の目立った特徴に引っ張られる効果
例:清潔感がない人は、仕事もできなさそうだし性格も悪そう
リスキーシフト集団の中だと、よりリスクの高い意思決定をしやすくなる効果
例:赤信号、みんなで渡れば怖くない
錯誤相関二つの事柄に、相関関係があると錯誤(思い違い)すること
例:雨男/雨女、アイスの売上と溺死数
根本的な帰属の誤り他人の行動の場合、外部要因を過小評価してしまう傾向
例:遅刻の原因で、状況要因を考慮しにくい(性格のせいにしがち)
アンカリング効果最初に提示した情報が基準となり、その後の認識に影響を与える
例:商品の値下げ(大きく下がっているとお得に感じますよね?)

コンコルド効果においても同様です。自身がバイアスに陥る可能性をがあることを認識することで、一定は防ぐことができます。

②意思決定の癖を知る診断を受ける

次は、自身が「どういったバイアスを持ちやすいのか」という思考の癖を知ることをおすすめします。ミイダスで診断可能ですね。(確か、無料でできる診断は唯一だと思います。)

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引用元:ミイダス

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③ものごとを批判的に考える

認知バイアスに陥るのを防ぐためには、「なにごとも疑ってかかる」ということが重要です。 例えば以下のように批判的に考えましょう。

批判的に考えるための問い
  • 自分の思っていることは客観的なのか
  • まわりの意見は公平で公正か
  • 情報は出どころは正しいものなのか
  • 反対意見にはどのようなものがあるのか

このように、ものごとをさまざまな角度から複眼的にとらえることができれば、認知バイアスに陥りにくくなります。

ただし、根っこから認知バイアスに両足を突っ込んでしまっている人は、そもそもこのクリティカルシンキング(批判的思考)を持てないので、注意しましょう。

④第三者の意見を参考にする

認知バイアスは自身の考えに客観性を持てなくなる心理現象なので、「第三者の意見を借りる」というのが効果あります。

例えば、自分にとって利害関係のない相手であったり、自分にとって都合の悪いこともきちんと率直に言ってくれる相手がおすすめです。

ただ、あまりに主観的だとその人が確証バイアスに囚われている可能性があるので、相談できる相手は慎重に選ぶようにしましょう。

さいごに

いかがでしたでしょうか。

コンコルド効果とは、特定の対象への投資を行い続けることが損失につながるとわかっているにもかかわらず、それまで費やした投資を惜しむことで継続してしまう心理現象のことでした。

ビジネスシーンをはじめ、日常で非常におこりやすい心理現象である分気をつける必要があるので、一度冷静になって「客観的かつ合理的な判断」を下すよう意識する必要があるでしょう。

このページを読んだあなたの人生が、
より豊かなものとなることを祈っております。