錯誤相関とは|全く無関係な事柄同士に「相関がある」と思い込む認知の歪み

錯誤相関とは

錯誤相関とは、とある二つの事柄に、本来は相関関係が存在しないものの、まるで相関関係があるように錯誤(思い違い)してしまう認知バイアスのことです。

たまたま、何度かタイミングが重なったり、統計上のデータ推移が重なったりした時に起こり得ます。例をあげてみますね。

錯誤相関の具体例
  • 雨男、雨女
  • 四葉のクローバーを見つけると幸せになれる
  • 満月の夜には、不吉な事が起きる
  • インターネットの普及が自殺率を上げている
    • データ推移が近いだけです。関係ありません。

この錯誤相関は、その事象同士が、記憶に浮かびやすい出来事(例:珍しい、ネガティブ)であった場合に発生しやすい心理現象として知られています。

認知バイアスとは、常識や固定観念、また周囲の意見や情報など、さまざまな要因によって誤った認識や合理的でない判断を行ってしまう認知心理学の概念です。

認知バイアスが起こる仕組み

まず、人間の脳は、自分自身の知覚フィルター(五感)を通して外界に触れ、その刺激が脳に到達して情報処理されることで、外界を認識しています。

しかし、そんな脳は意外とおおざっぱな器官で、わからない部分を勝手に埋め合わせてしまったり、先入観にとらわれて事実をねじ曲げたり、自分に都合よく事実を解釈してしまうのです。

このように「思い込みをしやすい」というデメリットはあるものの「膨大な情報量を素早く処理できる」というメリットがあるので、人間の脳への負荷を減らすために必要な機能ですね。

このように、様々な理由で認識が歪んだために、事実を正しく認識できずに不合理な(事実でない)認知をしてしまう「過ち」の傾向を「認知バイアス(cognitive bias)」と呼びます。

また、この錯誤相関の中でも、特に、隠された「第三の変数」で説明できる場合を「擬似相関」と言います。文字通り、擬似的に相関するということですね。

錯誤相関 > 擬似相関

擬似相関とは、二つの変数間に見かけ上の相関が見られるものの、実際には因果関係が存在しない錯誤相関のうち、この相関を「第三の変数」によって説明できるもののことです。

擬似相関の具体例
  • 「アイスの売上」と「溺死事故数」
    • 気温があがっただけです
  • 「体重減少量」と「朝の寝覚が良い」
    • 健康意識が高まっただけです

このように、統計的な相関が因果関係を意味するわけではありません。データを解釈する際には、常にその背後にある要素を慎重に考えることが重要です。

錯誤相関の具体例

ここでは、日常生活でも起こりやすい錯誤相関の事例について、ご紹介していきます。

では、見ていきましょう。

ジンクス

ジンクスは錯誤相関の主たる例と言えるでしょう。

例えば、子供のころ運動が苦手だった人が「運動会の日に限って晴れてしまうこと」を『晴れ男』と憂いているのを聞いた、もしくは感じた経験はないでしょうか。

このようなジンクスも錯誤相関によるもので、当然ながら、運動会だろうがそうでなかろうが、天気には一切関係はありません。

自分にとって「特別なイベントがある」というまれな場面で「期待した天気と異なる」というネガティブな事象が、無関係にもかかわらず相関があるように紐づけられてしまった例です。

血液型

いわゆる「あの人は○型だから、××だよね」と、血液型と性格に関連性を持たせてしまうことも錯誤相関の一種です。

この手の診断を信じてしまうのは、錯誤相関だけでなくバーナム効果といった認知バイアスが働いた結果でもありますが、血液型と性格の関連性には、全く科学的根拠がありません。

また、日本で最も少ない血液型はAB型、次いでB型ですが、いずれとも「変わり者」という印象を持たれやすくなっているのではないでしょうか。

こちらの関係性も科学的根拠はなく、『珍しい血液型だから、変わり者だろう』という錯誤相関による誤った認識でしかありません。

錯誤相関の提唱者&実証実験

錯誤相関は、ハミルトン&ギフォードによって1976年に提唱されました。

それ以降、広く知られている実証実験は、有名なもので2つあるので、順番に紹介していきます。

では、それぞれ見ていきましょう。

錯誤相関の実験(1) ハミルトン&ギフォード

錯誤相関を提唱したのは、以下2人です。

  • ハミルトン(Hamilton, David L.)
  • ギフォード(Gifford, Robert K.)

