選択のパラドックスとは|選択肢が多ければ多いほど不幸を感じやすくなる認知バイアス

選択のパラドックスとは

選択のパラドックスとは、選択肢が多ければ多いほど不幸を感じやすくなるという現象、認知バイアスのことです。

従来は「選択肢が多いほど人は自由で幸せである」とされてきましたが、選択肢が多くなると下記のようなデメリットが生じてしまいます。

選択肢が多いことのデメリット
  • 選択する時に、より多くの時間と処理が必要になる
  • 選択した後も「他の選択肢の方が良かったかもしれない」という後悔が残る

本来、より自由で合理的な選択をするためには「選択肢は多ければ多い方が良い」はずなので、矛盾していますよね。

具体例をみてみてみましょう。

選択のパラドックスの具体例
  • レストランのメニュー数
    メニューの選択肢が増えるほど、細かい違いを比較し、最適な選択を追求することになります。その結果として満足度が低下してしまうというものです。
  • オンラインショッピング
    商品の選択肢が多すぎると、比較に時間がかかり検討が難しくなります。結果として、満足度が低下し、最終的に購買意欲が減退することすらあります。

このように、選択肢が多いことで、満足度を低下させることを「選択のパラドックス」と言います。

実際、選択肢の多さは「自由度」だけでなく「情報処理や比較の難しさ」まであげてしまいます。そして「損する選択肢を選びたくない」と思うので、脳が疲れてしまうんですよね。

認知バイアスとは、常識や固定観念、また周囲の意見や情報など、さまざまな要因によって誤った認識や合理的でない判断を行ってしまう認知心理学の概念です。

認知バイアスが起こる仕組み

まず、人間の脳は、自分自身の知覚フィルター(五感)を通して外界に触れ、その刺激が脳に到達して情報処理されることで、外界を認識しています。

しかし、そんな脳は意外とおおざっぱな器官で、わからない部分を勝手に埋め合わせてしまったり、先入観にとらわれて事実をねじ曲げたり、自分に都合よく事実を解釈してしまうのです。

このように「思い込みをしやすい」というデメリットはあるものの「膨大な情報量を素早く処理できる」というメリットがあるので、人間の脳への負荷を減らすために必要な機能ですね。

このように、様々な理由で認識が歪んだために、事実を正しく認識できずに不合理な(事実でない)認知をしてしまう「過ち」の傾向を「認知バイアス(cognitive bias)」と呼びます。

提唱者|バリー・シュワルツ

2004年、アメリカの心理学者バリー・シュワルツ(Barry Schwartz)が著書『The Paradox of Choice』で発表しました。

翌年にはTEDに出演しています。

引用元:TED

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引用元:ミイダス

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選択のパラドックスの具体例

ここでは具体例を紹介していきます。

ここからの目次
  1. 仕事/ビジネスでの具体例
    • 就職先の選択
    • 担当プロジェクトの選択
    • 副業の選択
  2. 人間関係/日常生活での具体例
    • 技術書や参考書の選択
    • マッチングアプリでの選択
    • 接待やデートのレストランの選択

①仕事/ビジネスでの具体例

  • 就職先の選択
  • 担当プロジェクトの選択
  • 副業の選択

就職先の選択

就活を経て、仮に10社から内定を得たとします。どの会社も、人事、先輩との話が合い、ビジョンや事業内容、仕事に共感できているものとしましょう。

しかし、就職先は1社しか決められないので、数字で表せない要素で天秤にかけて「どこに就職すべきか」という“答えのない問い”に挑む必要があります。

最終的には1社選び、選ばれなかった9社には内定辞退の連絡をすることになりますが、実際に働くまでは「本当にこれでよかったのか」と悩み続けるかもしれません。

配属先・担当プロジェクトの選択

新入社員として、あなたは人事から10個のプロジェクトを提案され、どれを担当するかを選択しなければなりません。各プロジェクトは魅力的で、それぞれ異なるスキルを磨く機会があります。

しかし、すべてのプロジェクトを同時に行うことは非常に困難で、1つだけしか選べないとしたら、どれを選ぶべきかで悩むことでしょう。さらに、選んだあとも「選ばなかった選択肢」を捨てたことに後悔するかもしれません。

