錯誤相関とは、もともと関係ない2つの事象に対して相関がある、と思い込んでしまう認知バイアスの一種です。
特に、その事象同士が、記憶に浮かびやすい出来事(例:珍しい、ネガティブ)であった場合に発生しやすい心理現象として知られています。
例をあげると以下のようなもの。
・満月の夜には、不吉な事が起きる
・四葉のクローバーを見つけると、幸せになる
このように、科学的な因果関係がなかったとしても、意識に残りやすい事象を無意識に紐づけ、関係性を過大評価してしまうのが、錯誤相関です。
本来なら、各事象に相関関係があることを証明するために、以下のような比較をすべきです。
このような比較をして初めて認識されるべき関係であったとしても、人は無意識に、起きた事実だけを見て、相関があると認識してしまうのです。
目次
錯誤相関は、認知バイアスの1つ
認知バイアスとは、常識や固定観念、また周囲の意見や情報など、さまざまな要因によって「合理的でない」認識や判断を行ってしまう認知心理学の概念です。
錯誤相関の他にも様々な認知バイアスがあります。
ちなみに、「バイアス」とは思考の偏りのことを指しています。
「バイアス(bias)」はもともと英語で「かたより(偏り)」という意味で、心理学においては「人の思考における偏り」を指します。
言い換えると、「思い込み」や「先入観」、「偏見」「差別」といったものから、「傾向」という軽度なものまですべて「バイアス」です。
これらのバイアスは、脳が「知覚し・感情を生起させ・記憶を形成し・行動に至ったりする」といった全プロセスに影響を与えるため、ときに大きな判断ミスに繋がることもあります。
そして、思考にバイアスのない人間は存在せず、全ての人間は、あくまで限定された合理性しか持ち得ないというのがポイントです。
錯誤相関の提唱者&実証実験
錯誤相関は、ハミルトン&ギフォードによって1976年に提唱されました。
それ以降、広く知られている実証実験は、有名なもので2つあるので、順番に紹介していきます。
では、それぞれ見ていきましょう。
錯誤相関の実験(1) ハミルトン&ギフォード
錯誤相関を提唱したのは、以下2人です。
- ハミルトン(Hamilton, David L.)
- ギフォード(Gifford, Robert K.)
ここでは彼らが1976年に行ったステレオタイプに関する実験について紹介します。
この実験では、事前に『少数派』と『多数派』のグループを作り、各グループの被験者に、特定の行動内容を記述した文章を提示しました。
- 記述された行動内容は「ポジティブな行動」と「ネガティブな行動」の2種類
- 「ポジティブな行動」は「ネガティブな行動」の2倍多く提示され、どちらのグループも同じ割合
- 行動内容が記述された文章を提示される順番は無作為
そして、文章を全て提示した後、『少数派』と『多数派』の両グループに「ネガティブな行動の記述が何回提示されたか」を尋ねたところ、
結果として、少数派のほうが「ネガティブな行動の記述が多かった」と答えたのです。
ここから、少数派グループ、つまり『多数派である安心感を持たないグループ』は、ネガティブな内容が印象に残りやすい事が実証されました。
そしてこれを踏まえ、『少数派、ネガティブ』という印象に残りやすい事象が、無意識に結びつきやすくなる、ということが示唆されています。
錯誤相関の実験(2) Chapman&Chapman
錯誤相関と提唱してはいないものの、1971年にChapman&Chapman(コンサルティングファーム)が行った実験も興味深いものです。
この実験では、精神疾患に罹患した患者を架空に作り上げ、その患者の臨床診断結果と、その患者が描いた人物の絵をセットにして被験者に提示しました。
そして、患者が描いた人物が、患者でない人物の絵と比べて、どれくらい「おかしな目」をしているかを回答してもらったところ、
被験者の多くが「患者の描いた絵のほうが、患者でない人物が描いた絵と比べておかしな目をしている」と回答したのです。
本来であれば、精神疾患に罹患していることと、患者が描く絵がどうであるかは、全く関係がありません。
