リスキーシフトとは?赤信号、みんなで渡れば怖くない。と集団で危険な行動を取りやすい心理を解説

リスキーシフトとは、1人だと慎重で理性的な行動を取れる人間が、集団の「極端な言動が注目されやすくなる」という特性によって、リスクの高い意思決定に加担してしまうという心理です。

例えば、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という言葉がまさにリスキーシフトの代表例です。

実際に1人でいるときだと、よほど急いでいる場合などでなければ、あえて赤信号を渡ろうとは思わないでしょう。

しかし、上記であげた言葉が示すとおり、集団の中にいると「赤信号だけれど『怖くない』」という、危険度の高い意思決定が容易になされてしまうわけです。

ちなみにリスキーシフトは、人が個人から集団になった途端、極端な方向へと向かいやすくなる心理傾向である「集団分極化(集団極性化)」の1つでもあります。

では早速、リスキーシフトについて見ていきましょう。

リスキーシフトは、認知バイアスの1つ

認知バイアスとは、常識や固定観念、また周囲の意見や情報など、さまざまな要因によって「合理的でない」認識や判断を行ってしまう認知心理学の概念です。

リスキーシフトの他にも様々な認知バイアスがあります。

認知バイアスの例
  • 確証バイアス
    自分の仮説や信念を検証するとき、都合良い情報ばかりを集め、都合の悪い情報を見なくなる心理現象
  • 正常性バイアス
    自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりする心理現象

ちなみに、「バイアス」とは思考の偏りのことを指しています。

そもそもバイアスとは

「バイアス(bias)」はもともと英語で「かたより(偏り)」という意味で、心理学においては「人の思考における偏り」を指します。

言い換えると、「思い込み」や「先入観」、「偏見」「差別」といったものから、「傾向」という軽度なものまですべて「バイアス」です。

これらのバイアスは、脳が「知覚し・感情を生起させ・記憶を形成し・行動に至ったりする」といった全プロセスに影響を与えるため、ときに大きな判断ミスに繋がることもあります。

そして、思考にバイアスのない人間は存在せず、全ての人間は、あくまで限定された合理性しか持ち得ないというのがポイントです。

認知バイアスとは|思考における偏りで合理的になれない心理現象を一覧化して解説!

リスキーシフトの提唱者:ジェームズ・ストーナー

リスキーシフトは様々な心理学者によって研究が行なわれていますが、最初に提唱したとされているのは、アメリカの社会心理学者ジェームズ・ストーナーです。

ストーナーは、1961年に発表した修士論文の中でリスキーシフトの存在を報告しています。

リスキーシフトの論文(ストーナー)

リスキーシフトの実証実験(ストーナー)

ストーナーによる実証実験は、アメフトの試合において、「残りワンプレーで試合が終わる」という局面下で被験者やチームがどう判断するかを検証したものです。

実験で被験者に示された条件は、以下2パターン。

  1. 安全なプレーを行う
    確実に同点で試合を終えられる
  2. 危険なプレーを行う
    もし成功すれば勝てるが、失敗すれば負けて試合が終わってしまう

そしてストーナーは、「②危険なプレー」の成功率を1/10、3/10、5/10と上げながら、被験者個人とチーム(すなわち集団)のそれぞれに意見を聞きました。

すると結果として、チーム全体に意見を聞いたときのほうが、被験者個人に聞いた際と比べてリスクの高い選択をしやすくなったのです。

これはすなわち、集団が不合理(勝率が半分以下)でありながらもリスクの高い選択に傾倒してしまうことが実証された結果になります。

リスキーシフトの実証実験(ワラックとコーガン)

ワラックとコーガンは、大学受験に関する意思決定で、「被験者」と「被験者の属する集団」の判断がどのように変化するかについて検証しています。

実験では、被験者である学生に以下の課題(設問への回答)を個別に与えたのち、6人での話し合いの時間を設けて、集団での回答を提出するよう指示しました。

ワラックとコーガンによる設問

設問:あなたがこれらの大学の中から1つしか受験できないとしたら、どの大学を受験しますか?