副業の選択

あなたは本業の他に副業を始めるとします。ただ、世の中にはたくさんの副業が溢れているので、どれを選択すべきかに悩むことでしょう。

そして、選ばなかった選択肢で成功している事例を聞くと「やっていればよかった」とあとで後悔するかもしれません。

②人間関係/日常生活での具体例

  • 技術書や参考書の選択
  • マッチングアプリでの選択
  • 接待やデートのレストランの選択

参考書や技術書の選択

大学受験の時の参考書や、SNSやブログを学習したいと思った時の書籍の選択においても、選択のパラドックスは機能します。

本屋へ行くと、同一カテゴリごとに大量の書籍が並んでいるので「どれを選ぶのが正解なのか、どれが一番良いのか」と悩んだ経験のある方は多いでしょう。全部の書籍を一通り読み、比較してから購入できればベストですが、それにはかなりの時間がかかります。

佐々木
一方で、電子書籍だと「ベストセラー」「おすすめ」とピックアップされるので、悩むことなく購入ボタンを押せますよね。

マッチングアプリで誰と合うか

あなたには現時点で恋人がおらず、マッチングアプリを利用しているとしましょう。そして仮に、異性からすごくモテるとします。

しかし、数多くの異性から連絡が来ると「どの人に返信をするか」「誰と会うか」を選ぶ必要があります。すると判断が難しくなり、選択に疲れ、アンインストールしたくなるかもしれません。

最終的に、一人の異性を選んだとしても時間を共にする過程で「やっぱり違うな…あのときサヨナラした○○さんともっと話せばよかった…」と後悔するかもしれません。

接待やデートのレストランの選択

レストランを選択する時も、選択肢が多いと大変です。それこそ重要な取引先との接待や、初めて会う異性とのデートなどですね。

比較サイトが当てにならないこともあるので、いくつか候補を洗い出して、慎重に内装や料理の質を見極める方が多いのではないでしょうか。選択疲れに繋がります。

佐々木
「この店なら大丈夫」というリストをいくつか持っておくと、あとはそこから選ぶだけなので楽になりますね!

