反動形成とは
反動形成とは、受け入れがたい思いと反対の行動を取ることで、自分自身が受け入れがたい感情を意識化しないようにする「防衛規制」のことです。
- 好きな女の子に意地悪してしまう
- 嫌いな上司に愛想を振り撒いてしまう
- 好きな人のデートでつまらなそうにする
- 嫌いな相手に必要以上に優しくする
よくある有名な例は、幼稚園〜小学生の男の子が「好きな女の子に意地悪をしてしまうこと」です。まだ、幼く恋心をどう扱ってよいか分からず、「なんだ、この気持ちは!?」との戸惑いから「好き」な気持ちとは裏腹にいじわるしてしまうのです。
本人からするとその気持ちが恋心であることは分からず(意識化しないようにしているため)「なんかよく分からないけど、モヤモヤする!」という感じかもしれません。
大人であっても反動形成を起こす
大人であっても、反動形成は日常的によく用いられる防衛機制のひとつです。防衛機制は人が生きていく中で出会う様々な出来事(多くは自分にとって不安や葛藤が引き起こされるような出来事)に対応するためのいわば対処法のようなものです。
しかし、防衛機制は無意識に起こってくるものなので、どういった時にどういった対処法を取るのかといったことはコントロール出来ません。
また、無意識や防衛機制についても簡単にですが、説明しているので、合わせて読んで頂けるとイメージがつかみやすくなるかもしれません。
このあと、無意識と防衛機制の簡単な説明(前回の記事)を入れてください。
反動形成の日常例
無意識に行われる「反動形成」などの防衛機制についてはイメージがつかみにくいかもしれませんが、出来る限り多くの例をあげていきますので、参考にしてみてください。
反動形成は恋愛でよく起きる
「あの人に話しかけたいけれど、話せない」
これは単純に緊張しているとも考えられますが、「あの人に話しかけたい」という気持ちの裏には「そう思うほどには好意を抱いている」ということが隠れていたりします。無意識の中に隠れている場合もあったりしますし、気づいている場合でもその気持ちをどう扱ってよいか分からない状態かもしれません。
いずれにしてもその「話しかけたい」気持ちを何らかの事情で素直に意識化することや表現することが難しい、つまりそうした気持ちを無意識の層に追いやろうとします。(心理学では抑圧とも言います)
こうなると、本人自身もその気持ちに気づくことが難しくなりますが、そうした気持ちがなくなったわけではないので、意識の層では「なんかモヤモヤする」(心理的反応)「なんか緊張する」(身体的反応)として意識されます。この「モヤモヤ」や「緊張」に対処するため、反動形成として「話さない(話せない)」という形を取るわけです。
他にも恋愛においてもお相手に振られてしまった時、ショックを受けるでもなく、「別れられてせいせいした!」とむしろ気丈に振舞うような場合もそうです。本当はふられてショックな気持ちを抑圧しようと反対の感情を示しているのです。
- 好きな人のデートなのにつまらなそうにする
- 嬉しいはずの贈り物を素っ気なく受け取ってみせる
と恋愛は感情が強く揺さぶられる出来事も多くためにそれを見せまいとして、結果的に反対の言動を取ってしまう「反動形成」のかたちで現われることが多いのです。
反動形成はビジネスでも起きる
苦手な上司にはやたら愛想よくしてしまう、というのも反動形成のひとつの例です。
社会人ですから、目上の人には失礼のないように心がけるものかもしれませんが、何故か苦手な上司にだけは必要以上に愛想よく接してしまう場合は反動形成と考えられます。
「この人のことが苦手だ」という気持ちを悟られまいとする行動であると同時に、自分が「この上司を苦手としている」という気持ちを意識化しないようにするための行動とも言えます。
意識化してしまうとその感情と向き合わなければなりませんし、それと向き合い続けることは困難です。それに意識化してしまえば、意識している分、態度に出てしまって、本当の気持ちを相手に気づかれてしまうかもしれません。防衛機制である「反動形成」は円滑な対人関係を構築する上で必要になってきます。
その他にも禁煙しなければならない人がとても雄弁に禁煙するメリットについて語ったり、継母が継子に必要以上に優しく接したり、本当の気持ちには見ないふりをしてそれとは反対の行動を取ったりするのです。
さいごに
受け入れ難い感情を抑圧するために、それとは反対の行動を取る「反動形成」。
この記事を読んで「普段は優しいあの子も本当は違うのでは…」と不安になった方もいるかもしれません。反動形成かそうでないかは「わざとらしい」過剰な態度かどうかが一つの見極めのポイントになります。
しかし、先程お話しした通りに「反動形成」は「防衛機制」であり、それは「無意識」に行われるものです。本人すら気づいていないこともあります。
大切なことはそれが反動形成による言動なのかということよりも、それが周囲と上手くやっていくためのその人なりのやり方であり、気遣いであるということです。
他者と円滑なコミュニケーションを取る上で「反動形成」は大切な役割を担っているのです。