しかし、「精神疾患を患っている患者」という少数派&ネガティブな属性と、「おかしな目」という印象に残りやすい事象が紐づけられる結果になったのです。
錯誤相関の日常生活の事例
ここでは、日常生活でも起こりやすい錯誤相関の事例について、ご紹介していきます。
では、見ていきましょう。
ジンクス
ジンクスは錯誤相関の主たる例と言えるでしょう。
例えば、子供のころ運動が苦手だった人が「運動会の日に限って晴れてしまうこと」を『晴れ男』と憂いているのを聞いた、もしくは感じた経験はないでしょうか。
このようなジンクスも錯誤相関によるもので、当然ながら、運動会だろうがそうでなかろうが、天気には一切関係はありません。
自分にとって「特別なイベントがある」というまれな場面で「期待した天気と異なる」というネガティブな事象が、無関係にもかかわらず相関があるように紐づけられてしまった例です。
血液型
いわゆる「あの人は○型だから、××だよね」と、血液型と性格に関連性を持たせてしまうことも錯誤相関の一種です。
この手の診断を信じてしまうのは、錯誤相関だけでなくバーナム効果といった認知バイアスが働いた結果でもありますが、血液型と性格の関連性には、全く科学的根拠がありません。
また、日本で最も少ない血液型はAB型、次いでB型ですが、いずれとも「変わり者」という印象を持たれやすくなっているのではないでしょうか。
こちらの関係性も科学的根拠はなく、『珍しい血液型だから、変わり者だろう』という錯誤相関による誤った認識でしかありません。
錯誤相関を防ぐための3ポイント
錯誤相関を意識的に防ぐためには、以下3つの方法があります。
ではそれぞれ解説していきます。
徹底的に事実へこだわること
『本当に?』という問いかけを意識して、徹底的に事実へこだわりましょう。
実際、よくよく考えてみると、錯誤相関による相関は、事実ではないことがほとんどです。
例えば、満月の夜だからといって不吉なことが起こる、なんてはずもなく、四つ葉のクローバーが人を幸せにするほど、人生は甘くありません。
そのため、まずは「自分自身の思い込みが正しいのかどうか」を疑ってみる姿勢が大切と言えるでしょう。
ものごとを批判的に考えること
錯誤相関に陥るのを防ぐためには、「なにごとも疑ってかかる」ということが重要です。 例えば以下のように批判的に考えましょう。
- 自分の思っていることは客観的なのか
- まわりの意見は公平で公正か
- 情報は出どころは正しいものなのか
- 反対意見にはどのようなものがあるのか
- 別の角度から見たら違って見えるのではないか
このように、ものごとをさまざまな角度から複眼的にとらえることができれば、錯誤相関に陥りにくくなります。
第三者の意見を参考にすること
錯誤相関は、自身の認知に客観性を持てなくなる心理現象なので、「第三者の意見を借りる」というのが効果あります。
例えば、自分にとって利害関係のない相手であったり、自分にとって都合の悪いこともきちんと率直に言ってくれる相手がおすすめです。
ただ、あまりに主観的だとその人自身が認知バイアスに囚われている可能性があるので、相談できる相手は慎重に選ぶようにしましょう。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
ここまで説明してきたように、錯誤相関とは、もともと関係ない2つの事象に対して、相関があると思い込んでしまう認知バイアスのことです。
特に、その事象同士が、記憶に浮かびやすい出来事(例:珍しい、ネガティブ)であった場合に発生しやすい心理現象として知られています。
例えば、ビジネスシーンにおける意思決定では、客観性の欠乏は大きな損失を招くので、しっかりと注意して対策していきましょう。
このページを読んだあなたの人生が、
より豊かなものとなることを祈っております。
満月の夜には、不吉な事が起きる
→「満月の夜」と「満月ではない夜」で、不吉な事が起こる確率を比較する
四葉のクローバーを見つけると、幸せになる
→「見つけた場合」と「見つけていない場合」で、幸せになる確率を比較する