風が吹けば桶屋が儲かるとは|巡り巡って思いがけない事に影響がでるコトワザ

「風が吹けば桶屋が儲かる」とは、

・巡り巡って思いがけない事に影響がでること
・限りなく可能性が低いことに期待をすること

の比喩として利用される日本のことわざです。

実際に、風が吹いてから桶屋が儲かるまでには、以下の9ステップを踏む必要があります。

  1. 風が吹いて、土埃がたつ
  2. 土埃がたって、人の目に入る
  3. 人の目に入って、盲人が増える
  4. 盲人は三味線で生計を立てようとする
  5. 三味線の胴を張る猫皮の需要が増える
  6. 猫皮の需要が増えると、猫が減る
  7. 猫が減ると、ねずみが増える
  8. ねずみが桶を齧り、桶の需要が増える
  9. 桶屋が儲かる

「風が吹けば桶屋が儲かる」の由来

由来は、江戸時代の町人文学、浮世草子の気質物(かたぎもの)にあるとされています。

今日の大風で土ほこりが立ちて人の目の中へ入れば、世間にめくらが大ぶん出来る。そこで三味線がよふうれる。そうすると猫の皮がたんといるによって世界中の猫が大分へる。そふなれば鼠があばれ出すによって、おのづから箱の類をかぢりおる。爰(ここ)で箱屋をしたらば大分よかりそふなものじゃと思案は仕だしても、是(これ)も元手がなふては埒(らち)明(あか)ず

引用:無跡散人『世間学者気質』

この浮世草子では、「箱屋」と表記されていますが、当時(江戸時代)桶屋町や指物町などの職人町が発達していたために、「桶屋」に変わって伝わったのだとされています。

「風が吹いたら桶屋が儲かる」への違和感

ただ、「風が吹いたら、桶屋が儲かる」という理論には、みなさんも違和感を感じることでしょう。

これは、因果関係と相関関係を履き違えて

  • AだからBが起こるかも
  • BだからCが起こるかも

といった、可能性が低いものの0%とは言い切れない仮説を繰り返したために生じた違和感です。

ここまでは行かずとも、日常的に、因果関係と相関関係を間違えてしまい、論理崩壊した結論が導き出されることは多々あるため、ここからはその理由と対策を紹介していきます。

なぜ因果関係と相関関係を間違えるのか

因果関係と相関関係を間違えてしまう理由は、横の論理を意識せず、縦の論理だけで物事を判断してしまうためです。

縦と横の論理の違いは、

  • 風が吹けば、土埃が立つ
  • 土埃が立てば、目に入る

を例に図解すると、以下のような違いがあります。

縦の論理横の論理

確かに、『風が吹けば、土埃も立つ』でしょうし、『土埃が立てば、目に入る』ことも往往にしてあるので、それぞれの主張に大きな違和感はありません。

ただ、『風が吹いても、土埃が立たない』こともあれば、『土埃が立っても、目に入らない』こともあるため、縦の論理だけでは、未来分岐の枝分かれに抜け漏れが生じていることがあるのです。

このように、特定事象が発生した結果として、複数パターンの未来があげられる場合、因果関係は成立せず、それぞれに一定の相関関係が認められるだけになります。

多くの制約を持つ人間は限定された合理性しか持ち得ない

今回のように、因果と相関を履き違えるような「非合理的な思考」を、人間がしてしまうのは、多くの制約によって、あくまで限定された合理性しか持ち得ないためです。

例えば、以下のような原因でしょう。

  • 知識や処理能力、時間が不足していた
  • 認知バイアスによるエラーが発生した

ではそれぞれ説明していきます。

知識や処理能力、時間が不足していた

知識不足での例をあげると、

砂漠でずっと暮らしており『風が吹けば、砂が舞い、目に入る』という一連の流れを常識として生きてきた人

が該当します。そんな珍しい育ちの方がいれば、

「風が吹いたのに砂が舞わないの!?」
「土埃が目に入らない場合もあるんだ!?」

と知らなくても不思議ではありません。

他にも、思考する時間が短ければ、論点の抜け漏れが生じてしまうケースも往往にしてあるでしょう。

このように、知識や時間の不足によって、合理性に欠いた(間違えた)思考をしてしまうことを、限定合理性と呼びます。

認知バイアスによるエラーが発生した

認知バイアスは、1度思い込んだらその選択肢以外見えなくなってしまうなどの心理現象のことで、有名なものに「確証バイアス」「正常性バイアス」があります。

確証バイアス

自分にとって都合の良い情報だけを信じ、反証となる情報を探そうともせず、客観性を失ってしまう心理現象

正常性バイアス

自分にとって都合の悪い情報が見つかったとしても、「まあ大丈夫だろう」と過小評価してしまい、客観性を失ってしまう心理現象

ここからわかるように人間は、事実だろうが事実でなかろうが、「自分が信じたいものを信じ、信じたくないものは信じない」という歪んだ認識をしてしまう生き物なのです。

他にも、「風が吹いたら…う〜ん…土埃が立つ!」と、答えを1つ見つけた段階で満足してしまって、他の可能性を検討しなかったというパターンなども当てはまるでしょう。

どうすれば因果関係と相関関係を間違えないのか

そもそも前提として、『全ての事象に因果関係はない。あっても限りなく100%に近い相関関係である。』と認識しておきましょう。

その上で、『因果関係が成立しない条件には何があるだろうか』と反証になる情報を意識的に探すことが効果的です。

例えば、『りんごを持ち上げ手を離せば、地面に落ちる』というのは一見因果関係がありそうですが、宇宙空間では成立しませんし、手を離した瞬間に下から暴風を吹かせれば、落ちることもありません。

なにより、我々がまだ発見していない物理法則によって落ちない場合があるかもしれません。

これは極端な例ですが、例外を探せばいくらでも見つかるということをお伝えしたいがための例です

今までの常識(固定観念)で物事を判断せず、広い視野で考え抜くことを意識しましょう。

【類語】バラフライ効果(バラフライエフェクト)

バタフライ効果(バタフライエフェクト)とは、カオス理論でいう予測困難性(計算式で生まれる数値計算の精度をいくら上げても、確実かつ正確な予想ができないこと)を示す言葉です。

力学系の状態にわずかな変化を与えると、そのわずかな変化があった場合となかった場合で、状態が大きく異なってしまうという現象のことを指しています。

命名の由来は、気象学者のエドワード・ローレンツによる「蝶がはばたく程度の非常に小さな撹乱でも遠くの場所の気象に影響を与えるか?」という問いかけ。

そして、「もしそれが正しければ、観測誤差を無くすことができない限り、正確な長期予測は根本的に困難になる」という数値研究に由来しています。

最後に

いかがでしたでしょうか。

『風が吹けば桶屋が儲かる』とは、

・巡り巡って思いがけない事に影響がでること
・限りなく可能性が低いことに期待をすること

の比喩として利用されることわざでした。

日常だと使いどころはそうそうありませんが、ビジネスシーンで、因果関係と相関関係を履き違え、論理的に誤った結論が導き出されてしまった場合などに用いると効果的でしょう。

このページを読んだあなたの人生が、より豊かなものとなることを祈っております。