認知バイアスを防ぐためのポイント

選択のパラドックスは認知バイアスの一種です。

認知バイアスは共通して「過去の経験や直感による思い込み」で非合理的になってしまう心理現象なので、意識して対策することで、一定は緩和することができます。

ではそれぞれ解説していきます。

①認知バイアスの理解を深める

まず「選択のパラドックス」という認知バイアスの存在を知らなければ、防ぎようがありません。自身がバイアスに陥る可能性があることを認識しましょう。

また、「選択のパラドックス」以外にも日常的に陥りやすい認知バイアスはたくさんあるので、一通り、目を通しておくことをお勧めします。

認知バイアス説明・具体例
正常性バイアス自分に都合が悪い事実を信じない、現実を見ない
例:連帯保証人になったら友達が音信不通に。でもきっと大丈夫!
確証バイアス自分の信念を裏付ける情報を探し求め、それ以外を見ない
例:大好きな彼氏はココが良い!ココも素敵!
生存バイアス現在、生存している事例(成功例)しか見ない
例:成功した起業家を分析して、失敗例を見ない
後知恵バイアス過去の事象に「それは予測可能だった」と勘違い
例:そのじゃんけん、チョキなら勝てるってわかったよね?
自己奉仕バイアス自身に好意的な認識を持ちやすい傾向がある
例:成功は自分の能力が高いおかげ。失敗は外部環境のせい。
自己中心性バイアス自分を基準に、他者の心情や認知を推察する
例:自分の価値観を押し付ける、相手目線で考えられない
感情バイアス感情的な好き嫌いが意思決定に影響を与える
例:性能は悪いがつい好きなブランド商品を買ってしまう
投影バイアス自分の好み、感情、価値観を他人に投影して認識する
例:まわりの人も自分と同じ意見、感情だと思い込む
一貫性バイアス他者の1行動に一貫性があると思い込む
例:さっきナンパしてきた人、絶対いろんな女子に声かけてるよね
保守性バイアス新しい情報を取り入れて、考え方や行動を変えることに躊躇する
例:革新的な新技術が出ても、使わず、従来のやり方に固執する
バーナム効果曖昧な特徴でも、自分に強く該当すると思い込む効果
例:占い師「あなたは◯◯な人間ですね」→そうかも!
ハロー効果ある事象への評価が、他の目立った特徴に引っ張られる効果
例:清潔感がない人は、仕事もできなさそうだし性格も悪そう
ダニングクルーガー効果能力の低い人ほど自分を高く評価しやすい心理効果
例:もうこのゲームはコツ掴んだな!オレ最強かも!
コンコルド効果過去の投資を惜しんで、追加投資をやめられない効果
例:UFOキャッチャーを取れるまでやってしまう
バンドワゴン効果多くの人々が支持する意見や行動に信頼感を抱く効果
例:子どもが、他のみんなと同じオモチャを欲しがる
フレーミング効果同じ情報でも伝え方によって受け取り方が異なる効果
例:電池残量が「残り50%もある」と「残り50%しかない...」
アンカリング効果最初に提示した情報が基準となり、その後の認識に影響を与える効果
例:商品の値下げ(大きく下がっているとお得に感じますよね?)
アンダードッグ効果不利な立場の負け犬を同情・応援したくなる効果
例:バレンタインに縁がなさそうな人にチョコをあげたくなる
クレショフ効果2枚の関係ない写真に、意味的な繋がりを感じる効果
例:「野菜」「不機嫌な人の顔」→野菜が嫌い?
バックファイア効果信念に反する情報を提示すると、裏目になる効果
例:大好きな彼氏を批判されると、かえって愛情が増す、守る
真理の錯誤効果繰り返された情報を真実だと思い込む効果
例:「最高品質」と効果を連呼するTVCMを繰り返しみて信じる
リスキーシフト集団の中だと、よりリスクの高い意思決定をしやすくなる効果
例:赤信号、みんなで渡れば怖くない
錯誤相関二つの事柄に、相関関係があると錯誤(思い違い)すること
例:雨男/雨女、アイスの売上と溺死数
根本的な帰属の誤り他人の行動の場合、外部要因を過小評価してしまう傾向
例:遅刻の原因で、状況要因を考慮しにくい(性格のせいにしがち)
アロンソンの不貞の法則知らない人からの褒め言葉を、より嬉しく感じる法則
例:家族よりも、他人から認められると嬉しい
代表性ヒューリスティックある対象の判断を、既知概念の代表的特性との類似性で判断する
例:「尻尾が丸い動物」→「うさぎかな?」
可用性ヒューリスティックある判断をするとき、すぐに思い出せる事例や情報から判断しやすい
例:馴染みのものや、人気ブランド、記憶に浮かぶ商品を選びがち。
選択肢のパラドックス選択肢が多ければ多いほど不満を感じやすくなる
例:レストランのメニュー、料金プランの種類など

②認知バイアスの診断を受ける

次は、自身が「どういったバイアスを持ちやすいのか」という思考の癖を知ることをおすすめします。ミイダスで診断可能ですね。(確か、無料でできる診断は唯一だと思います。)

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③ものごとを批判的に考える

認知バイアスに陥るのを防ぐためには、「なにごとも疑ってかかる」ということが重要です。 例えば以下のように批判的に考えましょう。

批判的に考えるための問い
  • 何が事実で、何が解釈か
  • 情報は正しいものなのか
  • 反対意見には何があるか
  • 別の観点から考えると解釈は変わるか

