統合失調症とは
統合失調症(Schizophrenia)とは、脳や思考の働きにまとまりを持たせることが難しくなり、妄想や幻覚などの特異的な症状が生じる精神疾患のことです。
- まとまりのない思考(発語)
- まとまりがない、または異常な運動行動
- 陽性症状(妄想や幻覚)
- 陰性症状(感情や意欲、集中力の低下など)
統合失調症は、上記にある症状1つで確定されるものではなく、一連の症状から日常生活に明らかに支障が出ている場合に、疑いがより濃厚になります。
なお、思考にまとまりを欠く状態になる特徴から、かつては「精神分裂病」と呼ばれていました。ただ、精神そのものが分裂しているかのような誤解や偏見を避けるために、2002年に「統合失調症」へと名称が改められ、現在に至ります。
統合失調症の症状:妄想や幻覚などが生じる
- 妄想
- 幻覚
- まとまりのない思考(発語)
- まとまりがない、または異常な運動行動
- 陰性症状
統合失調症の症状「妄想」
統合失調症の妄想は、自分と他人の境界線が曖昧になり、通常ではありえないような対人関係上の因果関係を信じ込んでしまうというところが、他の精神疾患(うつ病等)で見られる妄想とは異なります。
本人は妄想を現実のこととして認識してしまっているため、妄想を否定するような客観的証拠があったとしても妄想を修正できないことが通例です。
現実的ではない“被害妄想”を抱くことが多い
統合失調症でよく見られる妄想は「被害妄想」です。被害妄想とは、特定の人物や組織などから、なにかしらの被害を受けていると訴えるものです。
- 追跡妄想
誰かに尾行されている - 迫害妄想
誰かに命を狙われている - 注察妄想
誰かに監視されている
例えば、現実には存在しない監視カメラがあると訴え、本気で恐れ、怯えます。そんなものはないと否定しても、自分にしか見えないが確かにあると訴え続けます。他にも、存在していない兄弟や姉妹から「毎日のように行動を監視されている」と訴える例もあります。
被害妄想以外で見られる奇異な妄想
なお、被害妄想以外にも下記の妄想があります。
- 誇大妄想
自分には特別な能力や権限があるのだと主張する - 恋愛(被愛)妄想
ほとんど関係のない相手が自分に好意や恋愛感情を向けてくると主張する
また、解釈の余地がないレベルで現実的にあり得ない、全く理解不能な妄想を訴えることもあります。
- 思考奪取
外部の力(たとえば、電波や電磁波)によって自分の考えが抜き取られているなどと主張する - 思考吹入
自分のものではない思考が吹き込まれてしまったなどと主張する - 被操作妄想
自分の体が何かにのっとられて操作されているなどと主張する - 血統妄想
自分は天皇陛下の兄弟、イエスキリストの生まれ変わりなどと主張する
これ以外にも「傷痕も残さずに自分の臓器を他人のものと入れ替えられた」「原爆を落とすための暗号が自分だけに知らされてしまった」「宇宙人を身ごもってしまった」など、多種多様です。
統合失調症の症状「幻覚」
幻覚とは、本来は外的刺激に反応して生じる知覚(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚など)を、外的刺激がないにも関わらず、あるかのように体験されることです。
統合失調症で出現する「幻覚」は、あくまで意識が明瞭なときにはっきりと体験されるものなので、寝起きや入眠時に起こる「曖昧な感覚」とは異なります。
例えば、現実的には笑っていない相手の表情が“ニタニタ”と笑って見えるような幻覚(幻視)、無味無臭の水に下水道の臭いを感じるような幻覚(幻臭)などです。統合失調症の場合、特に、現実にはない声が聞こえる「幻聴」を体験する人が最も多く見られます。
統合失調症の症状「まとまりのない思考(発語)」
統合失調症になると、思考を構成する考えや意識の間にある関連が弱くなり、思考にまとまりを欠くようになってしまいます。
ある話題で話していたのに急に全く別のことについて話し始めたり、質問に対してちぐはぐな答えが返ってきたりします。
話のつながりが悪くなり、おおよそ何を言っているのかはわかるがまとまりのない状態を「連合弛緩」、聞き手が意味を汲み取ることが難しいまでに思考や話が支離滅裂となる状態を「滅裂的思考」と呼びます。
