確証バイアスとは、自分にとって都合の良い情報だけを信じ、反証となる情報を探そうともせず、客観性を失ってしまう心理現象のことです。
今回はそんな「確証バイアス」についてみていきましょう!
確証バイアスは、認知バイアスの1つ
認知バイアスとは、常識や固定観念、また周囲の意見や情報など、さまざまな要因によって「合理的でない」認識や判断を行ってしまう認知心理学の概念です。
確証バイアス以外で、認知バイアスの例をあげると、以下のようなものがあります。
ちなみに、「バイアス」とは思考の偏りのことを指しています。
「バイアス(bias)」はもともと英語で「かたより(偏り)」という意味で、心理学においては「人の思考における偏り」を指します。
言い換えると、「思い込み」や「先入観」、「偏見」「差別」といったものから、「傾向」という軽度なものまですべて「バイアス」です。
これらのバイアスは、脳が「知覚し・感情を生起させ・記憶を形成し・行動に至ったりする」といった全プロセスに影響を与えるため、ときに大きな判断ミスに繋がることもあります。
そして、思考にバイアスのない人間は存在せず、全ての人間は、あくまで限定された合理性しか持ち得ないというのがポイントです。
確証バイアスの実証実験|ウェイソン選択課題
確証バイアスの実験は、イギリスの認知心理学者であるペーター・カスカート・ウェイソン(Peter Cathcart Wason)が1996年に行った「ウェイソン選択課題」がもっとも有名です。
ウィルソンの選択課題は、実際に体験することができるので、みなさんが確証バイアスに陥っているかどうか、ぜひテストしてみてください。
ウィルソンの選択課題
反対側の見えない、4枚のカードが机の上に置かれていて、表には数字が、そして裏には色が塗られています。

- 3と書かれたカード
- 8と書かれたカード
- 赤いカード
- 青いカード
この場合、以下の質問の答えを考えてみてください。
「表面に偶数の数字が書かれたカード」の裏面は「赤色」である
という仮説を証明するために、どのカードをひっくり返すべきか、最小限の枚数は?
「②、④の2枚」が正解です。
- 3と書かれたカード
与えられた仮説は偶数についてなので、ひっくり返す必要はありません。 - 8と書かれたカード
裏面が青だと仮説に反するため、ひっくり返す必要があります。 - 赤いカード
もし表面が奇数でも「仮説には関係がない(仮説は奇数について言及していない)」ので、ひっくり返す必要はありません。 - 青いカード
表面が偶数だと仮説に反するため、ひっくり返す必要があります。
実は、このウィルソンの実験では90%の人が「②と③」と答えたのです。
これがまさに確証バイアスの例で、多くの人は、自分の与えられた情報である「偶数」と「赤色」という「仮説を支持する」情報を積極的に収集しようとするのです。
本来、この問題を解くには「仮説に反する証明をすること」がカギなのですが、人は与えられた情報に反する情報を収集する傾向を無意識に避けてしまう傾向にあります。
確証バイアスの具体例3つ
確証バイアスは日常的に起こりえるので、ここではその例を3つ紹介していきます。
では見ていきましょう。
神さまを信仰する人・しない人
「神さまは存在する」と信じている人は、すべてのものごとを「神さまがいるからだ」という前提で考えるので、存在を否定する人の意見はなかなか聞き入れません。
また、稀有なできごとに遭遇したときも「神さまのおかげだ、ありがたい」とその結果を過大評価します。
そして、逆の心理現象が「神さまの存在を信じない人」にも当てはまり、例えば勧誘行為などには一切耳を貸さずに、全てにおいて、現実的で論理的な解釈を支持するようになるのです。
就職や転職活動における大手志向
就活や転職における確証バイアスの例としては、「大手企業に入れば生涯安泰」という考え方が挙げられるでしょう。
最近では社会情勢も相まってそのような風潮でもなくなってきたものの、一部ではまだ根づよく残っています。
例えば、そういった志向の方たちは就職や転職活動をする際に、自身のキャリアプランや、入社後の職務内容ではなく、まず「大手企業に入社すること」をゴールにします。
また、ライフプランも安定志向なので、「冒険をする」「リスクを冒して挑戦する」という取り組みに関する情報は興味を持ちません。