このように、ものごとをさまざまな角度から複眼的にとらえることができれば、認知バイアスに陥りにくくなります。

ただし、根っこから認知バイアスに両足を突っ込んでしまっている人は、そもそもこのクリティカルシンキング(批判的思考)を持てないので、注意しましょう。

④第三者の意見を参考にする

認知バイアスは自身の考えに客観性を持てなくなる心理現象なので、「第三者の意見を借りる」というのが効果あります。

例えば、自分にとって利害関係のない相手であったり、自分にとって都合の悪いことも率直に言ってくれる相手がおすすめですね。

他の認知バイアス【一覧と具体例】

認知バイアスには、さまざまな種類があります。個人レベルから集団レベルまで、さまざまな認知バイアスが存在しているので表で整理しました。

認知バイアス説明・具体例
正常性バイアス自分に都合が悪い事実を信じない、現実を見ない
例:連帯保証人になったら友達が音信不通に。でもきっと大丈夫!
確証バイアス自分の信念を裏付ける情報を探し求め、それ以外を見ない
例:大好きな彼氏はココが良い!ココも素敵!
生存バイアス現在、生存している事例(成功例)しか見ない
例:成功した起業家を分析して、失敗例を見ない
後知恵バイアス過去の事象に「それは予測可能だった」と勘違い
例:そのじゃんけん、チョキなら勝てるってわかったよね?
自己奉仕バイアス自身に好意的な認識を持ちやすい傾向がある
例:成功は自分の能力が高いおかげ。失敗は外部環境のせい。
自己中心性バイアス自分を基準に、他者の心情や認知を推察する
例:自分の価値観を押し付ける、相手目線で考えられない
感情バイアス感情的な好き嫌いが意思決定に影響を与える
例:性能は悪いがつい好きなブランド商品を買ってしまう
投影バイアス自分の好み、感情、価値観を他人に投影して認識する
例:まわりの人も自分と同じ意見、感情だと思い込む
一貫性バイアス他者の1行動に一貫性があると思い込む
例:さっきナンパしてきた人、絶対いろんな女子に声かけてるよね
保守性バイアス新しい情報を取り入れて、考え方や行動を変えることに躊躇する
例:革新的な新技術が出ても、使わず、従来のやり方に固執する
バーナム効果曖昧な特徴でも、自分に強く該当すると思い込む効果
例:占い師「あなたは◯◯な人間ですね」→そうかも!
ハロー効果ある事象への評価が、他の目立った特徴に引っ張られる効果
例:清潔感がない人は、仕事もできなさそうだし性格も悪そう
ダニングクルーガー効果能力の低い人ほど自分を高く評価しやすい心理効果
例:もうこのゲームはコツ掴んだな!オレ最強かも!
コンコルド効果過去の投資を惜しんで、追加投資をやめられない効果
例:UFOキャッチャーを取れるまでやってしまう
バンドワゴン効果多くの人々が支持する意見や行動に信頼感を抱く効果
例:子どもが、他のみんなと同じオモチャを欲しがる
フレーミング効果同じ情報でも伝え方によって受け取り方が異なる効果
例:電池残量が「残り50%もある」と「残り50%しかない...」
アンカリング効果最初に提示した情報が基準となり、その後の認識に影響を与える効果
例:商品の値下げ(大きく下がっているとお得に感じますよね?)
アンダードッグ効果不利な立場の負け犬を同情・応援したくなる効果
例:バレンタインに縁がなさそうな人にチョコをあげたくなる
クレショフ効果2枚の関係ない写真に、意味的な繋がりを感じる効果
例:「野菜」「不機嫌な人の顔」→野菜が嫌い?
バックファイア効果信念に反する情報を提示すると、裏目になる効果
例:大好きな彼氏を批判されると、かえって愛情が増す、守る
真理の錯誤効果繰り返された情報を真実だと思い込む効果
例:「最高品質」と効果を連呼するTVCMを繰り返しみて信じる
リスキーシフト集団の中だと、よりリスクの高い意思決定をしやすくなる効果
例:赤信号、みんなで渡れば怖くない
錯誤相関二つの事柄に、相関関係があると錯誤(思い違い)すること
例:雨男/雨女、アイスの売上と溺死数
根本的な帰属の誤り他人の行動の場合、外部要因を過小評価してしまう傾向
例:遅刻の原因で、状況要因を考慮しにくい(性格のせいにしがち)
アロンソンの不貞の法則知らない人からの褒め言葉を、より嬉しく感じる法則
例:家族よりも、他人から認められると嬉しい
代表性ヒューリスティックある対象の判断を、既知概念の代表的特性との類似性で判断する
例:「尻尾が丸い動物」→「うさぎかな?」
可用性ヒューリスティックある判断をするとき、すぐに思い出せる事例や情報から判断しやすい
例:馴染みのものや、人気ブランド、記憶に浮かぶ商品を選びがち。
選択肢のパラドックス選択肢が多ければ多いほど不満を感じやすくなる
例:レストランのメニュー、料金プランの種類など

認知バイアスとは、常識や固定観念、また周囲の意見や情報など、さまざまな要因によって誤った認識や合理的でない判断を行ってしまう認知心理学の概念です。

認知バイアスが起こる仕組み

まず、人間の脳は、自分自身の知覚フィルター(五感)を通して外界に触れ、その刺激が脳に到達して情報処理されることで、外界を認識しています。

しかし、そんな脳は意外とおおざっぱな器官で、わからない部分を勝手に埋め合わせてしまったり、先入観にとらわれて事実をねじ曲げたり、自分に都合よく事実を解釈してしまうのです。

このように、様々な理由で認識が歪んだために、事実を正しく認識できずに不合理な(事実でない)認知をしてしまう「過ち」の傾向を「認知バイアス(cognitive bias)」と呼びます。