さらに重度になると、単なる言葉や単語を無秩序に羅列するように口にする状態(「言葉のサラダ」)ともなります。
統合失調症の症状「まとまりがない、または異常な運動行動」
まとなりのなさが行動に表れる場合です。
注意を適切に働かせながら目標や目的に向かって行動していくことができず、日常生活に必要な行動を遂行することすら難しくなってしまいます。
たとえば、他者からの指示に対して何でもかんでも抵抗する、ちょっとしたきっかけで異常に興奮してものを投げたり暴言を吐いたりする、目的や理由のわからない動作を繰り返す、通常人がとらない奇異な姿勢や行動を続ける、黙り込んで呼びかけに全く反応しなくなる、などです。
思考にまとまりを欠くため、実際の年齢よりも言動がひどく幼く感じられやすいことも特徴的です。
統合失調症で見られる「陰性症状」とは
統合失調症の陰性症状では、感情の平板化(感情の障害)と意欲の減退(意欲の障害)が目立ちます。統合失調症では、よく“表情が能面のように平板になる”と言われます。感情の動きが少なくなり、表情が乏しく硬くなるためです。
感情の障害は他者の感情理解にも生じ、相手の気持ちに鈍感になります。相手との感情交流が難しくなるため、対人コミュニケーションも乏しくなっていきます。
物事を行うために必要な意欲が著しく障害され、身辺の清潔にすら意欲をもてなくなります。爪を切ったりひげを剃ったりすることはもちろん、入浴もできずにずっと同じ服を着たまま部屋に引きこもってしまうことが少なくなくありません。
居室や居宅は整理整頓ができないため、乱雑となり、ごみ屋敷に発展する場合もあります。これ以外にも自ら何かをしようとする自発的行動が激減し、膝を抱えたまま長時間ぼうっとしたり、ほとんど会話をしなくなったりします。
統合失調症の診断基準(DSM-5)
ここでは、統合失調症の診断基準についてDSM-5を意訳しつつ引用していきます。ほとんどの方はDSM-5をご存知ないと思いますので、最初に簡単に説明しますね。
- 診断基準となる「DSM-5」とは
- 統合失調症の診断基準
では見ていきましょう。
診断基準となる「DSM-5」とは
DSM-5とは、アメリカ精神医学会発刊の『Diagnosis and Statics Manual of Mental Disorders(精神疾患の診断・統計マニュアル)』の第5刷を略したものです。
未知の部分が多い精神疾患や精神障害について、ほとんどの精神科医が、この「DSM-5」をスタンダードとして、診療や研究にあたっています。
なお、統合失調症は、精神医学が扱う代表的な疾患で、第2章「統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群」のなかに記載されています。同じ章には、「統合失調症様障害」「統合失調感情障害」などが含まれています。
統合失調症の診断基準
DSM-5に記載されている「統合失調症」の診断基準は以下のようになっており、基準Aと基準Bが統合失調症の特徴をよく表しています。専門用語が多いため、わかりやすく意訳してお示しします。
A. 次の(1)~(5)の症状について、(1)(2)(3)のいずれかを1つ以上含めて2つ以上あてはまり、それぞれが1ヶ月以上にわたってほとんどいつも存在する
(1)妄想
(2)幻覚
(3)まとまりのない思考(発語)
(4)まとまりがない、または異常な運動行動
(5)陰性症状
B. 一連の症状が出始めた後に、仕事、対人関係、自己管理などの能力が著しく低下した状態が続いており、以前の水準に達することがない
C. 一連の症状が6ヶ月以上続いており、その間に基準Aを満たす症状が1ヶ月以上続いている
D. 以下の2つによって他の精神疾患と区別されていること
(1)一連の症状が出ているのと同時に、抑うつエピソードや躁病エピソードが存在していない
(2)一連の症状が出ている間に気分エピソード(抑うつエピソードや躁病エピソード)が存在していたとしても、その合計持続期間は、一連の統合失調症の症状が出現している期間の半分に満たない