そして、もし「大企業でも倒産する」などという情報を耳にしても、自分には対岸の火事だと無視してしまうわけです。
恋愛相手のいいところしか見えない
恋愛における確証バイアスの例としては、相手がダメな人でも「この人はきっといい人だ」と信じ込んでしまうことが挙げられます。
この場合、相手を好きなあまり、いいところしか目を向けようとしなくなり、相手の欠点については見て見ぬふりを無意識にしてしまいます。
さらに、いつも何もしてくれない相手であっても、極々稀に自分のためになにかをしてくれると、「やっぱりこの人はいい人だ」という過大評価に陥るのです。
確証バイアスを防ぐための2ポイント
確証バイアスを意識的に防ぐためには、いくつかの方法があります。
ではそれぞれ解説していきます。
ものごとを批判的に考える
確証バイアスに陥るのを防ぐためには、「なにごとも疑ってかかる」ということが重要です。
例えば以下のように批判的に考えましょう。
- 自分の思っていることは客観的なのか
- まわりの意見は公平で公正か
- 情報は出どころは正しいものなのか
- 反対意見にはどのようなものがあるのか
このように、ものごとをさまざまな角度から複眼的にとらえることができれば、確証バイアスに陥りにくくなります。
ただし、根っこから確証バイアスに両足を突っ込んでしまっている人は、そもそもそういう視点を持てないので、注意しましょう。
第三者の意見を参考にする
確証バイアスは自身の考えに客観性を持てなくなる心理現象なので、「第三者の意見を借りる」というのが効果あります。
例えば、自分にとって利害関係のない相手であったり、自分にとって都合の悪いこともきちんと率直に言ってくれる相手がおすすめです。
ただ、あまりに主観的だとその人も確証バイアスに囚われている可能性があるので、相談できる相手は慎重に選ぶようにしましょう。
なお、いうまでもありませんが、無意識のうちに自分の確証バイアスを強化する材料集めをする「イエスマン」には、相談する価値はありません。
確証バイアスには自信に繋がるメリットもある
ここまでの内容を踏まえると、確証バイアスは「悪」と感じる方も多いかもしれませんが、実はメリットとして、自分に自信を持てるようになる効果もあります。
なぜなら、確証バイアスによる思い込みで、客観的でも公平公正でもないものの、自分の信念をなにがなんでも貫こうとする感情や行動が生まれるからです。
もしそれが突き抜けてしまえば、仕事や人生のターニングポイントにおいて、よい結果を「引き寄せる」可能性もゼロではありません。
例えば、プロのスポーツ選手が幼少期に「自分は絶対にプロになれる」と思い込むことが典型例でしょう。
このように、自分を貫くことはときに軋轢を生むこともありますが、確証バイアスに支配されている状態も決して悪いことではないのです。
確証バイアスに似た心理現象「バーナム効果」
バーナム効果とは、多くの人に当てはまる、曖昧で一般的な性格の特徴を、「自分や自分が所属する集団のことを言っているに違いない」と信じ込んでしまう心理現象です。
バーナム効果の例として挙げられるのが血液型占いでしょう。
例えば、血液型占いを信じるA型の人は、「あなたは真面目ですか?」と聞かれたときに「わたしは『A型だから』きっと真面目だ」と無根拠に思い込んでしまうのです。
このように、バーナム効果は、自分にとって都合のよい情報ばかりを盲目的に信じ込んでしまうという点において、確証バイアスと共通点があります。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
ここまで説明してきたように、確証バイアスとは、自分の仮説や信念を検証するとき、自分に都合の良い内容ばかりを集め、逆に都合が悪い情報を無視する認知バイアスのことです。
特に、ビジネスシーンにおける意思決定では、客観性の欠乏は大きな損失を招くので、しっかりと注意して対策していきましょう。
このページを読んだあなたの人生が、
より豊かなものとなることを祈っております。
とある目立つ特徴によって、他の特徴の評価が歪められてしまう心理現象
自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりする心理現象