ここでは彼らが1976年に行ったステレオタイプに関する実験について紹介します。

この実験では、事前に『少数派』と『多数派』のグループを作り、各グループの被験者に、特定の行動内容を記述した文章を提示しました。

記述された行動内容
  • 記述された行動内容は「ポジティブな行動」と「ネガティブな行動」の2種類
  • 「ポジティブな行動」は「ネガティブな行動」の2倍多く提示され、どちらのグループも同じ割合
  • 行動内容が記述された文章を提示される順番は無作為

そして、文章を全て提示した後、『少数派』と『多数派』の両グループに「ネガティブな行動の記述が何回提示されたか」を尋ねたところ、

結果として、少数派のほうが「ネガティブな行動の記述が多かった」と答えたのです。

ここから、少数派グループ、つまり『多数派である安心感を持たないグループ』は、ネガティブな内容が印象に残りやすい事が実証されました。

そしてこれを踏まえ、『少数派、ネガティブ』という印象に残りやすい事象が、無意識に結びつきやすくなる、ということが示唆されています。

錯誤相関の実験(2) Chapman&Chapman

錯誤相関と提唱してはいないものの、1971年にChapman&Chapman(コンサルティングファーム)が行った実験も興味深いものです。

この実験では、精神疾患に罹患した患者を架空に作り上げ、その患者の臨床診断結果と、その患者が描いた人物の絵をセットにして被験者に提示しました。

そして、患者が描いた人物が、患者でない人物の絵と比べて、どれくらい「おかしな目」をしているかを回答してもらったところ、

被験者の多くが「患者の描いた絵のほうが、患者でない人物が描いた絵と比べておかしな目をしている」と回答したのです。

本来であれば、精神疾患に罹患していることと、患者が描く絵がどうであるかは、全く関係がありません。

しかし、「精神疾患を患っている患者」という少数派&ネガティブな属性と、「おかしな目」という印象に残りやすい事象が紐づけられる結果になったのです。

認知バイアスを防ぐためのポイント

錯誤相関を含む認知バイアスを意識的に防ぐためには、いくつかの方法があります。

ではそれぞれ解説していきます。

①認知バイアスへの理解を深める

まず、どういった認知バイアスが存在するのかを知らなければ、意識して防ぎようがありません。改めて目を通しておくと良いでしょう。

認知バイアス説明・具体例
確証バイアス自分が信じたい情報だけを信じる
例:大好きな彼氏♡こーんなに素敵♡
正常性バイアス自分に都合が悪い事実を信じない
例:連帯保証人になったら友達が音信不通に。でもきっと大丈夫!
一貫性バイアス他者の1行動に一貫性があると思い込む
例:さっきナンパしてきた人、絶対いろんな女子に声かけてるよね
自己中心性バイアス自分を基準に、他者の心情や認知を推察する
例:自分の価値観を押し付ける、相手目線で考えられない
投影バイアス自分の好み、感情、価値観を他人に投影して認識する
例:まわりの人も自分と同じ意見、感情だと思い込む
感情バイアス感情的な好き嫌いが意思決定に影響を与える
例:性能は悪いがつい好きなブランド商品を買ってしまう
生存バイアス現在、生存している事例(成功例)しか見ない
例:成功した起業家を分析して、失敗例を見ない
後知恵バイアス過去の事象に「それは予測可能だった」と勘違い
例:そのじゃんけん、チョキなら勝てるってわかったよね?
バーナム効果曖昧な特徴でも、自分に強く該当すると思い込む
例:占い師「あなたは◯◯な人間ですね」→そうかも!
クレショフ効果2枚の関係ない写真に、意味的な繋がりを感じる
例:「野菜」「不機嫌な人の顔」→野菜が嫌い?
ダニングクルーガー効果能力の低い人ほど自分を高く評価するという現象
例:もうこのゲームはコツ掴んだな!オレ最強かも!
コンコルド効果過去の投資を惜しんで、追加投資をやめられない心理効果
例:UFOキャッチャーを取れるまでやってしまう
ハロー効果ある事象への評価が、他の目立った特徴に引っ張られる効果
例:清潔感がない人は、仕事もできなさそうだし性格も悪そう
リスキーシフト集団の中だと、よりリスクの高い意思決定をしやすくなる効果
例:赤信号、みんなで渡れば怖くない
錯誤相関二つの事柄に、相関関係があると錯誤(思い違い)すること
例:雨男/雨女、アイスの売上と溺死数
根本的な帰属の誤り他人の行動の場合、外部要因を過小評価してしまう傾向
例:遅刻の原因で、状況要因を考慮しにくい(性格のせいにしがち)
アンカリング効果最初に提示した情報が基準となり、その後の認識に影響を与える
例:商品の値下げ(大きく下がっているとお得に感じますよね?)