E. 薬物乱用や薬の副作用、他の疾患の生理的作用から直接的影響を受けていない
F. 自閉スペクトラム症や小児期発症のコミュニケーション症(日本ではいわゆる「発達障害」)の病歴がある場合は、顕著な妄想や幻覚を含む統合失調症の症状が1ヶ月以上続く場合にのみ与えられる
統合失調症の症状のメカニズム
ここでは、統合失調症の症状のメカニズムを解説していきます。
- 1)発症のリスク要因・環境
- 2)症状の起こりやすさと経過
- 3)統合失調症で代表的な3つの病型
- 4)統合失調症の4つの病期
では見ていきましょう。
1)発症のリスク要因・環境
統合失調症の発症には、脳内で情報を伝える神経伝達物質のバランスが関係しているのではないかといわれていますが、はっきりとした原因は現在も不明です。
進学・就職・結婚・出産など、人生の岐路となるような変化が発症のきっかけになることが多いものの、あくまでもきっかけであって、原因ではないと考えられています。
統合失調症の原因には素因(遺伝など)と環境の両方が関係しており、素因の影響が約3分の2、環境の影響が約3分の1ともいわれています。
精神疾患のなかでは素因の影響が大きい疾患ではありますが、生活習慣病などを含めた疾患全体で見れば、顕著に高い値とは言えません。統合失調症の母親から生まれた子どものうち、統合失調症を発症するのは1割程度に過ぎないとする報告もあります。
2)症状の起こりやすさと経過
統合失調症の有病率は人種や国によるばらつきが大きく、日本での十分な調査報告はありません。
DSM-5では、生涯罹患率(生涯のうちに統合失調症にかかる割合)0.3~0.7%と推定しています。おおよそ100人に1人弱が統合失調症をもっており、比較的珍しくない精神疾患と言えます。
発症の頻度には性差があり、有病率は女性もよりも男性で高いとされています。好発年齢は10歳代後半から20歳代で、女性は男性よりも発症年齢が高い傾向にあります。ただ、統合失調症には大きく分けると3のタイプ(病型)があり、病型によって好発年齢や経過が異なると言われています。
3)統合失調症で代表的な3つの病型
「解体型」
以前は女性が初潮を迎える時期(思春期から青年期)に発病することが多いことから、「破瓜型」とも呼ばれていました。現在は女性蔑視につながるとの意見を受け、解体型と呼ばれることが多くなっています。最初に陰性症状(感情の平板化や意欲の減退)が現れ、徐々に妄想や幻覚といった陽性症状が出現します。
明治時代から昭和初期にかけては、海外留学に出かけた青年が、船上や留学先で急激に陽性症状を悪化させ、重篤な状態で帰国してくる例がよく報告されていました。海外留学するほどに意欲旺盛だったり新進気鋭であったりした青年が、好奇心や意欲をすっかり失い、外界への興味を失ってしまう様は、「人格荒廃」とも呼ばれました。症状は慢性化しやすく、回復しても発症前同等の能力が取り戻されることは少なく、予後は厳しい病型です。この解体型は、男性によく見られます。
「緊張型」
好発年齢は解体型よりもやや遅く、思春期を過ぎた青年期あたりです。急に発病し、異常な行動運動がよく出現します。落ち着きなくやたらと動き回ったり、逆にじっとして話しかけても反応しなくなったりと、行動の特徴は両極端です。奇妙な行動や姿勢をとり続けることもあります。たとえば、椅子の上で膝を曲げて丸まってまま動かなくなったり、かかしのように片足立ち続けたりします。
両極端さは他者との関係にも表れ、言われたことだけをそのまま行う「命令自動症」の状態になったり、何を支持されても抵抗して拒む「拒絶症」の状態になったりします。こうした両極端さは、どちらか一方だけが見られる場合もあれば、両方を繰り返す場合もあります。
その名の通り、“緊張”が特徴的な病型で、他者が体を動かそうとしても固く力が入った状態で硬直したまま動かせない状態にもなります。他者が手足を動かすと、動かされた状態のまま硬直する場合もあります。自分で手足を動かせないろう人形のようだということで、「ろう屈症」と呼ばれます。唐突に興奮し出して暴力的になるため、自傷や他害を行ってしまわないか留意が必要です。
