オペラント条件付けとは、報酬や罰といった”結果”を得ることによって、自発的に”行動”を取るようになる「学習」のことです。
アメリカの心理学者・教育学者であるエドワード・L・ソーンダイクが、「operate(動作する)」という単語を由来に命名したことで知られるようになりました。
ちなみに、ここでの「学習」とは、勉強のことではなく、人間を含むすべての動物が経験を通して行動を変容させる過程、を指す学習心理学における専門用語です。
では早速、オペラント条件付けについて詳しく見ていきましょう。
オペラント条件付けの実験(スキナー)
オペラント条件付けの研究は、アメリカの心理学者・教育学者であるエドワード・L・ソーンダイクが1898年に行った試行錯誤学習に関する実験にはじまります。
ただし、本格的な研究は1938年、アメリカの心理学者にして行動分析学の創始者であるバラス・スキナーによるものが知られています。
スキナーは絶食させたネズミを使い、以下のような実験を行いました。

- ブザーが鳴ったときにボタンを押すと餌が出るケージに、ネズミを入れる
- ネズミは、ブザーが鳴ったときにボタンを押し、餌を手に入れる経験をする
そして同じ偶然が続くうち、ネズミは「ブザーが鳴ったときに、ボタンを押す行動で、餌が出てくること」を学習したのです。

このように、ブザーが鳴るという「先行刺激」を受けたとき、エサが出てくる「結果」を目的として、ボタンを押す「行動」を取るよう学習することを「オペラント条件付け」と呼び、
また、「結果」を目的として学習された「行動」のことを「オペラント行動」と呼びます。
オペラント条件付けは三項随伴性(ABC分析)に由来
オペラント条件付けは三項随伴性の考えに由来しています。
この三項随伴性とは、【刺激→行動→結果】の3項目で成り立つ連鎖のことで、英語の頭文字をとってABC分析とも呼ばれます。
- 刺激(Antecedent)
- 行動(Behavior)
- 結果(Consequence)

このように、C.結果によって、B.行動に、強化または弱化が起こることを「随伴性」と呼び、随伴性がある場合のB.行動こそが、オペラント行動のことです。
例えば、以下のようなケース。
- A.気分が落ち込んだ(先行刺激)
- B.飲酒(行動)
- C.気分が良くなった(結果)
この連鎖における「C.気分が良くなった」という得られた結果によって、「B.飲酒」という行動の頻度が変化(増加or減少)した場合、オペラント条件付けが起きたとされるのです。
このように、C.結果に応じて、B.行動の頻度が変化(増えたり減ったり)した場合、そのB.行動は「オペラント行動」と呼ばれ、
オペラント行動の自発頻度が高くなることを「強化」低くなることを「弱化」と言います。
オペラント行動の4パターン|行動随伴性
ここまで紹介してきたオペラント行動には、「結果の正or負」×「オペラント行動の強化or弱化」の組み合わせで4パターン存在し、総称して行動随伴性と呼ばれています。
オペラント行動の4分類 | オペラント行動 | ||
強化 (行動が増える) | 弱化 (行動が減る) | ||
結果 | 正 (得る) | ①正の強化 | ②正の弱化 |
負 (失う) | ③負の強化 | ④負の弱化 |
- 正の強化
結果を得て(+)、行動が増える(+) - 正の弱化(別名:正の罰)
結果を得て(+)、行動が減る(−) - 負の強化
結果を失い(−)、行動が増える(+) - 負の弱化(別名:負の罰)
結果を失い(−)、行動が減る(−)
ちなみに、行動の強化を促した結果のことを「好子(こうし)」と呼び、弱化を促した結果のことを「嫌子(けんし)」と呼びます。
では次に、オペラント行動の具体例を見ていきましょう。
【分類別】オペラント条件付けの日常事例
ここでは、オペラント条件付けの事例を、行動随伴性の4分類別に紹介していきます。
ではそれぞれ見ていきましょう。
(1). 「正の強化」の事例
結果を得る(+)ことで、行動が増えた(+)ケースです。
- A.暑い(先行刺激)
- B.プールで泳ぐ(行動)
- C.気持ち良い(結果)
この場合、「C.気持ち良い」という結果を得る(+)ため「正」に該当し、
「A.暑い」という先行刺激を受けて「B.プールで泳ぐ」という行動が増加(+)するので、
「正の強化」に該当します。
(2). 「正の弱化(正の罰)」の事例
結果を得る(+)ことで、行動が減った(−)ケースです。
- A.犬を見る(先行刺激)
- B.触る(行動)
- C.吠えられて恐怖を感じる(結果)
この場合、「C.恐怖」という結果を得る(+)ため「正」に該当し、
「A.犬を見る」という先行刺激を受けて「B.触る」という行動は減少(−)するので、
「正の弱化」に該当します。
(3). 「負の強化」の事例
結果を失う(−)ことで、行動が増えた(+)ケースです。
- A.かゆい(先行刺激)
- B.掻く(行動)
- C.かゆみが減った(結果)
この場合、「C.かゆみ」を失った(−)ため「負」に該当し、
「A.かゆい」という先行刺激を受けて「B.掻く」という行動は増加(+)するので、
「負の強化」に該当します。
(4). 「負の弱化(負の罰)」の事例
結果を失う(−)ことで、行動が減った(−)ケースです。
- A.嫌いな食べ物(先行刺激)
- B.残す(行動)
- C.おやつ抜き(結果)
この場合、「C.おやつ」を失った(−)ため「負」に該当し、
「A.嫌いな食べ物」という先行刺激を受けて「B.残す」という行動は減少(−)するので、
「負の弱化」に該当します。
オペラント条件付けと古典的条件付けの違い
同じ「条件付け」を名称に持つので混合されやすい2つの理論ですが、意味は大きく異なっており、オペラント条件付けと古典的条件付けの違いは「行動」か「条件反射」かにあります。
オペラント条件付けは「行動」に強弱の変化が起こる理論で、古典的条件付けは条件刺激がなくても「条件反射」が誘発される理論です。
条件付け前後での違いをまとめると、
- オペラント条件付け
前:先行刺激→行動→結果
後:先行刺激→行動(強or弱)→結果 - 古典的条件付け
前:中性刺激→条件刺激→条件反射
後:中性刺激→(なし)→条件反射
となるように、オペラント条件付けは「行動の強弱」に関する理論であるのに対して、古典的条件付けは「条件反射」に関する理論なので、全く異なっているのです。
古典的条件付けとは、中性刺激(特に意味のない刺激)のあとに、条件刺激(何か反射を誘発する刺激)の提示を繰り返すことで、中性刺激によって反射が誘発されるようになる現象です。
別名、レスポンデンド条件付けや、パブロフ型条件付けとも呼ばれ、例をあげると「梅干しを見ただけで、食べていないのに、唾液が出る」などが当てはまります。
オペラント条件付けの活用方法|習慣を変える!