錯誤相関においても同様です。自身がバイアスに陥る可能性をがあることを認識することで、一定は防ぐことができます。

②意思決定の癖を知る診断を受ける

次は、自身が「どういったバイアスを持ちやすいのか」という思考の癖を知ることをおすすめします。ミイダスで診断可能ですね。(確か、無料でできる診断は唯一だと思います。)

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引用元:ミイダス

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③ものごとを批判的に考える

認知バイアスに陥るのを防ぐためには、「なにごとも疑ってかかる」ということが重要です。 例えば以下のように批判的に考えましょう。

批判的に考えるための問い
  • 自分の思っていることは客観的なのか
  • まわりの意見は公平で公正か
  • 情報は出どころは正しいものなのか
  • 反対意見にはどのようなものがあるのか

このように、ものごとをさまざまな角度から複眼的にとらえることができれば、認知バイアスに陥りにくくなります。

ただし、根っこから認知バイアスに両足を突っ込んでしまっている人は、そもそもこのクリティカルシンキング(批判的思考)を持てないので、注意しましょう。

④第三者の意見を参考にする

認知バイアスは自身の考えに客観性を持てなくなる心理現象なので、「第三者の意見を借りる」というのが効果あります。

例えば、自分にとって利害関係のない相手であったり、自分にとって都合の悪いこともきちんと率直に言ってくれる相手がおすすめです。

ただ、あまりに主観的だとその人が確証バイアスに囚われている可能性があるので、相談できる相手は慎重に選ぶようにしましょう。

他の認知バイアス【一覧と具体例】

認知バイアスには、さまざまな種類があります。個人レベルから集団レベルまで、さまざまな認知バイアスが存在しているので表で整理しました。

認知バイアス説明・具体例
確証バイアス自分が信じたい情報だけを信じる
例:大好きな彼氏♡こーんなに素敵♡
正常性バイアス自分に都合が悪い事実を信じない
例:連帯保証人になったら友達が音信不通に。でもきっと大丈夫!
一貫性バイアス他者の1行動に一貫性があると思い込む
例:さっきナンパしてきた人、絶対いろんな女子に声かけてるよね
自己中心性バイアス自分を基準に、他者の心情や認知を推察する
例:自分の価値観を押し付ける、相手目線で考えられない
投影バイアス自分の好み、感情、価値観を他人に投影して認識する
例:まわりの人も自分と同じ意見、感情だと思い込む
感情バイアス感情的な好き嫌いが意思決定に影響を与える
例:性能は悪いがつい好きなブランド商品を買ってしまう
生存バイアス現在、生存している事例(成功例)しか見ない
例:成功した起業家を分析して、失敗例を見ない
後知恵バイアス過去の事象に「それは予測可能だった」と勘違い
例:そのじゃんけん、チョキなら勝てるってわかったよね?
バーナム効果曖昧な特徴でも、自分に強く該当すると思い込む
例:占い師「あなたは◯◯な人間ですね」→そうかも!
クレショフ効果2枚の関係ない写真に、意味的な繋がりを感じる
例:「野菜」「不機嫌な人の顔」→野菜が嫌い?
ダニングクルーガー効果能力の低い人ほど自分を高く評価するという現象
例:もうこのゲームはコツ掴んだな!オレ最強かも!
コンコルド効果過去の投資を惜しんで、追加投資をやめられない心理効果
例:UFOキャッチャーを取れるまでやってしまう
ハロー効果ある事象への評価が、他の目立った特徴に引っ張られる効果
例:清潔感がない人は、仕事もできなさそうだし性格も悪そう
リスキーシフト集団の中だと、よりリスクの高い意思決定をしやすくなる効果
例:赤信号、みんなで渡れば怖くない
錯誤相関二つの事柄に、相関関係があると錯誤(思い違い)すること
例:雨男/雨女、アイスの売上と溺死数
根本的な帰属の誤り他人の行動の場合、外部要因を過小評価してしまう傾向
例:遅刻の原因で、状況要因を考慮しにくい(性格のせいにしがち)
アンカリング効果最初に提示した情報が基準となり、その後の認識に影響を与える
例:商品の値下げ(大きく下がっているとお得に感じますよね?)

認知バイアスとは、常識や固定観念、また周囲の意見や情報など、さまざまな要因によって誤った認識や合理的でない判断を行ってしまう認知心理学の概念です。

認知バイアスが起こる仕組み

まず、人間の脳は、自分自身の知覚フィルター(五感)を通して外界に触れ、その刺激が脳に到達して情報処理されることで、外界を認識しています。

しかし、そんな脳は意外とおおざっぱな器官で、わからない部分を勝手に埋め合わせてしまったり、先入観にとらわれて事実をねじ曲げたり、自分に都合よく事実を解釈してしまうのです。

このように、様々な理由で認識が歪んだために、事実を正しく認識できずに不合理な(事実でない)認知をしてしまう「過ち」の傾向を「認知バイアス(cognitive bias)」と呼びます。