「妄想型」
幻覚や妄想などの陽性症状が主体で30歳前後に発病しやすいのが、「妄想型」です。男性よりも女性に多く見られます。この病型の妄想は被害妄想や誇大妄想が多く、明らかにあり得ない奇異な妄想が出現することは稀です。
陰性症状はそれほど現れず、対人コミュニケーションは比較的良好に保たれます。人柄の変化もあまり目立たず、最も予後がいいとされている病型です。ただ、慢性化する場合もあり、その場合は、何年にもわたってさまざまな幻覚や妄想が現れます。
感情や意欲の障害はそれほど強くありません。知的能力もあまり障害されず、完全なまま残る傾向があるため、回復後に以前とほぼ同等の能力を取り戻す例が見られます。
4)統合失調症の4つの病期
統合失調症は病気の経過により、前兆期・急性期・消耗期(休息期)・回復期に分けて考えられます。
それぞれの病期で特徴的な症状が認められるためです。なお、これらの病期は必ずしも順番に発生するものではありません。時期を前後したり、一定期間を空けて一連の周期を繰り返したりします。
①前兆期
急性期の前に様々な症状が出現します。
統合失調症に特有の症状はほとんど出現しないため、初発では、専門家でも統合失調症かどうかを正確に判別するのは困難です。
再発の場合は、前兆期に不調を察知し、早期治療を行うことで回復可能性が高まります。出現する症状は、音などの外部の刺激への敏感さ、焦りや不安感が主です。
不眠、食欲不振など、体と関連した症状が出やすいことも特徴的です。
②急性期
幻覚や妄想など、統合失調症に特徴的な症状が出現します。幻覚や妄想は、本人にとっては現実のものとして体験されるものです。強い不安や恐怖を抱くため、それらから逃げるために突拍子のない言動をしたり、不安や恐怖をなるべく感じずに済むように部屋に引きこもったりします。
睡眠や食事などのリズムも崩れやすく、昼夜逆転してしまうことも多く見られます。自傷や他害のリスクが高い場合には入院加療を必要としますが、本人に病識(自分が病気だという自覚)が芽生えにくいため、家族などの同意による医療保護入院や精神保健指定医の判断による措置入院が行われることもあります。
この病期には陽性症状だけではなく陰性症状も現れていますが、陽性症状が激しいため、陰性症状はあまり目立たないのが一般的です。
③回復期
多くの場合、適切な治療を行うことで陰性症状よりも先に陽性症状が収まり、陰性症状が主となる回復期に入ります。目立った陽性症状が減るため周囲からはよくなったようにも見えますが、本人は疲労感や意欲減退を感じています。
次第に現実感を取り戻していきますが、そのためにかえって将来や回復後に対する不安や焦りも感じやすい時期です。焦らずにゆっくりと回復を待つ必要があります。
④安定期・慢性期
適切な治療と療養を続けることで、陰性症状も落ち着くのがこの時期です。この時期にどのくらいまで以前の状態に戻れるのかは、その人の病型や薬の効き具合、再発回数などによって変わります。
発病前の状態に戻れる場合、陽性症状が一部は残ったままとなる場合、回復期の陰性症状が取り切れない場合などがあります。しかしいずれにしても、各種症状がある程度回復することは確かです。
何らかの支援を受けながら社会復帰を目指すことができるまで回復した場合は、社会復帰のためのリハビリテーションなどに取り組みます。
3)症状の起こりやすい場面や出来事
統合失調症の発症や症状には、心の負担やストレスもある程度影響を与えますが、それよりも脳内の神経伝達物質のアンバランスが大きな影響を与えています。
そのため、症状が起こりやすい場面や出来事は特にありません。ただ、発症や症状の増悪を抑制するためには、心身に負担をかけすぎないこと、規則正しい生活を送ることが大切です。
統合失調症の代表的な治療方法
統合失調症は、症状の出現から薬物療法までの期間が短ければ短いほど、予後が良好だと言われています。
したがって、治療の第一選択肢は薬物療法です。それに加えて、自分の病気や症状について正しく理解するための心理教育や、本人にあった社会復帰のためのリハビリテーションが行われます。
統合失調症への薬物療法
