知性化とは
知性化とは、受け入れ難い感情や欲求に対して、無意識に「知識」を用いて対処しようとする心の動き(防衛機制)のことを指します。
少しウンチクっぽくはなるものの、知識を用いて客観的に受け入れようとすることが特徴です。いくつか例をあげてみましょう。
Case1. 好きな女の子にフラれたとき
- 告白してフラれる確率は○○%だから、たまたまハズレを引いてしまった
- 20歳の自分が「今後出会う女性の人数」を計算するとまだまだ問題ない
Case2. 仕事で大きな失敗したとき
- プロジェクトの最初でこれをしなかったから失敗した…と分析する
- どんなに偉大な起業家もいくつかの挫折経験を乗り越えてきたのでチャンスだと奮起する
このように、人間が感じた欲求や感情が受け入れがたいものであった場合、無意識に防衛機制が働きますが、知識を用いて対処するのが知性化です。
ちなみに、知性化による対応が出来るということは、相応の知的水準に達しており、感情に溺れず客観視できる証明でもありますね。
補足:防衛機制とは
防衛機制とは、認めがたい自分自身の感情や欲求、不安や葛藤などといった「耐えがたい感情」を感じずにするための無意識の”対処法”のことです。例をいくつか見てみましょう。
- 反動形成
本心とは反対の行動を取る(例:好きな女の子に意地悪をする) - 知性化
知識を用いて客観的に処理しようとする(例:フラれた理由を冷静に分析する) - 合理化
自分に都合の良いように事実を歪曲して「自分は正しい」と納得する(例:フラれたときに「あんな性格が悪い人とは付き合わなくて正解だ」と思い込む)
精神分析の創始者であるオーストリアの精神科医「ジークムント・フロイト」が提唱し、後に娘の「アンナ・フロイト」によって、さらに体系化されました。
知性化とは
防衛規制の「合理化」との違い
同じく防衛規制である「知性化」と「合理化」は、名前からして似ているように見えますが、その性質は全く異なっているので見ていきましょう。
- 知性化
知識を用いて客観的に対処しようとする
例:女性の告白成功率に比べると、男性の告白成功率は低いから仕方ない… - 合理化
自分が納得する根拠を主観的に用意する
例:あの女性は頭も悪ければ、性格も悪い。だから付き合わなくて正解だ
※例は女性に告白してフラれた場合
このように合理化は、自分が納得できる根拠をつくるために、都合よく事実を捻じ曲げることが特徴です。つまり、客観的には全く論理的ではありません。
知性化の日常での具体例
知性化は日常的に様々なところで見られます。
知性化の日常での具体例#1
猫アレルギーなのに、猫の飼い方に詳しい
ネコアレルギーの人が、飼ってもいないのに、ネコの飼い方についての知識が豊富というのも知性化の例です。
猫アレルギーの場合、残念なことに、いくらネコが好きで飼いたくても、ネコを飼うことが出来ません。
そこで、飼いたいのに飼えないという葛藤が生じ、この葛藤に対処するため、無意識に知識を求めた行動を取っていくという訳なのです。
知性化の日常での具体例#2
恋人がいないはずなのに、恋愛理論に詳しい
他にも恋人のいない青年が、恋愛についての理論を展開するのも知性化です。
何故、恋人がいないのか問われて「ニュースか何かで見たけれど、最近の同世代の半数は恋人がいないっていうし、そんなものだよ」と答えるなど、知識だけは豊富なのです。
この例は、本当は恋人が欲しいけれどできない、という葛藤に知識によって対処しようとしたものです。
知性化の日常での具体例#3
ダイエットで運動をせず、カロリー計算に勤しむ
ダイエットで食べたら運動しようと言って、食べたもののカロリー計算を始めたりするのも知性化にあたります。
運動は出来ればしたくないし、するとしてもできるだけ軽めが良いので、食べたもののカロリーを計算することで、運動することへの葛藤へ対処しようとするという具合です。
知性化の日常での具体例#4
就活の不安をなくすためにセミナーに参加
そして、多くの方が経験したであろう就職活動も見方によっては知性化として捉えることができます。
就職活動における不安を軽減するために、大した意味もないセミナーにやたらと参加したり、先輩から体験談を聞いたりと、動いていないと気が済まないのです。
このように、初めての出来事への不安に対して事前に知識を得て、その知識によって不安を少しでも軽減しようとすることが確認されています。
知性化の日常での具体例#5
ビジネスでは合理化より知性化が働きやすい
また、採用面接を受ける前や新しいクライアントの情報を集めるというのも、面接や仕事に対しての不安や葛藤を少しでも和らげようとするのもあるでしょう。
仕事となれば、どうしても普段の生活に比べると不安や葛藤が生じやすく、仕事をする上では自身の都合の良いようにだけ考える(合理化)訳にはいかないですから、知性化の防衛機制が働きやすい場面です。