  • 「A: 合格率100%の大学」
  • 「B: 合格率90%の大学」
  • 「C: 合格率70%の大学」
  • 「D: 合格率50%の大学」
  • 「E: 合格率30%の大学」
  • 「F:合格率10%の大学」

実験の結果、被験者個人での回答では安全圏の大学であるAからCを主に選択していたにも関わらず、集団での回答になるとDからFのハイリスクな受験に変わっていたのです。

また、ワラックとコーガンは、「もともとリスクの高い選択をしやすい人を話し合いに加える」などの追加実験を行っています。

その結果、「リスクの高い人が集団内にいるとリスキーシフトが起こりやすい」「リスクの高い人の極端な発言は集団内で好意的に受け止められる」といった側面も実証されたのです。

ここから、リスキーシフトは「集団に誰が属しているか」によって起きやすさが変わること、そして「極端な発言は集団で歓迎されやすい」ことまでも明らかになりました。

リスキーシフトの論文(ワラックとコーガン)

リスキーシフトの日常事例

ここからは、リスキーシフトの具体例について解説していきます。

では、それぞれ見ていきましょう。

事例(1)掲示板やSNSの誹謗中傷

SNSにおける誹謗中傷もリスキーシフトが引き起こす影響といえるでしょう。

実際、個人では「誹謗中傷はいけない」とわかっていても、それが集団になって、それを過激な発言で加速させる人間がいると、全員が人を傷つけることを厭わなくなってしまうわけです。

また、SNSは匿名性が高いことから個人の責任の所在が曖昧になるため、「誹謗中傷をしても自分が誰だかバレない(からいいや)」という感覚が誹謗中傷を増長させます。

インターネットが普及した現代の日常に潜むよくありがちなリスキーシフトなので、十分に注意を払いましょう。

事例(2)戦争やテロ

一人ひとりが「よくない」「争いで悲劇を起こしてはならない」と思っているはずなのに、今もなお、世界のどこかで戦争やテロが起きているのは、まさにリスキーシフトです。

例えば、「極端な言動」として「自国を守っていくために他国を蹴落とすしかない」という過激派がいたとしたら、その過激な意見が国家という集団内で注目されるようになります。

そして、当初は戦争に否定的だった議論も、こうした極端な意見によって次第に傾き、戦争という極論に陥るわけです。

リスキーシフトを回避するための3ポイント

リスキーシフトを回避するには、以下3ポイントを抑えておくと良いでしょう。

  1. 極端な発言が影響を持ちやすいことを理解する
  2. あえて批判する人を用意して同調を防ぐ
  3. 発言に対する責任の所在を明確にする

では順番に説明していきます。

極端な発言が影響を持ちやすいことを理解する

リスキーシフトを回避するためには、まずなにより「集団において極端な発言が影響力を持ちやすく、そちらに傾きやすい」ということを念頭に置いておく必要があります。

なぜならば、リスキーシフトのような「認知バイアス」は、名前の通り「認知」が歪められてしまうので、本人の自覚がなく陥ってしまうためです。

そのため、まずはリスキーシフトの存在を認知し、自身が陥っていないかを確認・留意できるだけの意識を持つ必要があるのです。

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あえて批判する人を用意して同調現象を防ぐ

リスキーシフトを回避する1つの手法として、ディベートなどで多数派に対して、あえて批判や反論をする「悪魔の代弁者」を集団に置くことが挙げられます。

同調効果によって、思考停止で周囲に流されてしまわないように、同調傾向を防ぐ役割を集団に加えることによって、集団が衆愚に陥る状態を抑止する役割を果たしてくれるわけです。

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発言に対する責任の所在を明確にする

また別の方法として、集団における責任の所在をはっきりさせておくこと、ひいては集団における個人の発言に対する責任の所在を明確にしておくことも重要です。

そうすることで一つひとつの発言に重みが増するので、全体を通して極端な意見は少なくなり、慎重に議論を進めることが可能となるでしょう。

さいごに

いかがでしたでしょうか。

リスキーシフトとは、1人だと慎重で理性的な行動を取れる人間が、集団の「極端な言動が注目されやすくなる」という特性によって、リスクの高い意思決定に加担してしまうという心理です。

この心理によって、時に合理的ではないリスキーな行動を起こしてしまう可能性があるので、そうならないように、意識して気をつけるようにしましょう。

このページを読んだあなたの人生が、
より豊かなものとなることを祈っております。