オペラント条件付けは「行動」における「自発頻度の増減」が伴うことから、習慣をつけたい場合や、行動を改めたい場合などに有効です。
- 習慣化したい。行動を強化したい場合
- 習慣をやめたい。行動を弱化したい場合
では、それぞれ説明していきます。
習慣化したい。行動を強化したい。
なにかを習慣化したい場合に、オペラント条件付けが有効です。
これは、行動によって「成功体験」を得ることで、行動が強化されていくというものです。
例えば、ストレッチを毎日やりたいとします。
そのとき、「ストレッチを30分やったら、ジュースを1本飲んでよい」とすると、「ジュース」によって「ストレッチ」が強化されるわけです。
また、少しずつ習慣化されてきたら報酬を増やしていくことで、ストレッチの習慣はさらに強化されることが想像できるでしょう。
習慣をやめたい。行動を弱化したい場合
なにかの習慣をやめたい場合にも、オペラント条件付けが有効です。
この場合は、自発行動を強化する「報酬」を減らすことで、弱化をねらうことがポイントです。
例えば、夜の消灯後のスマートフォン操作をやめたいとします。
この場合の報酬は「スマートフォンの操作で得られる情報」です。
そうすると、情報を強制的にカットさせる仕組み、例えば時間に伴う利用制限などを設けたり、家族にスマートフォンを渡したりすることで、報酬は減ります。
報酬が減ると、オペラント行動は弱化していきます。
そうやってスマートフォンをいじってしまう習慣を少しずつですが減らしていくことができるわけです。
なお、スマートフォンを操作しなかったことによる翌日の報酬を加えてもよいかもしれませんね。
「ゲームを1時間長く遊んでもよい」「お菓子を1つ買ってよい」などでしょうか。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
オペラント条件付けとは、報酬や罰(嫌悪刺激)によって、自発的に行動を行うように「学習」をするという理論でした。
自分が対象であっても、報酬によって行動を強化したり弱化したりができるため、習慣を作るのに適しています。
ぜひこれを機に、良い習慣を作ってみましょう。
このページを読んだあなたの人生が、
より豊かなものとなることを祈っております。