統合失調症の治療には、向精神薬の一種、「抗精神病薬」が主に用いられます。本人の病状に合った抗精神病薬の種類や量は、少しずつ試しながら調整していきます。
抗精神病薬には様々な種類があるのですが、種類によって得意とする作用が異なるため、本人の体質や症状との相性を考慮しながら最適な服用内容を探さなければならないからです。
なお、抗精神病薬の主な作用は、幻覚妄想などの陽性症状を改善する「抗精神病作用」、不安や興奮を落ち着かせる「鎮静催眠作用」、感情消失や意欲減退などの陰性症状を改善する「精神賦活作用」の3つに大別されます。
薬物による再発予防のための維持療法
統合失調症は再発しやすい精神疾患です。
幻覚や妄想などの陽性症状が落ち着くと服薬を終えたくなるかもしれませんが、だからと言って服薬を中断した場合、60~80%が数年以内に再発してしまいます。
再発するたびに予後は悪くなる傾向にあるため、いったん病状が落ち着いた後も服用し続ける「維持療法」によって、再発を予防することが重要です。
心理教育で病識を育む
病気に対する正しい理解を深め、治療に前向きに取り組んでいくための教育的支援を、心理教育と言います。統合失調症で生じる幻覚や妄想は、それが奇異なもの通常ではないものと認識することが困難なものです。
そのため、病識を育み、自分にとって治療、特に継続的な服薬が必要不可欠なものであることを学ぶ機会が必要です。
また、統合失調症は早期発見・早期薬物療法が非常に大切となるため、急性期に入る前の前兆期に何が起こるのかをよく知り、そのような兆候が出たときにすぐに医師に相談できるように心構えをつくっておきます。
社会復帰のためのリハビリテーション
統合失調症の病状や予後によって社会復帰の程度が変わります。リハビリテーションの内容はどのように社会復帰するのかによってカスタマイズされます。
よく行われるのは、仕事における集中力・持続力や作業能力の回復をめざす「作業療法」です。少し細かい塗り絵や軽作業に取り組みます。多くの場合は、同じような作業療法に取り組み数人が集まった場所で行います。近くに誰かがいる状態でも、それに刺激を受けすぎずに自分の作業を行うことも、大切なリハビリテーションの一部となるからです。
そのほかにも、対人関係や適切なコミュニケーションを学ぶための「生活技能訓練(Social Skills Training;SST)」、日常生活にリズムを取り戻すための「デイケア」などがあります。
統合失調症のセルフケアと予防
統合失調症はセルフケアによって防げるものに限界があります。規則正しい生活と再発予防のための維持療法を続けることが大切です。
また、ストレスや疲労など、心身に負担がかかりすぎると発症や再発の引き金になってしまうため、無理をし過ぎないように生活することも有益です。
そういう意味では、ひとり頑張ったり抱え込んだりせず、家族や専門家の力をかりながらいい状態を保っていくことを習慣づけていくことが最も大切と言えます。
統合失調症への周囲のかかわり方
精神疾患はいずれも家族や周囲には理解しがたいところがあります。統合失調症の場合、症状に妄想や幻覚があるため、家族や周囲にとって、その理解は容易ではありません。ですから、なぜそういった妄想をするのかを理解しようするのはやめましょう。
「通常では理解しがたいものに振り回されてしまっているから統合失調症なのだ」「周囲からは妄想や幻覚に見えるものも本人にとっては現実なのだ」、と受け止めることで十分です。
家族や周囲が理解するとよいのは、統合失調症がどういう病気なのか、治療や回復のためには何が必要なのか、の2つです。医師の診察や保健所主催の講座などで学ぶことができます。そして、治療や回復のためにできることを一つずつ実践してみることです。
家族であれば、診察に同伴して普段の様子や病状を医師に伝えるのを助けたり、薬をのみ忘れないように声をかけてあげたりすることができます。だからと言って、献身的になりすぎるのは危険です。無理な献身は長続きしませんし、本人の自立をかえって妨げてしまいます。
家族だけで頑張ろうとせず、医師や障害福祉のサービスなどをうまく利用していくこと、それを手助けしてあげることが有益です。